愛媛・愛南町は、南海トラフ地震が起きた際に県内で最も早く津波が来るおそれがある。学校で防災教育に力を入れる中、4月の地震で危機感が高まっている。犠牲者を出さないために、地域一丸で行う小学校の取り組みを取材した。

痛感…「想定外のことが起こりうる」

愛南町にある全校児童41人の柏小学校。
海抜7.1メートルの校内の柱には、南海トラフ地震で想定される津波の高さが記されている。

玄関には児童全員分のライフジャケットとヘルメットを用意。

抜き打ちの避難訓練のほか、日常的に防災学習を行うなど災害に対する備えを進めているが、4月17日の地震で危機感はさらに増したという。

柏小学校・前田和美校長:
「想定外のことが起こりうる」ということは今回の地震でも痛感したところです。なので、さらに発想力を広げてさまざまなシミュレーションをして、その中で何ができるか考えていかなければならないなと痛感しました

フィールドワークで防災マップづくり

この柏小学校で2023年から力を入れて取り組んでいるのが、「防災マップづくり」だ。

児童たちは実際に校区内を歩いて災害が起こったときの危険な場所や安全な避難ルートなどを1枚の大きな地図にまとめた。

完成した防災マップは有事の際に役立ててもらおうと地域の人たちにも発表した。

そして、地図を更に充実させようと取り組む児童たちは、地震から1カ月がたち、あらためて被害の状況やまちに潜む危険がないか校外でチェックすることにした。

先生「ここブロックなかったっけ?」
児童「グーグルでみたら確かあった」
先生「その下は?」
児童「ここ割れてたような気がするんやけど」

異変に気付いたら立ち止まりチェック。危ないポイントをみんなで話す。

通学路沿いにある住宅の石垣は地震で一部が崩れていたが、被害のあった部分が修復されているのを確認した。

先生「崩れたのは(どうなった)?」
児童「なおっとる」
先生「コンクリートで?」
児童「とまっとる」
先生「とまっとるし、見て!コンクリートで丈夫ね」

実はこの場所は、2023年に子どもたちが作成した防災マップで危ないのではと指摘していた場所だった。

さらに、地すべり対策を行っている工事現場では、家を地滑りから守るため斜面に網をかける作業の説明を工事担当者に教えてもらった。

子どもが変わると家庭や地域も変わる

地域の人に声をかけ話を聞くこともフィールドワークの重要なポイント。
学校を飛び出し地域と繋がりながら、子どもたちは多くの大切な学びを得ることができたようで、「いろいろ落ちていてびっくりした」「地すべりが起こることがあるから、柵を設置して止めていることを知った」などと話した。

木口凱喜さん(5年):
もしも今度、津波や地震色んなことが起きてしまうときがあっても、地域の人全員で逃げてみんなを助けたいと思いました

防災教育アドバイザーを務める木原要子さん:
子どもが変わることによって、家庭や地域が変わってきたわけなんですよ。自分のことだけでなく家族や地域の方々へ視点を持っていける、そんな広がりになってほしいなと

柏小学校・前田和美校長:
防災学習は繰り返し、巻き返しするっていうことがとても大事だと思っています。学んだから終わりではなく、やはりさまざまな状況が変わってくると思うので、今自分たちができることを少しずつ少しずつ繰り返していくことが大切だと思っています

地域の命を守る、子どもたちの取り組みが続く。

(テレビ愛媛)