福島医大放射線健康管理学講座の斎藤宏章博士研究員(34)らの研究グループは、能登半島地震を巡る今後の対応に関し、東日本大震災の知見を生かした対策を取るべきだとの論考をまとめた。震災の健康影響などに関する長期的な研究結果を踏まえ、避難など生活の変化に伴う高齢者の健康影響や孤立対策の必要性を強調しており、この論考は国際的に有名な医学雑誌「ランセット」に掲載された。
 論考には、能登半島が65歳以上人口50%超の超高齢地域であることを踏まえ、今後生じ得る長期的な健康影響への対策の必要性を明記。東日本大震災では、発災後3カ月間で高齢者の肺炎による死亡率が1.7〜2.6倍に増えたとの研究結果を紹介した。研究対象の相馬、南相馬両市の当時の高齢化率は25.8%で、能登半島地震ではより高齢者へのケアが必要だと強調。高齢者の孤立防止対策として相馬市の共同復興住宅「相馬井戸端長屋」の事例を取り上げた。
 責任著者の斎藤氏は、震災後の健康影響などについて「震災直後ではなく数年たってから分かったことも多くあった」として知見や教訓を能登半島地震への対応に生かす必要性を訴えた。論考をまとめるに当たっては、共同著者の阿部暁樹研究員、山本知佳助手、趙天辰研究員が石川県輪島市のグループホームからの支援要請を受けて現地に赴き、活動した。