年収1,000万円稼ぐのも夢じゃない仕事、ひとり代理店は都会だから成立すると思っていませんか? ひらり宣伝社の代表である小宮絵美氏は著書『自宅で年収1000万円 「ひとり代理店」で稼ぐ 新しい起業の教科書』の中で「地方でも十分に稼げる」と言います。一体どうしてでしょうか? 本書から紹介します。

人が集まるところに仕事がある

東京や主要都市に本社のある大きな会社ばかりが販促費を使ってくれるわけではありません。それに大きな都市は競合も多く、大きな企業の仕事は大手広告代理店が総ざらいしてしまいます。

優良企業は地方にもたくさんあります。大手が参入していない地方の中小企業には、ひとり代理店の仕事があふれています。地方は小さなコミュニティのため、いい意味で噂もすぐに広まり、紹介が増えていきます。

ちょっとのことで大きな差をつけられる

同じ仕事をする人たちより、ちょっとだけ気のきいた仕事ができれば評価がぐんぐんと上がっていきます。少しだけフットワークが軽い、丁寧に仕事をしてくれる、レスポンスが早いなど、あなたにできる「ちょっとだけ」を無理ない程度にできれば、そこを気に入ってくれる人が吸い寄せられてきます。

似た人が集まる場所に行くと仕事になる

経営者が集まるような組織の会合なども、勤めていた広告代理店の社長のすすめで行きましたが、行ったからといって仕事が増えるわけではなく苦手で、どんどん敬遠するようになりました。

そのかわり、進んで行っていたのはアイディアをどんどん出していき、ディスカッションをするようなイベントや集まり、趣味のパン教室、陶芸教室などです。仕事、趣味いずれに関するものでも、似たような人が集まっています。似たもの同士が集まる場所であれば、仕事になる可能性が高いのです。

資料を持っていって雑談

その中からコツコツと仕事をとっていきました。

年間を通して、チラシなどの販促物を制作しないシステム会社は、毎年11月に入ると、年賀状のデザイン一覧を持っていき、社長と世間話をして帰るだけです。

年始に福引をするエステサロンは、10〜11月にノベルティのカタログを持っていき、店長とランチをして帰るだけ。

チラシ折込をしていた美容院は、決算時期を覚えておき、決算前にチラシを大量印刷・配布してもらえるよう、最新の新聞折込の部数表を持っていくだけでした。

お客様と話をするきっかけにするため、なにかは持っていっていましたが、売ろうとはしていませんでした。ただ、持っていくだけです。ですが、気になる時期に気になる資料を持っていっているので、後で勝手に検討してくれ、発注してくれます。

声をかけてもらいやすくするだけで仕事になる

「地方営業では雑談しかしていなかった」

こう言っても過言ではありません。ピアノ販売店や墓地のオーナーのところで数時間コーヒーを飲んでいたこともありました。1週間の半分はお客様とランチに行きました。

とにかく話し相手をしていました。そう、私がちょっとだけできることが、他の営業の人より多くの時間を一緒にいて、たくさん話すことだったのです。

難しい話をしているわけではなく、ピアノ販売店の社長と話していた内容はまさに雑談。「このバッグ見てくれよ。オンラインのシークレットセールで激安でね」というような話ばかりで、仕事の話ではありません。ただ、この雑談があるからこそ、どんなことでも声をかけやすくなり、仕事が舞い込んでくる状態をつくることができました。

お役所の仕事は雑談から

こうした雑談から、知り合いのユニフォーム会社が市役所から制服の受注をしていることを知りました。

[実践例] もちろん入札はあるのですが、こうした役所の仕事を受注できると業績が安定する、というような話をされていました。当時、勤めていた広告代理店は市役所の入札の権利を持っていませんでした。どうしたら入札に参加できるのかといろいろ調べ、入札参加資格の業者登録にこぎつけました。

「今度○○の入札説明会があります」と告知があり、入札内容に応じて入札金額を提出する準備をします。

そして「印刷物」の入札に何度もチャレンジしましたが、いつも落選。

それも当然です。参加しているのは印刷会社ばかりで、私は印刷会社に出してもらった見積りに利益を上乗せして提出していたのですから。

参加することで仕事が広がる

当時、参加していた市役所の入札では、市役所の一室に業者が集まり、それぞれ入札金額を記載し、入札箱に入れていました。その場で、どの会社がいくらで受注したか発表があります。その発表のたびにどよめきが起こり、受注もできないのに入札に参加し続けるのは精神的にもしんどいことでしたが、限られた人しか体感できない面白い体験でした。

しかし、「印刷会社ばかりが参加している印刷物の入札に『広告代理店』が来ているらしい」という噂を入札に関係のない市の別部署が嗅ぎつけました。その部署では、単純に「この印刷物をつくってください」という指示通りのものをつくるのではなく、一緒に内容を検討し、つくりあげてくれる人を探していたのです。

2社程度の相見積りは必要でしたが、仕事が受注できるようになりました。実績ができれば、それを見て、他部署の人が声をかけてくれます。

「あれ、誰に頼んだの?」

市役所は小さな世界です。市役所内にもたくさん仕事があります。入札案件ばかりが市役所の仕事ではありません。

紹介、紹介がつながり、観光協会までその輪は広がりました。目の前の仕事が未来につながる仕事なのかは考えず、「とにかくやってみる」を実践した結果でした。

このような市役所の仕事は、必ずしも株式会社などの法人である必要はありません。市によっても異なりますが、個人事業主でも競争入札(見積り)参加資格審査に申請することができます。

全国どこでも市役所のような小さなコミュニティが展開されています。人生に無駄はなく、目の前の仕事を一生懸命やっているだけで、紹介でつながっていきます。

そのためには、売上げにつながるのか、無駄なのではないかなどは考えず、気になる人には会いに行き、その人に興味を持つ。これが多くの人を紹介してもらえる、はじめの一歩です。

広告代理店に勤務していたのは、人口45万人ほどの広島県福山市です。このとき、福山市と近隣の地方のお客様で売上げの99%をあげていました。それでも2,000万円ほどの利益を私ひとりで出すことができました。どんな地方都市でも「ひとり代理店」の仕事はあるのです。

小宮絵美

ひらり宣伝社代表

著者:小宮 絵美