●GK:藤田和輝
 明治安田J2リーグの2024シーズンが開幕しておよそ2カ月が経過した。好スタートを切ったクラブは、新戦力のフィットも重要なポイントになっている。今回は、今季のJ2で好発進した新加入選手をピックアップして紹介する。※情報は4月24日時点。スタッツはJリーグ公式を参照。

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生年月日:2001年2月19日(23歳)
所属クラブ:ジェフユナイテッド千葉(レンタル移籍)
今季リーグ戦成績:8試合(クリーンシート3回)

 J1昇格を狙うジェフユナイテッド千葉において、GK藤田和輝は欠かせない存在だ。

 現在23歳の藤田は、アルビレックス新潟の下部組織出身。2019年に新潟でトップチーム昇格を果たし、出場機会を求めて2022シーズンから昨季まで栃木SCへレンタル移籍していた。栃木での1年目はなかなか結果を残すことができなかったが、2年目となる昨季はレギュラーの座を掴んでリーグ戦32試合に出場。この活躍が認められて、シーズン終盤にはU-22日本代表の正GKとしてアジア大会を戦っている。今季からは、レンタル移籍先をジェフユナイテッド千葉へ移し、ここまでリーグ戦8試合に出場中だ。

 藤田の強みは、並外れた反応速度にある。ミドルレンジのシュートだけでなく、至近距離からのシュートにも抜群の反応を見せ、スーパーセーブを連発。今季はPKストップでチームを救う試合もあった。また、足元の技術にも定評があり、両足から高精度のフィードを供給することが可能だ。小林慶行監督が志向するサッカーにこの上なく適した、モダンなGKだと言えるだろう。加入から数試合でチームへの適応を見せ、頼れる守護神として安定感のあるパフォーマンスを披露し続けている。

 千葉は現在リーグ12位。先日行われた第11節ブラウブリッツ秋田戦は、勝てばJ1昇格プレーオフ圏内に入る可能性があったが、試合終盤に立て続けに失点して1-2の敗戦を喫してしまった。最悪の負け方となったが、それでも藤田はリーグ優勝を諦めていない。自身のInstagramの投稿で「僕はこのチームで本気で優勝したいと思っています」と優勝への強い想いを示し、前を向いている。

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●DF:住吉ジェラニレショーン
生年月日:1997年10月5日(26歳)
所属クラブ:清水エスパルス
今季リーグ戦成績:10試合1ゴール0アシスト  

 清水エスパルスのDF住吉ジェラニレショーンは、とにかく謙虚だ。どこまでも努力と改善を続けるその姿勢に、早くもサポーターは心を奪われている。

 大学在学中にフォワードからセンターバックへとコンバートされた住吉は、2020年に水戸ホーリーホックでプロデビュー。サンフレッチェ広島を経て、今季から清水でプレーすることを決断した。

 注目したいのは、その驚異的な身体能力だ。身長は182㎝とCBの中ではやや小柄な部類に入るが、それをカバーするのに十分すぎるほどの強靭なフィジカルを持っている。それは数字にも表れており、今季はここまでタックル成功率「72.7%」、空中戦勝率「76%」を記録。圧倒的なフィジカルで攻守にわたって強さを発揮している。

 清水はオフの期間中に、守備の要であったDF鈴木義宜(現在は京都サンガF.C.に所属)が退団。これにより、守備陣はかなりの戦力ダウンが避けられないとの見方もされていたが、住吉の活躍でクラブはその穴埋めに成功した。第9節ヴァンフォーレ甲府戦では、スコアレスドローで迎えた90分にセットプレーから劇的決勝弾。同選手の移籍後初ゴールがチームの勝利に直結した。

 そのプレーは闘争心にあふれているが、前述した通り、クレバーで真面目な側面も持っている。どれだけ良いパフォーマンスをしても、自分に矢印を向け、さらに良い選手になろうとする努力を惜しまない。試合後のインタビューなどを見て、彼の謙虚な姿勢に感心した人も少なくないはずだ。

 住吉はこの勢いを維持して、チームをJ1の舞台へ返り咲かすことが出来るだろうか。

●MF:藤田息吹
生年月日:1991年1月30日(33歳)
所属クラブ:ファジアーノ岡山
今季リーグ戦成績:11試合0ゴール0アシスト

 行く先々のチームで活躍を残してきたMF 藤田息吹が選んだ新天地は、ファジアーノ岡山だった。

 現在33歳の藤田は、2013年に清水エスパルスへ加入。同クラブでプロデビューを果たすと、そこから愛媛FC、松本山雅FC、モンテディオ山形とJクラブを渡り歩いてきた。いずれのクラブでも中盤の主力に定着しており、J1とJ2合わせて300試合以上に出場している。培われた経験値はJリーグでもトップクラスだ。

 そんなベテランMFは、岡山で迎えた今季もこれまでのシーズンと同じく、安定した活躍を見せている。愛媛時代に共に戦った経験を持つ木山隆之監督のもとで、現在チームはリーグ3位。藤田は司令塔として中盤に君臨し、高い運動量を活かしてボールの刈り取り役となっている。Jリーグ公式サイトによると、同選手のタックル成功率は78.3%を記録しているそうだ。経験を生かした正確な予測と優れたポジショニングで相手のチャンスを潰し、そこから素早い展開で自分たちの攻撃へ繋げる…。派手さは無いが、実力で魅せるいぶし銀の守備職人は、まさに「チームの心臓」だ。ここまでリーグ戦10試合に出場している。

 岡山にとって、助っ人外国人選手など充実した戦力の補強に成功した今季は、勝負のシーズンだ。スカッドには才能と若い力、そして経験値が揃っている。昨季はリーグ10位に終わったが、捲土重来を期す今季こそはJ1への切符を掴み取れるだろうか。

●MF:長尾優斗
生年月日:2001年8月31日(22歳)
所属クラブ:水戸ホーリーホック
今季リーグ戦成績:11試合0ゴール0アシスト

 MF長尾優斗は、今季のJ2リーグでスタートダッシュに成功した新加入選手の1人だ。

 関西学院大学を卒業して水戸ホーリーホックへ加入した長尾は、ガンバ大阪の下部組織出身。G大阪のU-23チームでJ3の出場経験を持っている。大学では一時Bチームに降格してしまった時もあったが、3年時にレギュラーとして返り咲くことに成功。不動のボランチとして試合数を重ね、遂に水戸でJリーガーになるという夢を叶えた。

 今季からプレーすることとなった水戸では、大学時代と同じくボランチの位置で起用されている。ここまでリーグ戦11試合に出場しており、そのうち9試合でスターティングメンバーに名を連ねた。ルーキーイヤーからしっかりと出場機会を得ていることは、スタートダッシュに成功していると言えるのではないだろうか。

 そのプレーは、若さを感じさせないほど落ち着いている。ピッチ上の人の動きを見ながらパスを散らして攻撃のリズムを作り出す、視野の広さを感じさせるプレーが印象的だ。他にも、対峙する相手選手の動きの逆を突いたドリブルや鋭い縦パスなど、自身のワンプレーで攻撃のスイッチを入れるシーンも。既にチームで高いゲームメイク能力を発揮している様子を見ると、コンスタントに活躍して今季終了後にJ1クラブや海外クラブに個人昇格する未来もあるかもしれない。将来が楽しみなネクストブレイクタレントだ。

 関学大の同期には、倍井謙(名古屋グランパス)、濃野公人(鹿島アントラーズ)、美藤倫(G大阪)、望月想空(FC大阪)などがいる。ライバルたちに引けを取らない、長尾のさらなる躍動に期待だ。

●MF:梶川諒太
生年月日:1989年4月17日(35歳)
所属クラブ:藤枝MYFC
今季リーグ戦成績:10試合0ゴール0アシスト

 MF 梶川諒太は、早くも新天地で輝きを放っている。

 昨季まで東京ヴェルディに在籍していた梶川は、今季から藤枝MYFCへ移籍。同選手は先日誕生日を迎えて35歳になり、ベテラン選手という位置付けであることに間違いはないだろう。しかし、そのプレーは年齢を全く感じさせない。今季はここまでリーグ戦10試合に出場して、1試合平均チャンスクリエイト数が「2.3回」と、リーグ4番目の数字を記録。精度の高いパスでテンポの良い攻撃を実現させている。

 また、「パスの出し手」としての貢献は言わずもがな、「パスの受け手」として味方選手が空けたスペースに走り込む動きや味方選手をサポートする動き、パスを引き出す動きも秀逸だ。リーグ開幕当初はボランチとして起用されていたが、最近はより攻撃的な位置でも効果的なプレーを見せている。現在のスカッドでは梶川の年齢は最年長となるが、誰よりも考えて、誰よりも走って、加入数ヶ月で攻撃の潤滑油となる存在にまでなっている。

 チームの順位は現在リーグ19位と、J3降格圏に沈んでいる。他の下位チームと比較して顕著なのは、得点がわずか4ゴールと、ゴールネットをほとんど揺らせていないこと。攻撃的なサッカーを展開していながら、この結果ではまずいだろう。ここからのリーグ戦は、水戸ホーリーホック(17位)、ザスパ草津(20位)、栃木SC(16位)と下位チームとの対戦が続くため、この3戦でなんとか上昇気流に乗りたいところだ。35歳の実力派MFは、苦しむ藤枝を救うことができるだろうか。

●FW:佐藤大樹
生年月日:1999年4月23日(25歳)
所属クラブ:ブラウブリッツ秋田(レンタル移籍)
今季リーグ戦成績:10試合4ゴール1アシスト

 今季、ブラウブリッツ秋田に加入したFW佐藤大樹は開幕から波に乗っている。

 現在25歳のゴールハンターは、地元・北海道コンサドーレ札幌の下部組織出身。同クラブではトップチームに昇格することはできなかったが、大学サッカーを経て、2022年にFC町田ゼルビアでプロデビューを果たしている。昨季はJ3のY.S.C.C.横浜へレンタル移籍し、リーグ戦26試合に出場して7ゴール2アシストを記録。今季は活躍の場を移し、町田から秋田へレンタル移籍をしている。

 既にリーグ戦で4ゴールをマークし、チーム得点王となっている佐藤の魅力は、シュートの威力と決定力の高さにある。特に、左足のキックは精度が高く、ボックス外から狙い澄ました強烈なミドルシュートでゴールを強襲することが可能だ。

 また、試合中の随所でポジショニングの良さを感じさせるプレーを見せており、セットプレーからヘディングでゴールを奪うことも得意。今季は2度、頭でゴールネットを揺らしており、得点パターンが豊富な点は今後大きな魅力の1つになっていくかもしれない。現在は左サイドハーフでの起用がメインとなっているが、彼の特徴を踏まえれば昨季(Y.S.C.C.横浜時代)のようにセンターフォワードとしてプレーしても高水準のパフォーマンスを発揮することができるはずだ。

 秋田は現在J1昇格プレーオフ圏内ぎりぎりのリーグ6位に位置しており、佐藤に求められるのは、ゴールやアシストといった数字に残るプレーでチームを押し上げることだ。同選手は加入数ヶ月で早くもその期待に応えることに成功している。この調子を維持してゴールを重ね、「青い稲妻」となってくれることが楽しみだ。