強度型の神戸や町田らが好調維持、技術で強度を上回るチームが現れるか

 今季のJ1リーグは強度型が優勢だ。第14節時点で首位はヴィッセル神戸、2位はFC町田ゼルビア。昨季の王者とJ2から昇格クラブ。対照的だが、戦術的には似ている。3位の鹿島アントラーズも同じタイプだ。

 やや強引でもなるべく早く相手ゴールへ迫り、ボールを失ったら直ちにプレッシング。強度の高い攻守を展開する。

 かつてのイングランド代表およびクラブチームは強度型の典型だった。

 ロングボールやハイクロスで手数をかけずに相手ゴールを直撃するアプローチはダイレクト・フットボールと呼ばれていた。4-4-2のハードワークによるインテンシティーの高い守備にも定評があった。

 しかし、イングランド代表監督だったテリー・ベナブレスは「対戦相手は削ぎ落してくる」と話していた。1980年代以降、ダイレクト・フットボールは通用しなくなっていたのだ。

 ベナブレスの言う「削ぎ落してくる」とは、例えばこんな具合になる。

 まず、開始10分間ほどはイングランドの勢いに耐える。パスをつなごうと思っても、この時間帯はほぼ無理なので蹴り合いに付き合うしかない。しかし、ここを耐え切ればイングランドは少しペースダウンする。そうなったら丁寧にパスをつなぎ、攻め急がず、追いかけ回してくるイングランドの体力を奪っていく。このペースダウンが上手くいけば、イングランド勢は60分前後には必ずガス欠を起こすので、そこで勝負を決めるという流れだ。

 4-4-2のサイドハーフは激しい上下動で疲弊し、続いてより広いスペースを守らなければならなくなる中央のMF2人も疲労する。この連鎖的なパワーダウンが起こるのが60分くらいだった。対戦相手は焦らずに少しずつイングランドの勢いを削いていくという作戦である。

 J1でもそのような試合の流れはある。ところが、なかなか強度勢を攻略できていない。

 おそらく理由の1つには交代枠の変化がある。かつての2人、ないし3人の交代枠が拡大されて現在は5人を交代できるようになった。強度が落ち始める60分あたりから2人、3人と選手交代を行い、パワーダウンを予防できるようになっている。これはかなり大きな影響を与えている。

 ただ、それ以前に強度勢の勢いに呑まれて失点している場合もあり、先制されてしまえばある程度構えられてしまうので体力を削ぎ落せない。少し落ち着いてきた時間にパスを回そうとしてミスをして引っかけられ、削ぎ落し切れないケースも少なくない。

 今のところ技術を使って強度を削ぎ落せたケースは少なく、強度勢が不覚を取るのは同じ強度勢と対戦した場合になっている。

 これから暑さが増してくる時期に、強度勢が強度を維持し続けられるか。あるいは技術で強度を上回るチームが現れるのか。そのあたりはまだ分からないが、ここまでのところは強度勢有利の展開になっている。

FOOTBALL ZONE編集部