日本が得意とする戦い方と問題点、6月連戦で「日本がボール支配のケース」をテスト

 ミャンマー、シリアを5-0で撃破。2戦合計10得点、さらに北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選無失点で最終予選へ向かう。スコアは実力差からいって驚きではないが、最後の2試合を単なる消化試合とせず、将来へ向けてのテストに使えたのは有意義だったと思う。

 日本代表の現状を整理してみよう。

 森保一監督率いるチームのベースは「いい守備からのいい攻撃」だ。カタールW杯がそうだったように、本大会での日本の戦い方は守備的にならざるを得ない。4試合のうち3試合は相手にボールを握られる展開だった。しかし、この戦い方で欧州勢に負けたことはない。つまり日本が得意とする戦い方になっている。

 この戦い方で唯一の問題点は押し込まれた状態からの押し返しである。

 アジアカップのイラン戦のように、押し込まれた状態でプレスを仕掛けられると安定的に脱出できない。解決策としてはロングボールを使ってひっくり返すか、誰かがキープして守備のポジションから攻撃のポジションへ移行する時間を作ること。これについては今回の2試合では検証のしようがなかったので持ち越しの課題と言える。

 カタールW杯で日本がボールを握る例外的な試合となったのが唯一敗れたコスタリカ戦だった。本大会を想定するとメインにはならないが、次回大会から参加国が増えるので身に付けておきたい戦い方である。またアジア最終予選ではこちらが主になると想定される。

 今回の2試合でテストしたのは日本がボールを支配できるケースだった。

 3-4-2-1を中心に、4-1-4-1、4-2-3-1と3種類のシステムを使い、その中でも選手起用やポジショニングの変化でバリエーションをつけていた。上手くいったものも、そうでないものもあったが、試したこと自体に意味があったと思う。

 目標としている優勝には8試合を戦う準備が必要だ。ある程度のターンオーバーは必須になる。選手を入れ替えてもプレー水準を維持できることが重要。世界的に国際試合が連戦になっているので、どの国もターンオーバーしているがなかなか水準を保てていない。その点、日本はそれほど心配がない。

 5人交代制も日本には都合がいい。システムを変え、人を代えても機能する。これも他国にはあまり見られない長所だろう。

攻撃時に相対的な「時差」を生み出せるか…アジア最終予選を利用した強化も不可欠

 懸案のボール保持からの攻撃は、パスを連続させて相手を後手に回し、相対的な「時差」を生み出せるかどうかがポイントになる。

 これも2試合でそれなりの成果があり、特にシリア戦は中央突破からのチャンスが増えた。従来のサイド攻撃頼みでは相手が5バックだと対応されやすい。サイドからサイドへボールを動かす途中に中央の脅威があれば、それだけサイドも空きやすくなる。中央突破に必要な「時差」はある程度作れていた。

 ただし、「時差」を作り続けるには選手たちの「時間」が揃っていなければならない。この点はまだ改善の余地がある。

 厚い選手層を生かした総力戦は日本の伸ばすべき長所である一方で、選手間のタイミングを合わせて「時間」を共有するにはメンバー固定化という矛盾する強化策が必要になる。これに関しては最終予選を利用することになるだろう。

 同じ力のチームを2つ作れても、ベストチームの上限が低ければ強豪国は倒せない。しかし、そこまで作り込めれば、優勝はともかくベスト8は現実味を帯びてくるだろう。

FOOTBALL ZONE編集部