新型の魅力を認めつつも、先代型の味わいを捨てがたいのもまた事実。今どきはクルマ自体の品質が上がっているので先代型でも古さはなく、成熟した実力も先代型ならではの魅力。また、コスパの面でも優れている。ここでは、先代型をこよなく愛する著名人にその魅力をうかがった。

文/近藤暁史(office MUSHROOM)  撮影/木村博道(掲載されている内容はグー本誌 2024年5月発売号掲載の内容です)

 [先代型オーナー]Special interview part1 お笑い芸人 みやぞん

お笑い芸人 みやぞん

トヨタ アルファード(先代型) 中古車価格帯 159.8万〜1899万円

2002年登場の初代以来、高級ミニバンの頂点に君臨するアルファード。2015年に登場した先代型(3代目)は、走行性能や快適装備の充実化などで、高級サルーン並みの性能と乗り心地を実現し、その名を確固たるものにした。

「新型も含めて比較しないので、ウチの子が一番です!」

 都内にある某テレビ局。駐車場に止められたアルファードから出てきたのは、トレードマークの巨大なリーゼントがビシッと決まった、テレビでもお馴染みの“みやぞん”さん。出演前の楽屋でお話を聞きました。

グー アルファードというチョイスが売れっ子芸人さんらしいですね。

みやぞん そんな構えた感じではないですよ。実際に乗るまではアルファードをアルフォートって呼んでいたぐらい(笑)。高級感に憧れはあったけど、自然体でアルファードを選んだ感じです。芸能人御用達のクルマってイメージとはちょっと違って、なんか付き合い方も自然体。やっぱり自然体というのが一番ですよ。

グー ボディカラーが白というのもなにかこだわりがありますか?

みやぞん ジャガーとかロールスロイスを見て、やっぱり白って素敵だなと思ったんですよね。きれいだし、品があるところが好きなんです。こう見えてもね(笑)。

グー クリーンな印象ですね。

みやぞん そう、白いクルマが好きなのはやっぱり清潔感があるから。黒もイイけど、なんかイカツイ人が降りてきそうな感じがするでしょ。

グー ベージュの内装も素敵ですね。

みやぞん 車内が落ち着く感じで、とても気に入っています。

グー 話を聞いていてアルファードへの愛着が伝わってきます。

みやぞん この業界に入って初めて買ったクルマが、今乗っているアルファードなんです。だから特に思い入れがありますね。新型車はもちろんイイものだし、新型にドンドン乗り替えていく人もいますよね。そのほうが得みたいな……。そういうのは、ボクはなんかイヤなんですよね。

 下町生まれ(東京都足立区出身)というのもあるんでしょうね。たとえば自転車を買ってもらったら、本当に乗れなくなるまで乗り続けていました。だからこのクルマもなにか不備がない限り、壊れるまでずっと乗り続けようと思っています。

グー モノを大切にするタイプなんですね。話は変わりますが、今までの愛車遍歴について教えてください。

みやぞん 最初に乗ったのがカローラで、2台目がオデッセイ(初代)。3台目はグロリアのバン。その後は、またオデッセイ(初代)に乗りました。その次がヴォクシー(初代)。そして、今のアルファードという感じです。すべて中古車を買いました。

グー 全部中古車ってイイですね。

みやぞん 安く購入できる機会が多かったんですよ。知り合いがオデッセイがあるぞって言うから、買ったら全然クーラーが効かなくて、ボディカラーが黒だったのでなおさら暑い……みたいなことも。

グー いろいろと貴重な経験をされていますね。いつもクルマが身近にあった感じですが、アルファードに実際乗ってみて、どうですか?

みやぞん まずクルマに限らず、なんでも広いのが好きなんですよ。狭いのはとにかくイヤ。居酒屋で打ち上げをやりますっていうと、なんで席が狭いんですかね。参加者が増えたらもっと詰めて……なんて(笑)。

グー その点、アルファードは車内が広いのでイイですね。

みやぞん とてもゆったりして快適ですよ。移動中も楽だし、ロケが多いときに車内でリラックスして休めるので気に入ってます。シートを倒せば楽に寝られますからね。ロケバスだと、なにかと周りに気を使わせてしまって申しわけないなって思ったりするので、ありがたいですよ!

グー ミニバンはほかにもありますが、そのなかでアルファードを選んだ理由ってありますか?

みやぞん 買い換えがちょうど忙しくなってきたときで、自分で探しに行けなかったんです。それで当時のマネージャーが候補を出してくれて、「これだ!」って直感で決めました。

グー 運命の出会いですね!

みやぞん それとボクって、5人兄弟の末っ子でしかも男ひとりなんです。末っ子の長男(笑)。だから兄弟で出かける用事は、ボクがクルマを出すことが多くて、そのときにアルファードのようなサイズじゃないと厳しい……というのはありますね。

グー なるほど。今回の特集テーマでは先代型をピックアップしていますが、現行型って気になりますか?

みやぞん 興味や関心がないということではないですけど……、現行型が欲しいとか、乗り換えたいとかは全然考えないですね。ホントに今のアルファードで十分満足! 仮に機能がまったく違っていても、今のクルマがイイです。

グー 現行型だと全グレードがエグゼクティブラウンジで、ファーストクラスみたいなシートですね。

みやぞん シートが囲まれているような印象ですよね。身体が大きいからあれも狭く感じちゃうんですよね。

グー たしかにそうかもしれません。

みやぞん そもそも、ボク自身がほかとなにかを比べないタイプだから、今乗ってるのが最高だし、もし次に別のクルマに乗ったなら、それがまたそのときの最高になるのかもしれません。現状であれがイイなぁ……とかは考えないです。ボクはボクでイイし、ほかの人に特に憧れることもないっていう感じかな。

グー みやぞんさんらしい、気持ちがイイ話ですね。

みやぞん バラは紫陽花に憧れないっていうか(笑)。花ってほかの花に寄せようとしないですよね。でも、人間は寄せたがるんじゃないですか。比べた瞬間からなんかマイナスなことが始まるような気がしますね。

グー じつに哲学的です。話は変わりますが、YouTubeチャンネルを見ていると、ご自身で運転されることも結構多そうですね。

みやぞん 普通に運転しますよ。気分転換にもなるし、運転は好きです。昔は若手や同期を乗せて仙台や大阪のイベント会場まで行ってました。

グー だから運転がうまいんですね。

みやぞん 一緒に乗ってる人には酔わないし、すごいスムーズだって噂されているみたいです(笑)。止まるときはブレーキをちょっと利かせてから、一瞬クッと離して逃がすみたいに踏んだり。駐車するときも位置をまずしっかり確認してから止める。みんな動き出してからどうしようって考えるからダメなんですよ。“一発で決める”という強い意志が大切ですね!

グー 参考になります! ここまで話を聞いていて、現車への満足度はかなり高いと思いますが、逆に不満はありますか?

みやぞん 渋滞が多いから、空を飛んでくれたらいいのに! って思うんですけど……。そうなるとクルマの話じゃなくなっちゃうかな(笑)。実際、不満はないですよ。

グー あと、クルマに名前を付けていると聞いたのですが……。

みやぞん そうなんです。ファルコンって名付けていたんです。ネバーエンディングストーリーが好きだし、白いし。でも最近、愛犬のラブが亡くなってしまったので……、ふと気づくとラブって呼んでます(笑)。

グー ますます愛着がわいて手放せなくなりますね。みやぞんさんのアルファードへの愛をたくさん感じました。ありがとうございました!

自分でもハンドルを握ることも多くて、運転テクニックには一家言あり。運転中は無心で、リフレッシュできる貴重な時間となっている。
お気に入りのポイント「バランスがとれたスタイル」

ほどよい車高やタイヤのボリュームなど、全体のバランスのよさがお気に入り。購入時からモデリスタ製のエアロが付いていて、これがバランスのよさをより引き立たせている。

全体のバランスのよさが最高です!
お気に入りのポイント「品がある顔つき」

新型ではフロントグリルがより大型化し、迫力ある顔つきに。一方、先代型のグリルはちょうどイイ大きさ。押し出しの強さはあるものの、気品すら漂ってくる顔つきがお気に入り。

お笑い芸人 みやぞん

足立区出身の幼馴染、あらぽんと組んだANZEN漫才で人気となり、その後独立。『世界の果てまでイッテQ!』をはじめとしたテレビ番組や講演会などで大活躍の売れっ子芸人。ギターを使った歌ネタなど、独自の世界観が人気でファンが多い。

みやぞんさんが乗り継いできた愛車たち

ホンダ オデッセイ(初代) 中古車価格帯:18万〜98万円

アコードベースの乗用車ライクな乗り味が特徴のミニバンとして登場。しっかりと座れる3列シートやウォークスルーも可能など、実用性が高くて大ヒットとなった。

トヨタ ヴォクシー(初代) 中古車価格帯:7.8万〜79.8万円

兄弟車のノアに対して、精悍なマスクやドレスアップ要素をプラス。5ナンバーサイズのスクエアなボディは扱いやすくエンジンは燃費を重視した2ℓを搭載していた。

 [先代型オーナー]Special interview part2 モータージャーナリスト 青山尚暉

みやぞんさんに続いて話を聞いたのは自動車評価のプロ、モータージャーナリストの青山さん。その愛車は実用性にこだわった、ゴルフのワゴンであるヴァリアントのマイスター最終型。なんとなく先代型を購入したわけではなく、現行型を試乗したうえで、あえて先代型を選んだというこだわりに注目だ!

ゴルフ7.5の完成度の高さがイイ!

モータージャーナリスト 青山尚暉

専門誌や一般誌、ウェブサイトなどに試乗記、コラムを寄稿している。独自の計測機器によるパッケージ寸法データも集積。ドッグライフプロデューサーとしても活躍する。

「新型と先代型を比べてから決めることが大切」

 自動車評論のプロは先代型をどう見るのか? 実際に先代型に乗っている青山尚暉さんに聞いてみました。

グー 愛車は7代目ゴルフのワゴン、ヴァリアントの後期型ですよね? ズバリ、青山さんが考える先代型に乗るメリットってなんですか?

青山 一般的に言われている、最後だから熟成されたというのもあるけど……一番大事なことは、もう2度とマイチェンがないってこと。新車を買った場合、そのときはイイなと思ってもすぐになにかしらの変更が発生します。その悔しさから解放されるのが大きなメリットですね。

グー ただ新型車のよさは、捨てがたい気もするのですが?

青山 そこが重要で、見ないで買って新しい8代目が出たら、残念……ではダメ。先を見据えて、どうするか決めることが大切。だから新型を確認せずに、単に先代型を選ぶっていうのはオススメできないです。

グー 吟味して購入したのが、こちらのクルマということなんですよね。

青山 そうです。ゴルフ8を知ったうえで判断しました。たとえば新型が発売された時点で、先代型の在庫があったりしますよね。その被っている時期がギリギリのポイントです。

グー 絶妙なタイミングですね。

青山 ゴルフ8はよかったけれど、私の好みにはちょっと合わなかった。比べて先代型は、やっぱりイイことが多いんです。最終型のマイスターだと本革シートが標準装備。ディナウディオのオーディオやいくつかオプションを付けてちょっと高くなったけど、それでも385万円ぐらい。

グー オプションだったものが、マイチェンで標準装備になることって多いですよね。実際の装備についてもう少し詳しく教えてください。

青山 ゴルフではわりとめずらしいシートヒーター付き本革シートが標準。'17年のマイチェン時にオプションだったデジタルメーターも標準装備になっているし、安全装備はほぼゴルフ8と変わらない。渋滞時の追従の設定速度が少し違うぐらい。

グー '17年のマイナーチェンジ以降、特に充実したので、ゴルフ7.5とも呼ばれているんですよね。

青山 ゴルフに乗るのはこれで3台目です。最初に乗ったのがは2代目ゴルフ。仕事柄、その後いろいろ乗り継いで、ゴルフに戻ったのが、出たばかりの'14年型ゴルフ7。こちらは試乗をして感動して購入。私の場合、犬を乗せてドライブすることが多いのでヴァリアントにしたのです。

グー そもそも青山さんの考えるゴルフの魅力ってなんですか?

青山 じつはゴルフの一番のポイントはなんですか? と以前メーカー側に聞く機会があったんです。返ってきた答えがオーバークオリティ。そのオーバークオリティの頂点がこのゴルフ7.5だと個人的には思います。ゴルフ8はちょっとオーバークオリティすぎたのかな(苦笑)。

グー となると、不満はない?

青山 8のワゴンは、自宅の駐車場に入れるとセンサーの警報がうるさくて。その点、いまのクルマはカミさんも運転する機会が多いし、サイズ感がちょうどよくてお気に入り。強いて不満を挙げるなら、ゴルフ7のヴァリアントを購入後、早い時期にマイチェンがあって、鍵がアナログキーからスマートキーに変更されたんです。それには愕然としましたね。でも、長い間乗った7も、今の7.5も不満はほとんどないですよ。

グー なるほど。不満はほとんどないんですね。“新型を見てから買う”とても説得力があります。

青山 燃費がイイし、走りもドイツ車らしくて質が高い。先代型と新型で少し重なっている販売時期があるでしょ。乗れなくても、せめて形を見て先代型がよければ在庫車を探せばよい。もちろん納得できれば、新型を選んで全然OKです。ただ、先代型の特に後期モデルなら、熟成していてマイチェンは絶対にないので、歯がゆい思いはしないです。

グー これはもう青山理論ですね。

青山 あと実用車ならディーラーの認定中古車がオススメ。整備やメンテに慣れているし、消耗品もしっかり交換して納車してくれる。そもそもディーラーで買うのって、安心感にもつながるよね。納期も早いし。

グー 充実の先代型ライフですね!御指南、ありがとうございました。

乗っているクルマはこちら!

フォルクスワーゲン ゴルフヴァリアント(先代型) 中古車中心相場 59.8万〜303万円

2013年に日本で発売された7代目ゴルフのワゴン。プラットフォーム、ボディ骨格を一新したことで、根本から性能を大幅向上させている。エンジンは2ℓと1.4ℓで、トランスミッションは2ペダルMTの7速DSGが組み合わされる。

お気に入りのポイント「足まわりのよさ」

さすがアウトバーンの国、ドイツ生まれのゴルフだけあって、懐の深い乗り味の足まわりは大満足。ただし純正タイヤのノイズだけは気になるので交換するとのこと。

オプション装着のオーディオ

マイスターにはオプションとなるディナウディオ製のプレミアムオーディオを装着。安価な価格設定で装着でき満足している。

燃費がイイ

1.4ℓという小排気量とMTベースのDSGの組み合わせで、高速道路では燃費が20㎞/ℓを超えることも。この数値なら十分納得だ。

青山さんオススメ 気になる先代型!

今、あえて先代型の中古車を買う意味のある車種の代表格が、トヨタ・ヴェルファイア。現車販売ゆえ納期が早いのはもちろん、アルファードと比べて比較的走行距離が少ない個体も多い。最大のポイントは、現行型アルファード&ヴェルファイアにはない、圧巻の動力性能を発揮する3.5ℓ V6モデルの存在。2017年12月のマイナーチェンジ以降のモデルであればトヨタセーフティセンスがバージョンアップされていて安全性能も高い。

トヨタ ヴェルファイア(先代型) 中古車価格帯:150.7万〜1199万円

先代型は2015年に登場した2代目で、乗り心地やエグゼクティブラウンジなど、高級サルーン並みの性能を誇る。日本の高級ミニバンの頂点に君臨する。

著者:グーネットマガジン編集部