【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】

 英王室のキャサリン妃は今年3月、がんであることを公表。ビデオメッセージでは、「ジョージとシャーロットとルイに適切な方法ですべてを説明し、私は大丈夫だと安心させることに時間がかかりました」と3人の子供に自らのがんをきちんと告知したことを語っています。子供をもつ親ががんになったとき、子供にどう伝えるか。

 日本では、毎年100万人ほどの新規がん患者がいて、そのうち3人に1人が64歳以下。18歳以下の子供がいてがんと診断される人は年間5万6000人と推計されています。

 たとえば女優の古村比呂さんに子宮頚がんが見つかったとき、3人の子供は20〜15歳。これくらいなら、家族のことも世間のことも理解できる年齢ですから、丁寧に説明することが大切でしょう。

 伝え方には、「3つのC」が重要といわれます。1つはがんの英単語であるCancerで、病気であることを正確に伝え、子供の想像や妄想で過度な不安を感じないようにすること。2つ目はCatchy(伝染)で、子供が親のそばにいてもうつらないことを伝えます。3つ目はCaused(原因)で、子供のせいでも親自身のせいでもなく、だれのせいでもないということです。

 この3つの視点で子供の年齢に合わせて分かりやすい言葉で説明するのがコツです。膀胱がんを患った私の経験でも、子供を含めて家族や仕事の関係者には、がんのことを伝える方がプラスになります。特に患者本人には、かなり気持ちが楽です。

「子供につらいことを伝えるのはどうか」とためらいの気持ちもあるかもしれませんが、重要な情報を提供されない子供は疎外感を覚えることが少なくありません。ある女性は、自分のがんを小学生の子供に隠していたことが発覚したとき、子供は「僕だけ仲間外れか……」と怒り、疎外感を強めたそうです。

 私はまた、小学校や中学校でがん教育を行ってきた経験からも、中学生はもちろん、小学生でもがんのことを十分理解できると思います。その伝え方は、おとぎ話的なたとえではなく、ストレートにそのまま説明するのがベターでしょう。

 子供も理解すれば、家族の絆が深まり、前向きに闘病生活を送ることができます。職場も同様で隠すことなく病状を説明することが大切です。そうすれば、職場の理解も得られ、仕事と治療の両立がしやすくなります。重要な情報ほど共有するのがプラスです。

(中川恵一/東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授)