札幌中心部の再開発の原動力になっている新幹線の札幌延伸は、目標としていた2030年度末の開業が8日、事実上「先送り」になりました。開業は、数年単位で遅れる見通しです。

 8日午後2時、斉藤国交大臣を訪ねた、鉄道・運輸機構の藤田理事長。

札幌延伸工事の大幅な遅れなどを理由に「予定する2030年度末の開業は、極めて困難である」と報告しました。

新函館北斗〜札幌間は、ルートの8割をトンネルが占め、硬い岩盤に阻まれた「羊蹄トンネル」などで工事が難航。

最大4年の遅れが出ていることに加え、建設業界の“残業規制”で工事作業員の確保も難しくなっています。

また札幌オリンピックの招致断念で、2030年度開業の名目もなくなりました。

さらに、藤田理事長は、開業を延期せざるを得ない新たな事実を明らかにしました。

鉄道・運輸機構 藤田耕三 理事長
「羊蹄トンネルにおきまして、新たな岩塊の存在が疑われる事象が生じて、4月以降、掘削見合わせている工区があります」「昨日(7日)から追加のボーリング調査を始めていますが、こうしたことを含めて、先の見通しを得ることが難しい」

硬い岩塊で、およそ2年工事が止まった「羊蹄トンネル」でまた岩塊が見つかったのです。

開業は、一体いつまで延期されるのでしょうか。

鉄道・運輸機構 藤田耕三 理事長
「現時点において、具体的に次の開業時期の目標を示すのは技術的に困難であり、敢えて言えば“数年単位の遅れ”ということでご理解頂きたいと思っています」

 一方、新幹線を運行するJR北海道は8日の決算発表で、昨年度、グループ全体で前年より140億円多い、1477億円の営業収益をあげたと発表しました。

経常利益は、前年から69億円増えたものの、111億円の赤字。

国からの支援を加えたグループの最終損益は、33億円の黒字です。

インバウンドの回復や「ボールパーク」の開業で、運輸収入などが増えた一方、新幹線工事に伴う「パセオ」と「エスタ」の閉店で、不動産事業は減収・減益です。

収支の改善のきっかけに大きな期待を寄せていた新幹線の札幌延伸。

数年単位の開業延期にJRの幹部は、ショックを隠しきれません。

JR北海道 萩原国彦 常務
「これから国や運輸機構から発表になると、けさ(8日)に伺った。内容を確認したうえで発言したい」

国交省は、今後有識者と工事の進め方を協議し、新たな開業時期を検討します。