新型コロナウイルス禍の中、福井県内の小中学校の給食は「黙食」が求められ、多くの学校で机を向かい合わせにせず、授業中と同様に前を向いたままの「スクール方式」が採用された。ランチルームがある学校はテーブルに仕切りを設け、“個室”にこもるように食べた。昨年5月の5類移行を契機に、各校の判断で徐々に対策が緩和され、かつてのような「楽しい給食の時間」が戻ってきている。

 2020年の一斉休校後、福井県教育委員会は給食に関し「会話を控えるとともに、時間をずらしたり、空き教室を活用して定員の2分の1にしたりするなど工夫を」と明記したガイドラインを作成し各校は対策を講じた。

 コロナ禍前は全学年約300人がランチルームに集まっていた坂井市丸岡南中学校。高さ約45センチの板でテーブルの正面と左右の3方向を仕切り、席の間隔も空けた。生徒が入りきらず、2年生は理科実験室などを利用した。

 福井市中藤小学校は、各教室で4人ほどのグループの対面式からスクール方式に変更。「黙食」を徹底するため、教室のテレビで足羽山公園遊園地の動物紹介や市の学芸員が昆虫や鳥を解説するDVDを流した。

 丸岡南中で以前のような給食に戻ったのは昨年の夏休み明けから。教諭や生徒がリクエストした音楽が流れる中、生徒たちは好きなおかずやテレビ番組の話に花を咲かせる。3年生の男子生徒は「みんなでしゃべったり、食べ終わった後は一緒に勉強したり。給食の時間が一番楽しいという日も多い」。3年生の女子生徒も「違うクラスや学年の人と話す機会ができてすごく楽しい。仲が深まる、良い時間」と笑顔を見せた。

 脇本裕之教頭は「(コロナ禍の中の給食は)生徒同士のシルエットだけが見えるような状態だった」と振り返る。ランチルームに全学年が集まる給食は「学校の柱の縦割り活動を充実させる一環でもある。ただ食べるだけでなく、楽しく会話することも生徒にとって貴重な経験。いい意味で“がやがや感”が戻ってきた」と目を細めた。

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ5類に移行してから、5月8日で1年。福井県内の現場を訪ね、現状を聞いた。