文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス

 CASE(コネクト、自動運転、シェア&サービス、電気自動車)によって自動車産業は100年に一度の大革命のなかにあると言われているが、最初にそれを提言したメルセデス・ベンツは対応のひとつとしてラインアップの見直しを図っている。そのなかで生まれたのがCLEクーペ。CクラスクーペとEクラスクーペを統合したモデルだ。

ボディサイズは従来のEクラスクーペ級

CLE 200 クーペ スポーツ(ISG搭載モデル)

 クーペで何よりも大切なのは美しさで、CLEクーペもフロントのショートオーバーハングにロングノーズ、ロングホイールベース、滑らかなルーフラインといったメルセデスクーペの伝統的なフォルムを、現在のメルセデスデザインのフィロソフィーであるSensual Purity(官能的純粋)で磨き上げたものとなっている。Sensual Purityを掲げてからのモデルは、エッジの効いたキャラクターラインなどは控え、フォルムや面構成の美しさなど本質で魅せるデザインとなる。CLEクーペもサイドの面の造形は流れるように一つに繋がっていて美しい。そのうえで、サラリと入れられた3本のラインが伸びやかな印象を加えている。

 プラットフォームはCクラスやEクラスでも用いられるMRAIIでボディサイズはEクラスクーペとほぼ同等かわずかに小さく、Cクラスクーペよりは明らかに大きい。

コックピットに座って感じるサイズ感のよさ

CLE 200 クーペ スポーツ(ISG搭載モデル)

 それでも、長めのドアを開けてコクピットに滑り込むと、視界が開けていることもあってほどよくコンパクトに感じられる。ラグジュアリーな空間ながら手に余ることのない、いいサイズ感なのだ。インテリアはCクラスなど最新のメルセデスに準じたもので12.3インチと11.9インチのディスプレイを採用。中央のメディアディスプレイは縦型で6度ドライバー側へ傾けられており、タッチ操作もしやすい。シートは専用開発でスポーティなデザインとなっていてフィット感もいい。

CLE 200 クーペ スポーツ(ISG搭載モデル)

排気量以上のトルクを感じる第2世代ISG搭載ユニット

 日本導入となったのはCLE200クーペでエンジンは2.0L直列4気筒ターボ。9G-TRONIC(9速AT)との間に最大23PS、205Nmの電動ブーストが可能なモーターを組み込んだISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)となるマイルドハイブリッドだ。第2世代となったISGはモーターが強化されているので低回転域での力強さが印象的。いかにもモーターでアシストしているというほどではないものの、排気量以上のトルク感があるのだ。メルセデスのエンジンは黒子に徹するイメージがあるが、CLEクーペのそれは意外なほど活発で、シュンシュンと回りたがってサウンドもスポーティ。それでもマナーの良さはメルセデスらしく、どんな場面でもスムーズだ。

CLE 200 クーペ スポーツ(ISG搭載モデル)

ルックスに見合う快適な乗り味

 試乗車はオプションのドライバーズパッケージが選択されていて、タイヤは標準の19インチではなく20インチが装着され、電子制御可変ダンパーのダイナミックボディコントロールと4輪操舵のリアアクスルステアリングが採用されていた。とくにダンパーがいい仕事をしているようで乗り心地は絶品と言えるほど。タイヤの大きさを意識させられることがなく、細かな凹凸から大きなギャップまで、すべての入力をしなやかにいなしてくれる。エレガントなルックスに相応しい快適な乗り味で贅沢な気分に浸れるのだ。それでいてコーナリングでは低全高ならではの安定感があってスポーティ。リアアクスルステアリングの恩恵でスムーズにノーズがインへ向き、ドライバーの思い通りのラインを描けるのだ。

CLE 200 クーペ スポーツ(ISG搭載モデル)

まとめ

 メルセデスAMG開発となった現行のSLは高い運動性能と引き換えに乗り心地が硬くなったが、CLEクーペはじつにバランスが良くて大人っぽい雰囲気だ。サイズは違うが旧型から新型のSLへの乗り換えを躊躇している人は一度乗ってみて欲しい。従来のSLのイメージだった、スポーティながら優しさのあるモデルに仕上がっているからだ。

https://www.goo-net.com/newcar/MERCEDES_BENZ__CLE/


著者:石井昌道(いしい まさみち)