リーグ最高の盗塁阻止率誇った野球評論家・野口寿浩氏も「勝てない」

 2年連続最下位から浮上を期す日本ハムに開幕早々、フレッシュな若手捕手が台頭している。6年目・23歳の田宮裕涼(ゆあ)捕手だ。チーム5試合中4試合でスタメンマスクをかぶり、打っても打率.500(12打数6安打)をマーク。何より専門家をうならせているのが、驚異の“バズーカ肩”だ。(成績、記録は全て4日現在)

 現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として計21年間活躍した野球評論家・野口寿浩氏は昨季、田宮の強肩に仰天した。「二塁への送球で凄い球を投げていました。楽天戦で昨季盗塁王の小深田(大翔内野手)を余裕で刺しているのを見て、びっくりしました」と証言する。

 田宮の昨季1軍出場は10試合で、捕手としては6試合。他に左翼手として3試合、DHでも1試合出場した。少ない出場機会でも持ち味の強肩をアピールし、8度盗塁を試みられたうち4度刺し、盗塁阻止率5割をマークした。

 今季は実績ある伏見寅威捕手、清水優心捕手らを向こうに回し、正捕手の座を固めそうな勢いだが、いまだ盗塁を仕掛けられていない。野口氏は「去年強肩を見せつけたことが抑止力になって、相手が走れないのだと思います」と指摘。「ソフトバンクとまだ戦っていないので、周東(佑京内野手)がどうするのかを見てみたい」と球界随一の韋駄天との対決を心待ちにしている。日本ハムとソフトバンクの初対戦は今月9日、熊本で予定されている。

 野口氏は「僕も日本ハムで現役だった頃(1998〜2002年)、送球には自信があり、リーグ最高の盗塁阻止率をマークしたシーズンも何度かありましたが、地肩では田宮くんに勝てない。しかも彼は捕ってから投げるまでも非常に速い」と脱帽する。

「盗塁を阻止する力だけでも味方の投手はありがたい」

 さらに田宮の特長は、相手の盗塁を阻止する一方で、自ら盗塁する走力を備えていることだ。昨季は2盗塁、今季も開幕戦で二盗を1つ決めており、通算4盗塁をマークしている。昨季イースタン・リーグでは6盗塁。さらに左打ちの打撃にも、もともと定評があった。

 果たして、今季日本ハムでどれだけ出場機会を得ることができるのか。野口氏は「今はチームがそこそこ勝っている(3勝2敗)から、本人も気持ちよく野球をやっているでしょうが、負けが込んだ時には、捕手はいろいろ考えなくてはならないポジションだけに、責任を感じてふさぎ込んでしまう選手も多い。大事なのは、反省した上で気持ちを切り替え、同じ失敗を繰り返さないこと。誰もが通る道です」とエールを送る。

「田宮くんは盗塁を阻止する力だけでも、味方の投手にとっては余計な神経を使わずに済むので、ありがたいと思います。あとはリード面で、いかに投手陣の信頼をつかむことができるか」と付け加えた。

 まずは強肩がうなりを上げる日が楽しみだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)