小泉今日子さんと「新しいシニアライフ」を考える新企画。東京・築地本願寺を訪ねてイマドキのお墓を見学した後、併設カフェで話題の「お寺の朝食」をいただきながら、50代からの朝時間の活用法、小泉さんの「ちょっと不健全な朝活」について伺いました。

お寺のカフェでいただく朝食「18品目」の意味

お寺の朝食カフェでいただく「18品目」の意味
朝食メニュー「18品の朝ごはん」は2200円(税込み)。提供数限定

――前回、「終活」体験で訪れた築地本願寺にはカフェがあります。2017年にオープンした「築地本願寺カフェ Tsumugi」です。そこで大人気なのが「18品の朝ごはん」です。築地本願寺広報担当の岡本優真さんに人気の理由も伺いました。

小泉さん お茶は福岡の八女茶なんですね。大好きで、家でも飲んでます。なぜ18品なんですか?

岡本さん 築地本願寺のご本尊である阿弥陀さまは、すべての生きとし生けるものをすくうために48の誓願をたてられました。その中心となるのが「あなたを決して見捨てない」と誓った「第18願」で、それにちなんでいます。

小泉さん おかゆとお味噌汁と16の小さなお皿。持ち上げると、敷かれた台紙に料理名が印刷されているんですね。楽しい。これは人気が出ますね。

岡本さん 黒豆は「築地江戸一」、卵焼きは「つきぢ松露」など、築地場外市場の名品も入っています。地域とつながったお寺でありたいと思っていて、盆踊り大会にも出店していただいています。

小泉さん 地元の味をここで一度に味わえるんですね。実家の近くのお寺でも盆踊りや花まつりがあって、楽しみにしてました。地元の集合場所、お寺の原点ですね。

お寺の朝食カフェでいただく「18品目」の意味
朝食プレートの楽しい仕掛け。おかずは季節によって多少変化も

朝は誰にも邪魔されない時間。必ずお茶を飲みます(今日子さん)

30代の頃から早起きで、何時に寝ても6時に起きちゃう病だと思っていました。誰にも邪魔されない時間なので、集中してエッセイを書いたりして。

夜はちょっと考え事をすると眠くて寝てしまうんです。そのとき、自分の頭に「アップデートしておいて」と命じて、起き抜けでパソコンに向かったら、ほらスッキリしている。30代半ばからそんな感じでした。

朝食は、食べたり食べなかったりですね。お茶は必ず飲みます。起きて少したったら、ゆっくり飲みます。そのあとお腹がすいていたら、食べます。すいてなければ食べません。

食べるのは、まさにこの「18品の朝ごはん」の感じです。梅干しとか海苔とか明太子とか、冷蔵庫に常に入っているので。あとは漬物です。ぬか床があるので、キュウリとか大根とか漬けて。そういうのが大好きなんです。

ぬか床。これが、いい味なんですよ。もともと自分のを持っていたんですけど、どうもいい味にならないでいたら、母の弟のお嫁さんが「ぬか床いる?」って言ってくれて。私、何にも言ってないのにですよ。「欲しい」って二つ返事で答えたら、すぐ持ってきてくれました。おいしくて、漬物をおやつみたいに食べちゃってます。

朝ごはん、朝参り、朝掃除…イマドキ「お寺の朝活」

朝ごはん、朝参り、朝掃除…イマドキ「お寺の朝活」
朝日を浴びながらいただく朝食。ひと皿ひと皿、興味深々!

小泉さん お粥がすごく粘りがあって、おいしいです。それにしても朝からすごい行列!いつもこうなんですか?

岡本さん ありがたいことです。2022年にリニューアルし、席数も増やしました。予約も受け付けていますが、それでも「18品の朝ごはん」を目当てに午前8時の開店前には行列ができます。

小泉さん みなさん、朝から何かしたいんですよね。朝ってすごく自由を感じる時間ですから。さきほど、朝のお勤めの後にみんなでお寺を掃除する行事があると伺いました。今度は「朝掃除」興味あります!

朝ごはん、朝参り、朝掃除…イマドキ「お寺の朝活」
築地本願寺の朝のお勤めは7時〜。本堂を参拝してから朝食のコースがおすすめ

健康じゃなく、元気になる「朝活」もいいんじゃない?って(今日子さん) 

朝活っていうと、早朝礼拝とかヨガ活とか、心と体を整えるような健全な方に行きがちじゃないですか。もちろんそれはいいことですが、 ちょっと不健全を入れたくなるんですよね。

それでラジオ番組をご一緒している近田春夫さんと、2023年から始めたのが「BAD MORNING! CLUB」です。午前7時からDJが入って、朝食も出す。そんなイベントです。

若い頃にクラブで遊んでいた世代に、喝を送りたい。だから恵比寿のクラブで開きました。とんがった気分を思い出せて、元気になりそうな気がするんです。健康になろうと思ってする朝活と違って、ホルモンが反応しそうって。

みんなすごく楽しそうでした。2024年の1月にはボーリング場で2度目を開きました。お子さんを連れてくる人もいて、朝からすごくかっこいい音楽を聴いて、遊んで、そしてフリーマーケットには私も出店しました。能登半島地震があったので、自分ができる支援の形というのもあって。来てくれた方もみんな大人だからわかってくださって、朝はまだまだいろいろできそうです。

朝は「新しい何か」を吸収できる時間 

健康じゃなく、元気になる「朝活」もいいんじゃない?って(今日子さん) 

普段の朝は、メールの返事を書くことが多いです。経営している会社「明後日」の関係のメールはよほど緊急でない限り、家に帰った後は返信しないことにしているんです。その代わり、驚くほど朝早く返信してやろうって思って5時とかに返してます。

SNSもその時間に見ることが多いです。インスタグラムを「明後日」のアカウントでしていて、そのダイレクトメッセージ(DM)を開放しているんです。いろいろな世代の悩みのある人がいて、送ってくれます。

軽度の障害がある高校生から、友達に知られるのが怖くて死にたくなっちゃうというDMが来たり。だめだめだめってまず言って、お友達に言ったほうが楽になるけど、いいお友達なら言っても平気だけど、そうでなければ傷つくこともある。そういう覚悟で言わなきゃだめだよって答えました。今は高校も卒業して就職し、職場での楽しい出来事を報告してくれたりします。

私たちの仕事って、そういうことだと思うんです。

若いときにアイドルを始めて、でも歌も上手じゃないし、何もできないのにって思っていたんです。そんなときに「末期がんの子どもが小泉さんのことが好きで、サインを送ってくれたら元気になると思うんです」っていうお母さんからのお手紙をいただいて。

そうか、そんなふうに思ってもらえるのが私たちの仕事だったんだって思ったんです。私との短いやりとりでもちょっと元気になったり、死ぬのをやめたりしてほしい。そういう力はある仕事だと思っています。

健康じゃなく、元気になる「朝活」もいいんじゃない?って(今日子さん) 

今は独立して一人でやっているので、そういう関わり方が自分の好きにできます。若い子から信頼できる大人だと思ってもらえているなら、がんばらなくっちゃって思っています。そして同世代には、スパルタです!

昨年(2023年)のライブは最初から最後までスタンディング。しんどいですけど、楽しかったみたい。大人がしっかりしないと若い人がかわいそうだよ。そんな気持ちでいます。

みんなが踊っているのを見たかったっていうのもあります。一昨年(2022年)のデビュー40周年コンサートはまだコロナの最中だったから、声も出せなかった。去年はもっと自由に、音楽に身を任せてほしくて。お父さんとかお母さんになると、割とできないですよね、そういうこと。だから思い出してほしかった。

そんなアイディアは朝も浮かぶし、シャワーを浴びてる時とかにけっこう来ます、なぜか。

今日みたいに新しい場所を見たり、新しい体験をしたりとかして、家に帰ったら何かと何かがつながって、「これができる!」とひらめいたり。そういうふうに、ぴかりんってなるのが仕事をしていていちばん楽しい瞬間です。

今朝、訪ねたのは「築地本願寺カフェ Tsumugi」

健康じゃなく、元気になる「朝活」もいいんじゃない?って(今日子さん) 

築地の地名の由来ともなった歴史ある「築地本願寺」の境内にある和カフェ。8時〜10時30分まで、本堂や境内を眺めながらいただく築地本願寺カフェ Tsumugiオリジナルの人気メニュー「18品の朝ごはん」は毎朝、売り切れ必須。ネットでの予約がおすすめ。

築地本願寺カフェ Tumugiの公式HP
https://tsukijihongwanji.jp/enjoy/meal-stay/

小泉今日子さんのプロフィール

1966年、神奈川県生まれ。1982年に芸能界デビュー。2001年の「風花」で日本アカデミー賞優秀主演女優賞を、「陰陽師」で同賞優秀助演女優賞を受賞。俳優として映画や舞台に多数出演し歌手、執筆家としても活躍。2015年より株式会社明後日を立ち上げ、舞台・映像・音楽・出版など、ジャンルを問わず様々なエンターテイメント作品をプロデュース。ますます元気に楽しく余生を過ごしていくためのプロジェクト「東京VintAGE Girls」が始動!youtube.com/@tokyo-vintage-girls


取材・文=矢部万紀子 撮影=中西裕人 構成=長倉志乃(ハルメク365編集部)