〈発売中の『婦人公論』5月号から記事を先出し!〉 国内最高齢の女性監督、山田火砂子さんの新作映画『わたしのかあさん―天使の詩―』が公開された。夫の映画製作を支えたのちに自らも撮るようになったが、選ぶ題材は社会福祉、女性の地位向上、戦争……と一貫している。そこには「私が当事者である」という強い意識があった(構成=篠藤ゆり 撮影=洞澤佐智子)

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資金集めに全国を飛びまわる

映画監督のデビューは64歳だから、この30年弱で10作品を撮ったことになります。私はもともと女優だったし、監督をやろうなんて考えたこともなかったんだけどね。

さすがにこの歳になると、身体はしんどいですよ。ここ数年は週3回、人工透析に通っているし、足も悪いでしょ。それでも上映会があれば、どこでも会場に出向いて挨拶しています。

うちは「現代ぷろだくしょん」という映画製作会社。いわゆる独立系というやつで、製作も配給も自分たちでするの。とにかくお金集めが一番大事だから、上映会の会場でお客さんに「製作協力券」と名づけた次回作のチケットを1枚1000円で買ってもらい、そのお金で新しい作品を撮るんです。

私はこの通り口が悪いもので、政治批判だろうがなんだろうが言いたい放題。でもそれが面白いんだろうね。皆さん、私がしゃべると講演料と思って券を買ってくれるわけです。

だからプロデューサーをやっている次女が、「行かなきゃダメ」って厳しいのよ(笑)。前作『われ弱ければ―矢嶋楫子(やじまかじこ)伝』のときは全国204ヵ所の会場を回ったんだって。頑張るよねえ。

医者からは「聞くところによると北海道であれ、アメリカであれ飛んで行っちゃうらしいですけど、少しはご自分の年齢を考えてください」とよく注意されます。でも、言えないじゃない、「映画の資金稼ぎやってるんです」って。(笑)