FW:中島大嘉(なかしま・たいか)

今季もJリーグでは多くの若手選手がレンタル移籍で自身の成長を求めている。ここで活躍し、来季は所属元で主力というシナリオが理想的だが、当然ながら全員がうまくいくわけではない。今回は、早くもレンタル先で苦しんでいるJリーグの逸材選手を6人紹介する(スタッツは5月9日時点のデータサイト『transfermarkt』を参照)。
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生年月日:2002年6月8日
保有元クラブ:北海道コンサドーレ札幌
レンタル先クラブ:藤枝MYFC(J2)
今季リーグ戦成績:6試合0ゴール0アシスト

「和製ハーランド」と呼ばれた大型ストライカーは、思い描いた成長曲線を描けずにいる。

 2021年に北海道コンサドーレ札幌へ加入したFW中島大嘉は、デビュー戦となったYBCルヴァンカップ・アビスパ福岡戦で早速ゴール。3-2と乱打戦となった試合で、チームの勝利に大きく貢献した。

 その魅力は、やはり身長188㎝の恵まれた体格を活かしたダイナミックなプレーにある。大きなストライドのスプリントでゴールに猛然と迫るシーンや、セットプレーで打点の高いヘディングからゴールネットを揺らすシーンも見ものだ。「デカくて、速い」という特徴から、そのプレースタイルをノルウェー代表FWアーリング・ハーランド(マンチェスター・シティ)に例えられている。

 そんな規格外のストライカーになりうる素質を持った中島だが、伸び悩んでしまっている。昨季は名古屋グランパスへのレンタル移籍を経験し、良いプレーを見せた試合はあったものの、大爆発には至らず。今季からは心機一転、J2に所属する藤枝MYFCへレンタル移籍することを決断した。だが、今のところルヴァンカップでの1ゴールのみで、リーグ戦ではゴールを奪えていない。

 スコアレスドローに終わった第1節V・ファーレン長崎戦以外は、中島が出場したリーグ戦は全て藤枝が敗北を喫しており、良い流れを掴めていないように見える。出場時間が短くなれば当然とも言えるがシュートを打つ場面が少なくなり、徐々にゴールから離れる時間が長くなってしまった。

 AFC U-23アジアカップ2022にも出場した中島はパリ五輪世代のエースストライカー候補であったが、現在は細谷真大(柏レイソル)にそのポジションを譲っている。ライバルとの差はかなり広がっているが、まだ21歳と若くポテンシャルは十分にある。まずはリーグ戦でゴールネットを揺らし、徐々に出場時間を伸ばしていきたいところだ。

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MF:永長鷹虎(えいなが・たかとら)
生年月日:2003年4月3日
保有元クラブ:川崎フロンターレ
レンタル先クラブ:ザスパクサツ群馬(J2)
今季リーグ戦成績:10試合0ゴール0アシスト

 世代別日本代表に何度も招集されてきたMF永長鷹虎は、なかなか出場時間を伸ばせていない。

 独特なドリブルで右サイドを切り裂くサイドアタッカーは、現在21歳。2022年に川崎フロンターレに正式加入すると、プロデビュー戦となった天皇杯・札幌大学戦で挨拶がわりのゴールを奪い、完璧なプロキャリアのスタートを切ることに成功した。

 そんな永長は、昨夏にさらなる成長を求めて水戸ホーリーホックへレンタル移籍することを決断する。同クラブでは公式戦16試合に出場して、1ゴール1アシストを記録した。今季からはザスパクサツ群馬へレンタル移籍している。

 しかしながら、群馬では満足のいくプレータイムを確保できていないのが現状だ。リーグ戦では80分を過ぎた試合終盤からの起用がメインで、先発起用が期待できるのはYBCルヴァンカップや天皇杯に限られている。そのルヴァンカップは既に敗退が決まったため、このままいけば永長がピッチに立つ時間は更に短くなってしまう可能性が高い。

 ただ、ここにきて風向きが変わりそうなのも事実だ。群馬は現在J2リーグ最下位となっており、8日にはここまでチームを率いていた大槻毅監督を解任することが発表された。クラブにとっては深刻な事態であるが、監督交代は主力でない選手にとってはチャンスにもなり得る。永長には、この機会に新監督の信頼を掴んでJ2残留を目指す戦いで中心的な役割を担ってもらいたい。

FW:豊田晃大(とよだ・こうき)
生年月日:2003年4月11日
保有元クラブ:名古屋グランパス
レンタル先クラブ:いわてグルージャ盛岡(J3)
今季リーグ戦成績:2試合0ゴール0アシスト

 今季からいわてグルージャ盛岡でプレーするFW豊田晃大は3月以降出場が無い。レンタルに出されている逸材たちの中で、苦しんでいる選手の1人だと言えそうだ。

 現在21歳の豊田は、名古屋グランパスの下部組織出身。世代別代表にも何度も招集されてきた期待の若手選手だ。 2022年に名古屋のトップチームに正式昇格を果たしたが、同クラブでの出場機会はYBCルヴァンカップと天皇杯に限られた。出場機会を求めて、昨季はAC長野パルセイロ、今季は岩手へレンタル移籍している。

 岩手ではFW登録となっているが、その本来のプレースタイルはテクニシャンタイプのMFだ。観ている側を驚かせる攻撃センス溢れるプレーが魅力的で、この辺りの特徴は名古屋のホームページに掲載されているQ&Aで「憧れ・目標とする選手」等複数の質問の回答に元ドイツ代表MFメスト・エジルを選んでいることからもうかがえる。また、中盤の複数ポジションで起用可能なユーティリティ性も強みの一つだろう。

 昨夏から所属した長野では、負傷離脱もあって公式戦出場無しに終わってしまった。岩手で迎えた今季は再起を図りたいシーズンのはずだが、今のところ3月に行われたリーグ戦2試合の出場に留まっている。4月17日のYBCルヴァンカップ・セレッソ大阪戦で控えに名を連ねて以降、ベンチ外が続いている点もサポーターにとっては気になるところだ。

 チームは現在J3リーグ最下位に沈んでおり、8日には中三川哲治監督が解任されたことがクラブから発表された。今後、豊田のプレータイムにも影響があるかもしれない。まだ若く、伸び代が十分にあるからこそ、2シーズン連続で不発に終わってしまうことは何としても避けたい。豊田は、岩手の残留を目指す戦いに加わることはできるだろうか。

FW:棚田遼(たなだ・りょう)
生年月日:2003年6月19日
保有元クラブ:サンフレッチェ広島
レンタル先クラブ:いわきFC(J2)
今季リーグ戦成績:0試合0ゴール0アシスト

 サンフレッチェ広島で大切に育てられてきた逸材は、今季いわきFCへレンタル移籍することを決断した。

 現在20歳のFW棚田遼は、U-16日本代表経験を持つ期待のアタッカーだ。狭いエリアを難なく攻略するドリブル技術と視野の広さが魅力的で、その能力を活かしてセンターだけでなく、サイドに流れて仕掛けるプレーも得意としている。

 広島の下部組織で育ち、そのまま同クラブでトップチームデビューを果たすと、2022シーズンはリーグ戦4試合、昨季はリーグ戦1試合に出場した。当然、十分な出場機会が得られているとは言い難い状況であり、さらなる成長を目指して今季からJ2リーグへの武者修行を選んでいる。

 しかし、レンタル移籍先となったいわきFCでは、今のところピッチに立てていない。若手選手に出番が回ってくることも多いYBCルヴァンカップの試合にもベンチ入りすらしておらず、その理由は気になるところ。いわきFCは既にYBCルヴァンカップ敗退が決まっており、ここからはリーグ戦と天皇杯の二足の草鞋を履いていくことになる。どこかで、棚田がピッチに立つシーンを見たいものだ。

MF:土肥航大(どひ・こうだい)
生年月日:2001年4月13日
保有元クラブ:サンフレッチェ広島
レンタル先クラブ:栃木SC(J2)
今季リーグ戦成績:1試合0ゴール0アシスト

 栃木SCに所属するMF土肥航大は、なかなかピッチに立てない日々が続いている。

 サンフレッチェ広島の下部組織で育った土肥は、身長180㎝の大型MFだ。左足から高精度のパスを供給することができ、プレーの随所で抜群の視野の広さとパスセンスの高さが光る。将来有望なゲームメーカーは、2019年に広島とプロ契約を結んだ。

 そんな土肥は、2022シーズンには水戸ホーリーホック、昨季はヴァンフォーレ甲府とFC今治へのレンタル移籍を経験。甲府では出場機会に恵まれなかったが、初めて広島を離れプレーした水戸と、昨季終了まで在籍していた今治では一定のプレータイムが与えられていた。

 しかし、今季からレンタル移籍することになった栃木では、ここまでわずか2試合にしか出場できていない。そのうち1試合のYBCルヴァンカップ・いわてグルージャ盛岡戦ではフル出場を果たしたものの、リーグ戦では第8節ジェフユナイテッド千葉戦(0-8)における途中出場のみとなっている。控えとしてベンチを温める試合と、ベンチ外となってしまう試合が続いており、満足のいく出場時間を確保できていないのが現状だ。

 このまま状況が好転しなければ、昨季のように、シーズン中に新たなレンタル移籍先を探すシナリオが実現するかもしれない。土肥の左足が輝くシーンをなるべく多くの試合で見たいものだ。

MF:松本凪生(まつもと・なぎ)
生年月日:2001年9月4日
保有元クラブ:セレッソ大阪
レンタル先クラブ:モンテディオ山形(J2)
今季リーグ戦成績:7試合0ゴール0アシスト

「ネクスト山口蛍」とも呼ばれていたMF松本凪生は、モンテディオ山形でプレータイムを欲している。

 現在22歳の松本は、世代別日本代表に何度も招集された経験をもつタレントだ。同選手は、卓越したボール奪取能力と状況判断力で素早いトランジション(攻守の切り替え)を可能にする。右足のキック精度の高さにも定評があり、鋭いパスを差し込むだけでなく、セットプレーのキッカーを務めることもしばしばだ。ピッチ上での役割と強烈なミドルシュートでゴールを脅かすシーンから、そのプレースタイルを同じセレッソ大阪ユース出身のMF山口蛍と重ねられることもあった。

 そんな松本は、2020年にC大阪でトップチームデビューを果たすと、翌2021年に栃木SC、2022年にはヴァンフォーレ甲府へレンタル移籍。栃木には1シーズンの在籍、甲府へは2シーズンの在籍となったが、どちらのクラブでも毎年リーグ戦30試合近くに出場してきた。

 しかし、今季からレンタル移籍した山形では控えが定位置となり、リーグ戦で先発に名を連ねたのはわずか1試合。渡邉晋監督の元では、途中出場での起用がメインとなっている。

 直近のリーグ第14節レノファ山口戦では、ベンチメンバーにも入っておらず、いかなる理由であれアピールできていないことに変わりはない。松本の実力とこれまで積み重ねてきた実績を考えれば、残念で仕方がないことは確かだ。次の試合では、ピッチで躍動する松本の姿を見ることができるだろうか。