【大人の家庭科】#3

 日本の夏は高温多湿です。6月に衣替えをするように、伝統的な日本家屋では、屋内を夏仕様へ替える夏支度をしていました。紙の障子やふすまの建具を取り外し、すだれや夏障子(すだれをはめ込んだ戸)に替え、畳の上にゴザや網代などの敷物を敷き夏座敷へと替えます。

 これらは費用も手間もかかりますし、今は建具を替えなくてもエアコンのスイッチを入れれば簡単に涼しくなります。けれど、少しでもエアコンの消費を減らし、五感で涼しさを体感することは、心身の健康に良好に働きます。昔の人の知恵にならって、できることから始めてみてはいかがでしょうか。

 最も重要なのは部屋の「風通し」をよくすることです。昔の日本の家屋では部屋には家具は置かず、必要な道具を出して使って終わったらしまい、屋内は常に風が通るように基本的に空っぽの空間にしていました。そこで現代の家の中でも、風の通り道を点検し、風の流れを遮るものを取り除くことをお勧めします。

 風の通り道に背の高い家具や、無駄なモノを置かないように見直してみてください。本格的な夏が来る前に、こうした家具の配置点検や断捨離をしてモノを減らすのはよい習慣かもしれません。玄関ドアを少し開けたり、換気扇を回したりして、家の中の空気を循環させるようにしましょう。

 風の通り道ができたら、そこに風を感じられるものを置いてみるのもいいでしょう。揺れる薄いカーテン、葉が揺れるグリーンの鉢、風鈴などは、風が通っていることを教えてくれます。

 すだれは遮熱としてもすぐれものです。直射日光を遮るようにすだれを掛けると、室内温度の上昇をゆるやかにしてくれます。洋室でもカーテンレールを使えば簡単にすだれを掛けることができます。

 いぐさ座布団や網代の敷物、籐製品などは、触感から涼しさを感じることができます。肌が触れてひんやりするのは気持ちいいですね。視覚的な涼では、透けるものが有効です。レースのカーテンやすだれ、竹で編んだかご、ガラス製品などは涼しげですね。

 少しでも暑さをしのげるよう、無理なくできることをしてみてください。けれど熱中症が心配される昨今では、やはり夏のエアコン使用は必須です。エアコンからきれいな冷風が流れるよう、エアコンクリーニングも夏支度としてお忘れなく。

(山村美保里/愛国学園短期大学非常勤講師)