2022(令和4)年度内の出産で、翌年7月31日までに育児休業を取得した県内事業所の男性の割合は過去最高の36・0%となった。男性の育児参加は少子化対策の大きな柱の一つ。休業中の業務代替者への手当支給など各種支援制度を積極的に活用し、誰もが気兼ねなく取得できる職場の環境づくりに努めていきたい。

 育児・介護休業法の改正で一昨年10月に「産後パパ育休」が設けられた。産後うつへの注意が必要な出生直後に取得しやすい枠組みが整えられ、育休の分割取得も可能とされた。企業による育休取得状況の公表が昨年4月に義務化されるなど、制度づくりは進んでいる。

 政府は、昨年12月にまとめた「こども未来戦略」で、男性の育休取得率の目標を従来の2025年までの30%から、2025年に公務員85%(1週間以上)・民間50%、2030年に公務員85%(2週間以上)・民間85%に引き上げた。

 今回の県の実態調査で、県内事業所の取得率は前年比約1・8倍に伸びたものの、政府が掲げる2025年、2030年時点の目標とは、かなりの開きが残る。県職員の2022年度の男性育休取得率は62・9%で、自治体、民間事業所ともにさらなる取り組みが必要だ。

 こども未来戦略では、男性が育休を利用しなかった理由について「収入を減らしたくなかった」「取得しづらい職場の雰囲気、無理解」が多いと指摘した。制度はあっても利用しづらい職場の対応策として、育休取得者への給付の充実とともに、育休を支える周囲の体制づくりへの助成強化を打ち出した。

 厚生労働省は、中小企業を対象にした業務代替支援の新たな枠組みを今年1月に設けている。育児休業は月10万円、短時間勤務は月3万円を上限に、育休取得者の業務代替者に支給した手当総額の4分の3が助成される。

 県も男性の育休取得に対する企業への奨励金として、7日以上10万円、1カ月以上20万円に加え、昨年度から3カ月以上30万円を交付している。昨年度までの過去3年間の交付件数は9、21、35件と取得率に比例して増えている。取得率の一層の向上に向け、こうした制度も広く発信してほしい。(三神尚子)