東京大学を卒業後、弁護士として勤務。2020年に「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、翌年『元彼の遺言状』で鮮烈なデビュー。エンタメ小説の書き手として次々と人気作を生み出してきた新川帆立さん。敏腕弁護士、剣持麗子が主人公の『元彼の遺言状』、公正取引委員会が舞台の『競争の番人』は2クール連続の月9として放送され、話題に。新作『女の国会』は、国会のマドンナ、“お嬢”こと、朝沼侑子が遺書を遺し、自殺したところから始まる。長年のライバル関係でありながら、ある法案の改正を目指し、共闘関係にあった野党第一党の高月馨は、彼女の死がどうも解せない――。「女性差別を書きたい」という思いが出発点となった本作では、議員、秘書、記者の生身の姿が活写される。そこには2か月もの間永田町に部屋を借り、徹底した取材から生み出されていった「人間」そのものが浮かびあがってくる。

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取材準備のなかで気付いた
政治家たちの「行間」

読者さんが政治家になったつもりで読んでもらえるものを――。それこそがエンターテインメント政治小説としての面白さであると思ったので、本作では政治家たちを人間として書く、政治家の視点から“政治”を書くということを意識しました。

私はこれまでも様々な職業の人を主人公に小説を書いてきましたが、取材の際、いつもそこで働く新入社員のつもりで取材先へと向かうんです。今回は、議員や政治記者が慌ただしく行き交う街の雰囲気も生で捉えたく、2ヵ月間、永田町にウィークリーマンションを借り、国会議員や地方議員、秘書、政治部記者と20名弱の方々にお話を伺いに行きました。

政治家のもとへ取材に行くときは、事前にその方の著書やインタビュー記事、ホームページを読み込み、何を大切にして政治活動をしているのかということを理解することを念頭に置きながら取材準備をしていきました。

ホームページでは大事にしたい政策を三つ、掲げていらっしゃる方が大半なのですが、例えば「子育てしやすい街づくり」のような生活密着型のポリシーが二つ並んだあと、「議会の審理プロセス適正化」のような、ゴリっとしたものが突然入っていることがよくあるんです。ご自身で掲げる政策の間にあるギャップ、いわゆる“行間”みたいなものっていったい何なのだろう?ということをずっと考えていたのですが、実際に会い、話を伺っていくと、その“行間”からその方の本音が透けて見えてきました。