文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス

 ジャパンオリジナルの乗り物が登場した。レクサスLMである。日本での正式発表は昨年10月だが、前から中国やアジアの一部で売られていたこともあり、話題となった。いよいよ日本上陸である。

ついに登場したレクサスの最上級ミニバン

LM500h エグゼクティブ

 ベースになったのはアルファードだが、それをレクサス風にうまく作り込んでいる。フロントマスクが最たるもので、ちゃんと今どきの“レクサス顔”しているからさすが。かなり押し出しの強い印象となる。“スピンドルグリル”改め“スピンドルボディ”というネーミングだ。

ゆとりのスペースにファーストクラス級のもてなしを用意

LM500h エグゼクティブ

 ユニークなのは、前2席の他には2列目に2つのキャプテンシートしかないこと。要するの、これだけの大きなボディと広いキャビンなのに4人乗りとなる。何とも贅沢な空間の使い方だろう。よってシートのリクライニングの角度は半端なく、オットマンも足を投げ出すくらい高く上がる。言うなれば航空機のビジネスやファーストクラス。爆睡できような環境である。

LM500h エグゼクティブ

 しかもフロントシートとの境にはプライバシー保護のパテーションが備わる。ドライバーとのコミュニケーションを断ちたければパテーションにある電動の窓も閉めてしまえば完璧だ。しかもその下には新規開発の48インチの大型ワイドディスプレイが備わり、エンターテイメント用として活用できる。映画鑑賞やテレビ、ゲームもし放題だ。つまり、完全なショーファーカーになるということ。ターゲットは一般家庭ではなく、企業トップの送迎用カンパニーカーや高級ホテルなどのVIPゲストカーとして振り切ったつくりになっている。乗員に快適な車内環境を提供するリアクライメイトコンシェルジュなんて装備はまさにそれ用だ。

リヤシートの快適性を第一に考えたセッティング

LM500h エグゼクティブ

 なので、装備はまだしも、走りのパフォーマンスに関してはそれほど言及する意味はないかもしれない。が、あえてそこに触れると、パワーソースは2.4リッター直4ターボ+ハイブリッドシステムで駆動方式はAWD。グレード名はLM500h“エグゼクティブ”となる。

 パワーに関しては特に加速が悪いとか出だしがダルいといったところはない。前後のアクスルに搭載されたモーターがうまい具合にこの大きな身体を加速させる。特にリアの高出力モーターの威力は高そうだ。で、乗り心地も悪くない。ボディを堅牢にすることでサスペンションを柔らかく設定することができ、快適さは担保される。というか、そこのセッティングはリアシートに合わせているのは一目瞭然。ロングホイールベースの恩恵もあってソフト感は高い。

 資料を見ると周波数感応バルブ付きAVSというのが関係している気がする。リアサスに取り付けられたそれは、路面などの振動に瞬時に対応し減衰力を切り替えるというものだ。低周波から高周波までかなり幅広く対応するらしい。レクサス初採用のシステムというからこのクルマに対する力の入れ方の強さを感じる。

LM500h エグゼクティブ

 ちなみに、ドライブモードは、“ノーマル”、“スポーツ”、“エコ”があり、その他に“リアコンフォート”モードなるものが存在する。前述したリアサス機能とアクセルやブレーキを統合制御するものだ。基本的にリアに人が乗るときはこのモードが最適だろう。路面のあたりが非常にソフトなのを感じた。逆にいうと、リアに人を乗せた状態でのスポーツモードはお勧めしない。酔いやすい人からは1分でクレームがきそうだ。

 とはいえ、リアコンフォートモードもグローバルで比較すれば極端に優れているとは言いにくい。これまでロールス・ロイスを頂点にさまざまなショーファードリブンカーに乗ってきたが、そこと肩を並べるまでには到達していない。その違いを知っている者であれば感じるはずだ。が、レクサスの開発陣が前向きに乗り心地を進化させているのは確か。その意味では今後の更なるインプルーブを期待したいところである。

VIPの心をくすぐる細やかな配慮

LM500h エグゼクティブ

 なんて感じで、高みを見ればまだまだだが、日本人らしい細かな配慮の装備などはさすがである。消音、遮音についてはあいかわらず世界でもトップランナーだし、シェードや車内ライトの点灯の仕方はかなり工夫されている。日本人のVIPの心をくすぐるような内容だ。まぁ、2000万円のプライスタグがついていることを鑑みれば、それも当たり前なのかもしれないが、これまで国産ミニバンを乗ってきた方には満足のいく一台に仕上がっている。

LM500h エグゼクティブ

著者:九島辰也(くしま たつや)