2024年3月の新規加入者数は約4.4万人と増加

iDeCo新規加入者数の推移(2024年3月)、出所:iDeCo公式サイト「」

iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の最新概況が2024年5月1日に国民年金基金連合会より発表され、2024年3月の新規加入者数は4万4316人(前年同月比103.3%)、加入者総数は328万4971人(同113.3%)となりました。

新規加入者数の内訳は、第1号加入者が5914人(同131.7%)、第2号加入者が3万6128人(同99.2%)、第3号加入者が1926人(同115.0%)。昨対でおおむね増加傾向にあります。

また、iDeCoの平均掛金額は1万6042円。内訳は第1号加入者が2万8020円、第2号加入者が1万4501円、第3号加入者 1万4810円となっています。拠出限度額が高い第1号加入者が最も多くなっています。

なお、従業員のiDeCoに企業が掛金を上乗せ拠出するiDeCo+(イデコプラス、中小事業主掛金納付制度)は7424事業所(同124.8%)で実施、対象者数は4万7012人(同126.5%)となりました(2024年3月末)。

2023年度の加入者数は前年割れも、年明けから盛り返す

2023年度(2023年4月〜2024年3月)のiDeCoの新規加入者数は45万2202人(同79.5%)となりました。前年度に当たる22年は5月に加入年齢要件が拡大され、65歳未満の会社員や公務員、国民年金の任意加入者の加入、同10月には企業型確定拠出年金(DC)の加入者の同時加入が可能になったことなどから新規加入者数が増加。その反動もあり、主だった制度改正がなかった2023年度は前年対比で落ち込む結果となりました。

ただし、23年11月を底に24年2月には反転して前年比約111%と上回り始め、昨対超えの傾向は3月も続いています。

新規加入者数の推移を詳細に見ると、第1号加入者(自営業者等)は比較的、安定推移しており、23年12月以降は前年比を超え始め、年明けの24年1月約141%、同2月約157%と大幅に伸長しています。この理由は年末調整や確定申告などの季節要因に加え、24年1月から開始となった新NISAによる非課税投資制度への関心の高まりも影響したものと見られます。

また、第2号加入者(公務員・会社員)も前述の22年5月、10月の改正後のタイミングで比較すると前年差が顕著ですが、24年2月には盛り返しています。こちらも第1号と同様に季節要因並びに新NISAの影響による前年超えと推察されます。

転職時には自動移換に注意、思わぬデメリットで損することも

企業型DCの導入企業が増える一方で、転職も増えている昨今に注意が必要なのが、自動移換の問題です。自動移換とは、企業型DCのある会社から転職する際に、6カ月以内に資産の移換を適切に行わないと、自動的に現金化され、国民年金基金連合会に移換されてしまうことを指します。自動移換されると、運用ができない、管理手数料がかかる、企業型DCやiDeCoに移さない限り60歳以降も受け取れなくなるなどのデメリットが生じます。そんな困った事態に陥らないよう、転職先の企業型DCに移換する、転職先に企業型DCがない場合はiDeCoに移換するなどの手続きが必要です。

ただし、企業型DCの導入企業、転職者ともに増加傾向にある中、2023年度の自動移換者数は前年並みと健闘しています。転職後の忙しいさなかにも煩雑な手続きをきちんと行った人が一定数いたからではと見られます。

iDeCo新規自動移換者数推移、出所:iDeCo公式サイト「」

とは言え、「自動移換の人数が多いことは非常に問題」とはNPO法人確定拠出年金教育協会理事兼主任研究員の大江加代氏。原因としては、移換して持ち運ぶメリット、自動移換のデメリットの周知不足、これには企業から従業員への説明不足もあると考えられるといいます。また、「手軽に手続きができるようスマホなどによるデジタル化も一層求められるでしょう」と大江氏。

24年は2つの改正でさらに注目度が高まる

iDeCoのオンライン加入は30運営管理機関で可能となっており(2023年3月末時点) 、新規加入者の3割超 がネット申込という状況もあります(同11月)。とは言え、いまだ道半ばであり、手続きの煩雑さは否めません。この点に関しては、加入申込時に必要な事業主証明書の添付が今年12月から不要になることが決まっています。会社に証明書の発行を依頼するハードルがなくなる心理面と、デジタル化がさらに進めば手軽に手続きが済むという物理面の2つのメリットが期待できるであろう12月以降はiDeCoの新規加入者数がさらに増える可能性があるでしょう。

同じく12月には、公務員や確定給付企業年金(DB)がある企業の多くの会社員拠出限度額が引き上げられる予定です。具体的には現状の1万2000円から2万円 となる予定ですが、こちらも一方で注意点もあります。DBの給付額が非常に充実していて、掛金相当額が2万7500円を超えている場合は iDeCoに拠出できる金額が少なくなったり、掛け金自体が拠出できなくなったりする人も一部で見込まれます。DBが導入されている企業では、既にDB掛金相当額とともにiDeCoの限度額が下がる方にはその旨の通知があったはずですので、自分が当てはまるか否かを確認する必要があるでしょう。

今年度は制度改正の議論を行う年であり、「資産所得倍増プラン」でも取り上げられた「iDeCoの加入年齢の引き上げなども制度改正に向けた議題に上っています」(大江氏)。

既に決まっている改正内容だけでなく、今後の改正の方向性についても押さえておくことは、転ばぬ先の杖となるはずです。当連載ではiDeCoの新規加入者数の月次推移とともに、こうした改正の要点についてもタイムリーに解説していく予定です。