50代ともなると、毎日のスキンケアだけでは追いつかない……。そんな実感が増えてきます。美容医療なら、しわはどのくらい解決できるのでしょうか。シリーズ3回目は「しわ改善」に関して、麻布ビューティクリニック院長の加藤聖子さんを中心に伺いました。

特集|美容医療に頼ってもいいかしら?

年齢とともに増えるシミ・しわ・たるみ。スキンケアやメイク以外で積極的に改善したい!そんな女性が増えています。そこで気になるのがカジュアルになりつつある美容医療。メニューは?失敗しないコツは?美容医療の基礎知識を医師に聞く全5回の特集です。

  1. 50代、初めての美容医療で失敗しないための基礎知識
  2. シミは美容医療がコスパよし!シミ取りの注意点は
  3. 初めての人必見!しわを美容医療で改善するには?←本記事はコレ!
  4. ほうれい線悩みにも!たるみを美容医療で解決するには
  5. 首ポツ、イボ、目のブツブツは保険適用で取れることも

改善すべきしわの種類は2種類ある!

改善すべきしわの種類は2種類ある!

目尻、額、眉間、ほうれい線…。年齢を重ねるにつれて、いろいろな部位にしわが刻まれていきます。シミと違って、コンシーラーなどで隠しきれないのが悩み。「思い切って、美容医療をやっちゃう?」という気になりますよね……! 今回この「美容医療特集」を取材しているハルメク世代の筆者も、美容医療でしわ取りをした一人です(「美容クリニックでシワ取り体験!プチ整形での変化とは」でその様子をお伝えしています)

美容クリニックでシワ取り

そもそも「しわ」といっても2種類あります。一つは、表情によって出来るしわ。「紙を何度も折りたたんでいると折りじわがつきますが、そのような状態と思ってください」と説明してくれたのは、麻布ビューティクリニック院長の加藤聖子さん。わかりやすいですね〜!

もう一つは、たるみによって出来るしわ。「ほうれい線や口元のマリオネットラインは、主に肌がたるむことによって生じます」。※次回「美容医療でたるみを消す方法」で詳しくご紹介します。

しわ改善にはしわの原因に合わせた施術が必要

しわ改善にはしわの原因に合わせた施術が必要

ボトックス注射

表情じわの場合は、みなさんも一度は聞いたことがあるであろう「ボトックス注射(一般名ではボツリヌストキシン)」が有力。注射することで筋肉の動きを弱めるため、表情筋の使い方のクセによって刻まれるしわを防ぐことができます。

ただし 「しわを予防する、しわのクセを和らげるという目的が大きいので、しわが定着してしまう前、できれば30代後半くらいから始めて、刻まれるしわを作らないようにしたいもの」(加藤さん)です。

とはいえ、今からボトックス注射を打つのは遅い、ということではありません。人生100年といわれる昨今。この先のしわ予防のためにも有効です。
 

HIFU(ハイフ)

HIFU(ハイフ)
HIFUの仕組み ※イメージ

すでに刻まれてしまったしわ、また、たるみによってできたしわには、フィラーとも呼ばれるヒアルロン酸を注入することが有効だそう。

あるいは、HIFU(ハイフ)という「切らないフェイスリフト」と呼ばれる最新リフトアップマシンで、皮膚の内部に高密度の超音波を当てて肌の土台から肌全体引き締めます。30分ほどの照射で治療後のダウンタイムも1時間程度、施術終了直後からのメイクアップも可能です。ボトックス注射やヒアルロン酸注入を組み合わせることで、頑固なしわも打開できます。

ダーマシャイン

ダーマシャイン

顔全体の気になる小じわ、ちりめんじわには「ダーマシャイン」というマシンによるアプローチもあります。「しわしわした感じを一掃できます。たくさんの細い針が付いたスタンプ状の注入ヘッドを使いヒアルロン酸を一気に、顔全体に注入します」(特集第2回に登場の松倉クリニック医師表参道・田路めぐみさん)

ベビーコラーゲン

あるいは、ベビーコラーゲンも選択肢の一つです。「医師の責任のもと使用されている薬剤です。ヒト型コラーゲンで作られているベビーコラーゲンは注入することで、肌の再生能力が高まり、土台から若返る力が強いと言われていて、目元の小じわを中心にさまざまなタイプのしわに対応します」(加藤さん)

以上は、レーザーや注射でできる手軽な施術です。

フェイスリフト

見た目年齢を20歳ほど若返らせたいという場合は、外科手術でしわを改善することもできます。「『フェイスリフト』を行うこともできますが、デメリットとしては全身麻酔して臨むので費用も時間もかかります。でも、その分しわのない美肌に仕上がりますね」(松倉クリニック表参道・田路さん)

50代のしわ改善は、ボトックス注射とヒアルロン酸注入、HIFUをフル活用!

50代のしわ改善は、ボトックス注射とヒアルロン酸注入、HIFUをフル活用!
麻布ビューティクリニックでのHIFUとヒアルロン酸でのリフトアップのコンビネーション治療。モニターのビフォー&アフター。スタンダードリフト+ヒアルロン酸(長期持続型)6本+ベビーコラーゲン0.5本で62万円

医師の加藤さんによると、50代女性なら、ボトックス注射に加えて、ヒアルロン酸注入やHIFUなど他の手段と組み合わせた施術を検討するのが妥当とのこと。

なぜなら、加齢により肌全体が土台から落ちてきているから。

「しわ改善だとボトックス注射が定番と思われていますが、先に説明したようにボトックス注射の目的はしわの予防。50代になるとすでに刻まれてしまったしわが混在します。そのため、そこにはヒアルロン酸を注入することで、顔全体の気になるしわが解消されるはず。さらに、HIFUを組み合わせると、いっそういいでしょう。

しわだけを見て、それだけを治そうとするドクターは避けた方がいいかも。そのしわがどういうものか、どうしたら自然にそのしわが目立たなくなるのかなどを提案してくれるクリニックを選ぶのがいいと思います」(加藤さん)。

つまり、年齢が上がると手がかかる、ってことです(ショック!)。だから、何でも早いうちに始めるのがいいんです。「鉄は熱いうちに打て」と、ことわざにもありますよね……。

「50代女性は、これだけやればいいという施術より、いくつか組み合わせた方が効果や持続力が高い。むしろ、組み合わせないと効果は期待できないかな、と思いますね」(加藤さん)

額・首・目じりのしわ…パーツ別しわ改善方法を解説!

額・首・目じりのしわ…パーツ別しわ改善方法を解説!

一番気になる「額のしわ」はどうする?

「患者さんのご要望でも多いのが、額のしわですね」と加藤さん。実は額のボトックス注射は見立てが難しいのだそう。昔よく見たのは、ボトックス注射で目元の表情がなくなっている女性。なんだか不機嫌そうでコワい顔だったのを覚えています……。加藤さんによると「フローズンフェイス」と呼ばれる失敗例だそう。

それ以来ボトックス注射=コワいと思っていましたが、問題は注入する量と場所。加藤さんは「どこにどう注入するかを見極めるのがポイント。カウンセリングで何度も表情を確認します。また、ボトックスなどの注射の量を減らして、代わりにHIFUで顔全体を引き締めておく、というのも自然派の方にはよいかもしれません」(加藤さん)

「眉間のしわ」には早めのケアが大切

更年期のせいか、イライラすることが多い筆者(苦笑)、眉間のしわは気になっているところです。「眉間のシワは刻まれてしまうと最も治しにくい場所で、ボトックス注射が効果を発揮する場所でもあります。刻まれないよう早めからケアするのは当然ですが、刻まれてしまってもボトックス注射を続けることで緩和される可能性はあります」(加藤さん)

初心者はとりあえず「目尻のしわ」から!

「美容医療が初めての方は、まずは試しに目尻のしわをボトックス注射で改善してみてはいかがでしょう?」と加藤さんは提案します。「他人の目から見ると、額のしわより効果がわかりやすく、どんな風に打ってもトラブルが少ないのでおすすめです。ボトックス注射はヒアルロン酸より施術時間も短いし、あっという間に若々しさが取り戻せると思います」

筆者も実際に目尻にボトックス注射をやってみると、本当にシワがなくなってびっくり!

「先週までしわがあったよね? 錯覚?」と思いました(笑)。痛みもチクッとする程度だし、内出血もありませんでした。

「ボトックス注射のメリットは、自分が気に入ったように仕上げられること。ダウンタイムもありません。また、そのうち効果が薄れてくるので安心です。効果は1〜2週間で出てくるので、2週間以上たったら再度クリニックに来院いただき、必要なら無料でメンテナンスをします」

注射したら終了〜。というのでは、ドクターと患者それぞれが思い描く「なりたい顔」に仕上がりません。施術後にチェックアップしてもらえるかどうか、クリニック選びの一つのポイントになりますね!

ボトックス注射のデメリットは、持続期間が長くて半年ほどという点。美容医療は一度やったから終わり、というものではなく継続していく必要があるので、自分のライフスタイルや経済状況とも相談しながらやりましょう。
 

「首のしわ」はHIFUが有効

「首のしわ」はHIFUが有効

顔もそうですが、首のしわも気になるお年頃。縦じわ、横じわを含め、鳥のとさかのようなしわをやっつけるには?

「肌表面を引き締めるマイクロボトックス注射(肌の浅い層に細かく注入)を顔全体に行います。あるいは、HIFUで顔を引き締めることで首のしわにも効果が出ます。もう一つは、フェイスラインに沿ってヒアルロン酸を注入していくこと。ただ、手っ取り早いのはHIFUですね」(加藤さん)

HIFUの効果持続も半年ほどですが、顔全体の引き締めができるので、ベースを底上げしておくという点ではおすすめ。ベースの治療=HIFUをして、ボトックス注射やヒアルロン酸注入を考えるといいと思います。

「たるみによるしわ」ほうれい線は…
もう一つの気になるしわ、例えばほうれい線やマリオネットラインは、ボトックス注射だけでは無理。ヒアルロン酸のようなフィラー(埋めるもの)を使ってしわそのものを目立たなくさせます。そもそも、しわができる原因がたるみなので、その点を緩和しないとキレイになりません。詳しくは、次回の「たるみ改善」で!
 

(参考)麻布ビューティクリニックの施術費

ボトックス(厚生労働省認可のアラガン社製ボトックスビス使用)

  • 額     3万3000円
  • 眉間    2万7500円
  • 眉間と額  4万4000円
  • 目尻(両側)3万3000円

すべて税込(初診料・再診料・1か月以内の追加修正・針代・麻酔代込み)、加藤医師指名の場合は追加料金あり。
※ボトックス注射は3〜4か月に1回

ヒアルロン酸(常時10種類以上あり、通常タイプと長期持続型を用意)

  • 0.5本 4万4000円(長期持続型 6万500円)
  • 1本  8万2500円(長期持続型 11万円)
  • 2本セット13万2000円(※2本以上使用する場合、1本あたりが6万。長期持続型は1本8万円で2本セットは 17万6000円)

すべて税込(初診料・再診料・針代・麻酔代込み)、加藤医師指名の場合は追加料金あり。
※ヒアルロン酸は1年に1回(ただし、2〜3本使うので高い)

HIFUウルトラフォーマーⅢ(点状に無数の熱作用を与えてたるみを解消するマシン)

  • 全顔(額から目まわり含む)12万1000円
  • 両頬+顎下 8万8000円
  • 目元(額から目まわり)3万3000円
  • 首元         3万3000円

すべて税込(初診料・再診料込み)

※HIFUは半年に1回程度。ダウンタイムはほぼ無し

※以上の施術料金は2021年6月現在のものです。

取材先:麻布ビューティクリニック院長 加藤聖子さん

取材先:麻布ビューティクリニック院長 加藤聖子さん

都内総合病院にて整形外科を中心として麻酔科、救命救急医療などを習得。その後都内大手美容外科に勤務しフェイスリフトや脂肪吸引、目・鼻形成術など数多くの手術を執刀。2008年麻布ビューティクリニック設立。アラガン認定指導医 / 日本抗加齢美容医療学会会員 

取材先:松倉クリニック表参道 田路めぐみさん

取材先:松倉クリニック表参道 田路めぐみさん

松倉クリニック表参道医師。日本形成外科学会専門医、日本抗加齢医学会専門医、日本頭蓋顎顔面外科学会会員、日本外科学会会員。虎の門病院外科レジデント修了後、東京大学形成外科医局に入局。帝京大学、東京大学、国立国際医療センターにて形成外科の研鑽を積み、焼津市立総合病院、国保旭中央病院にて形成外科科長を務める。その後国立がんセンター東病院頭頸科、せんぽ東京高輪病院(現JCHO東京高輪病院)形成外科を経て、2014年より松倉クリニックに勤務。