かつて倉庫街だった神戸のウオーターフロントで再開発が進んでいる。2021年に劇場型アクアリウムやフードホールが入る「神戸ポートミュージアム」がオープン。来年4月には新港第2突堤に関西最大級のアリーナも誕生する予定だ。

なかでも注目なのが、港町神戸の象徴ともいえるメリケンパークに建つ神戸ポートタワーのリニューアル。1963年に開業し、鼓をイメージした優美なフォルムから〝鉄塔の美女〟とも呼ばれ、親しまれてきた。21年9月26日から耐震補強工事のため、一時閉館。より神戸の魅力を味わえる仕掛けや店舗が新たに加わり、4月26日に再オープンした。

高さ108メートルのポートタワーは14年に国の登録有形文化財に登録されている。今回の工事では、その外観を損なわないよう赤い鉄骨構造は変えず、頭頂部分とくびれ部分に制振装置を設置して耐震性能を高めた。

一番の目玉は、これまでは上がれなかった屋上にデッキを新設し、ガラス張りの空中回廊を設けたこと。山と海が接近する神戸ならではの景色を360度見渡すことができ、夜11時まで夜景も楽しめる。新しいデートスポットとして人気を集めそう。

展望フロアの内部も一新され、見どころ満載だ。展望1階はギャラリーとしてアーティストらに貸し出し、作品の販売も行う。オープニングでは、Z世代に絶大な支持を受ける「エモい」系カルチャーを代表するアーティスト、ヨシフクホノカの作品を展示中だ。

展望2階には、神戸の「フェリシモ」が開発したポートタワー公式オリジナルグッズがずらり並ぶ。展望3階には約30分で床が1回転するカフェ&バー「レディーゴーラウンド」、展望4階には、神戸モチーフを散りばめたネオン風アートや身体の動きに合わせて変化するインタラクティブアートが登場。展望5階では、フォトブースで思い出の写真を撮影できる。展望フロアへの入場料は大人1000円(子供400円)、店舗デッキへはプラス200円(同100円)。

無料で入れる低層階エリアもおすすめだ。3〜4階には神戸らしさにこだわったレストラン&バー「ポートテラス」が出店。4階吹き抜けテラスでは外の景色はもちろん、タワーを内側から眺めながら食事を楽しめる。

2階には「ビームスジャパン」が県内初出店。神戸長田のかばんメーカー「神戸ザック」「風月堂」と共同制作したゴーフルバックなど神戸限定商品も販売する。「イコリ」の売り場には「神戸ザックイモック」を中心に播州織のストールや淡路島のお香など地場産品が並ぶ。ポップアップスペースで飲める灘五郷の日本酒もおすすめだ。

新装された神戸ポートタワーの年間入場者数は45万〜60万人を計画。「地域に愛され、世界に認知される神戸のランドマーク」をめざしている。 (フリーライター・橋長初代)

■橋長初代(はしなが・はつよ) フリーライター。関西を拠点に商業施設、百貨店、専門店、アパレル、ホテルなどの動向をビジネス系メディアに寄稿。取材では現場での直感と消費者目線を重視。2019年に実家のある奈良にUターン。最近は、奈良の歴史と文化に魅了され、地元の情報誌やSNSでの発信にも力を入れている。