多くの会社員は、通常大幅に収入が減る「役職定年」を経験します。そして会社員の老後は、役職定年以降にどれだけ稼げるかで大きく変わってくるのです。そこで、人材開発コンサルタントの田原祐子氏の著書『55歳からのリアルな働き方』(かんき出版)より、役職定年以降に「年収目標」を決める重要性と、「年収目標」を達成するための手段についてみていきましょう

役職定年後の年収はシビア…なかには「71%以上減収」の企業も

55歳の平均年収は、2023年の転職サービスdodaのデータによると、615万円となっています。また、『週刊ダイヤモンド』の2022年の調査によると、大企業の6割が役職定年制度を採用しており、役職定年による月給・ボーナス・年収減少幅は、11〜30%が最多となっていますが、なかには、71%以上も減収となる企業もあります。

そのため、ここでは55歳のときの年収を600万円と仮定して、その収入が300万円に減額となった場合に、副業等でどの程度補充するお金を稼げばいいかを試算します。

55歳で役職定年になる場合には、「65歳定年が義務化」を想定して、55歳〜65歳までの時間繋ぎとするか、もしくは、思い切って退職して転職・起業するなど、新たな道を歩む可能性もあることでしょう。

現役のうちに「定年退職後の生活」を考える

また同時に、定年退職後の生活も想定してみました。

厚生労働省が発表した2019年度の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、定年退職後の公的年金は、65歳以上男性の受給権者の合計受給額の平均は月額17万1,305円、女性は月額10万8,813円となっています。夫婦二人暮らしで年金を合算すると、合計でおよそ年間336万円となります。

このように、後述するシミュレーションは、「55歳役職定年後」にも、「65歳定年後」にも、どちらでも当てはまるように試算してみました。

もし、年収300万円だったとしたら、これらに加えて、どの程度稼ぎたいかを考えて、あなたに合った「年収目標ゾーン」を決定します。また、年収目標ゾーンが決まったら、目標に合った出口戦略で、具体的に何をすればいいかを確認してみます。

目標を達成するために…1ヵ月でどれくらい稼げばいい?

目標ゾーン①これまでの「6割の収入」を確保する

・年収600万円×6割=360万円。

・300万円との差額、60万円を稼ぐ方法を考える。

→60万円を12ヵ月で割ると、1ヵ月5万円稼げばOK。 付加価値を高めて今の会社に残る方法もあれば、「スキルシェアサービス」「スキル派遣サービス」に登録して、収入アップを目指しましょう。

【ケース1】今の会社で付加価値を高め報酬をアップしてもらう

→「スキル&年収&労働期間アップ」を目指して努力し交渉する

【ケース2】月5万円の副業を探す

→「スキルシェアサービス」に登録して稼ぐ

ちなみに、「スキルシェアサービス」とは、自分のスキルを登録して依頼を待つサービスのことを指しています。

【ケース3】月額5万円の顧問先を見つける

→「スキル派遣サービス」に登録して稼ぐ

なお、「スキル派遣サービス」とは、一般的な人材派遣というより、専門性やスキルを特定して派遣するサービスのことを指す造語です。

年収目標が「これまでの8割・これまでと同等・これまで以上」の場合

目標ゾーン➁これまでの「8割の収入」を確保する

・年収600万円×8割=480万円。

・300万円との差額、180万円を稼ぐ方法を考える。

→80万円を12ヵ月で割ると、1ヵ月15万円稼げばOK。 月額15万円に該当する、少しボリュームのある仕事を探しましょう。 もし、あなたが社内で部下に教えられるような「得意な分野」や「専門知識」があれば、講師として研修講師やオンライン講座の運営、大学講師の募集に応募することも可能です。

【ケース1】月額15万円の顧問先を見つける

「スキル派遣サービス」に登録して、複数の顧問先を見つけるか、自分のつてを使って顧問先を見つける

【ケース2】月1回研修講師(15万円)を務める

「研修講師・オンライン講座」を受注・構築する

【ケース3】月複数回実務家教員(15万円)を務める

「大学講師」の募集に応募する

目標ゾーン③これまでと「同等の収入」を確保する

・年収600万円×10割=600万円。

・300万円との差額、300万円を稼ぐ方法を考える。

→300万円を12ヵ月で割ると、1ヵ月25万円稼げばOK。 転職もよし、付加価値の高いコンサルティング等の副業をするのもいいでしょう。

【ケース1】合計金額が月額25万円になるよう、スキル派遣サービス等を組み立てる

「スキル派遣サービス」に複数登録する

目標ゾーン①➁で紹介したような、5万〜10万円程度の単価の仕事を複数こなして合計月額25万円になるよう、自分で組み立てる。

【ケース2】転職する

「転職する」を参考に、「転職の4つのパターン」の中で、もっともあなたの知識・スキル・コンピテンシーが活かせる企業に転職する

【ケース3】月額25万円のコンサルティング先を見つける

「コンサルタント」として独立を参考に、月額25万円の対価に見合うよう、「顧問よりさらに一歩進んで、業務改善や社内教育などのコンサルティング」を手がける

目標ゾーン④「これまで以上」の収入を確保する

・年収600万円×1.2倍=720万円。

・300万円との差額、420万円を稼ぐ方法を考える。

→420万円を12ヵ月で割ると、月に35万円稼げばいいのですが、この場合には、いっそのこと、高い年収を稼げる企業に転職するか、起業して高い年収を目指すといいでしょう。

【ケース1】転職する

特にあなたの知識・スキル・コンピテンシーを高く評価してくれる企業を探して、年収720万円以上の企業に転職する(例:エグゼクティブ転職サービス等)

【ケース2】コンサルタントとして独立する

コンサルタントとして独立し、月額30万円のクライアントを2件以上見つける

なお、コンサルタントとしての稼働日数が少ない場合は、「スキル派遣サービス」や、「オンライン講座」「研修講師」なども兼業できる。

【ケース3】起業する

あなたのもっともやってみたい仕事、得意な仕事で独立する。ただし、起業するための最小限の費用は必要となる。

田原 祐子 人材開発コンサルタント/ナレッジ・マネジメント研究者  

著者:田原 祐子