Copilot用タスクバーの右にあるのがRecallのバー。ここで過去の画面に遡って参照できる。Copilot+シリーズのAIパソコンに標準装備 Image: Microsoft

名前が悪いよね。不良品回収や『トータルリコール(原作『追憶売ります』)』を連想しちゃうもん。

5月のイベント「Microsoft Build」で発表された新機能のなかでも一番騒がれているのがコレ。Windows 11搭載AIパソコンCopilot+シリーズで展開する新機能「Recall(リコール)」です。

これは、Macのバックアップで使うTimeMachineみたいなもの。常時スクショを撮りまくって中身をAIが記憶してくれるので、前に見たネットや動画、アプリにさかのぼって検索が可能になります。こうしたことができるのは、AI機能が強化されたPCのおかげ。

それはありがたいんだけど、プライバシー的にどうよ、と賛否を呼んでいるってなわけです。

RecallのデータはすべてPCにだけ保管される

Microsoftが口を酸っぱくして言っていたのは「データはクラウドには送られません!」という点です。

従来のWindowsのAIアシスタント「Copilot」はすべてクラウドで処理していましたが、AIパソコンのCopilot+シリーズはAI的なことも端末上のNPUで高速処理できるのが違い。

実際、Recallも、マルチモーダルの小規模言語モデル(SLM)など、複数のAIモデルがパラレルに駆動することによって、PC内部で処理されています。いろんなアプリで使う文字、画像、映像。それを様々なモデルで効率よく整理してPC上の「 Windows Semantic Index」という場所に保管するのです。だから、まあ、外部に漏れ出る心配は最小限というのはわかりますよね。

WSJからの取材に対し、サティヤ・ナデラCEOは「われわれはAIとの関わり方を理解する超初期段階にある」としながらも、これまでクラウドのChat GPTでできたことが、これからはパソコン上でできるようになる」と意気揚々です。

それだけの処理を行なうとなると、CPUやGPUへの影響が心配だけど、その辺りのことは不明ですRecall。

どのパソコンにくるの?

新型Surface LaptopはRecallが標準装備される第一陣AIパソコンのひとつ Image: Microsoft

Recallは、Copilot+シリーズのAIパソコンすべてに標準装備されます。タスクバーのアイコンを押すと、そこからRecallのUIにアクセスできますよ。自動的にスクショを保存する対象の変更やRecall機能の無効化は設定で行なえます。

外部のアプリでもこの機能は使えるみたいですけど、Microsoftのデモで示されたのは、とりあえずFile Explorer、Edgeブラウザ、365アプリのWordやパワポだけでした。

「今のところ」Recallを使えるのは、Snapdrago X Plus/Elite搭載のCopilot+パソコンだけです。

公式のFAQにはインテルやAMDとも実現に向けて協業中とありますが、Intel Core Ultra 7/9搭載のAIパソコンにもくるのかについては、Microsoftに確認中です。インテルから出るLunar LakeプロセッサならAI処理のNPUもついてるから大丈夫かなと思うんですけどね。先月AMDが発表したRyzen PRO 8040シリーズの新型プロセッサもAI処理はお手のものですし。

また、NvidiaのRTXチップでも使えるようになりそうです。

ストレージは食いそう

Recallを使って、Pinterestの検索履歴を呼び出すデモ(写真はマイクロソフトのAIエクスペリエンス主幹プロダクトマネジャーのCarolina Hernendezさん) Photo: Microsoft

スクショを撮りまくるわけですから、ハードドライブ/SSDの容量は食います。Copilot+パソコン買うときには、1TBくらいのSSDは用意しないと不安かも。

いちおう、Microsoftによると、必要要件は256GB以上のパソコンで50GB。256GBに満たないパソコンでは、ドライブスペースのうち25GBがRecallに割り当てられます(保存期間を3か月に設定した場合)。

HDDの容量を食われたくなければ機能をOFFにできるし、割り当てる容量を手動で変更することもできます。設定した限度いっぱいになると、古いほうから順にスクリーンショットは削除されていきます。

本当に安全なの?

Image: Microsoft

パソコンでは人に見られたくないページにアクセスしたり、恥ずかしい写真を見たりもするので、Recallで一番知りたいのは、端末上に保管されるデータの秘匿状況ですよね。そんな心配を見越してか、発表では「自身のMicrosoft用プロフィールにアクセスできない人にはスクショは一切公開されません!Microsoftからも見れません!」と同社も念押ししていました。

スクリーンショットはすべて暗号化してPCのドライブに保管され、端末上のユーザーのプロフィールにリンクされるとのこと。したがって、プロフィールが2つある端末上においても、互いのスクショを盗み見たりはできなくなっています(パスワードを共有している場合は見れちゃうけどね)。

スクリーンショットを撮られたくないアプリやサイトがあれば手動で設定できるほか、EdgeブラウザをInPrivateモードで使用中はRecallのスクショとりも止まります(ほかはブラウザによるのかな)。あとDRMの保護のかかったコンテンツもスクショとらないってMicrosoftは言ってました。

ただ、入力したパスワードや非公開の文書、銀行口座などの財務データを隠す機能はまだないので、PCに不正アクセスされたら見られてしまいそうで怖いかな。入力内容自体が記録に残らなくても、サイト側にパスワードを隠す機能がなかったり、入力したパスワードを忘れて自分で表示させたりした瞬間にパシャッと撮られることだってありそう。

巷ではさっそく「トータル・リコール」と呼ばれてるRecall。成り行きを見守っていきたいです。