【日本版「足病医」が足のトラブル解決】#20

 日本人の10人に1人が悩んでいるとされるのが「巻き爪」です。爪の両側または片側が内側に巻いた状態で、ほとんどが足の親指に生じます。

 本来、爪は内側に丸まりやすい性質で、歩いているときや立っているときに地面から圧力がかかって丸まるのを防いでいます。不適切な靴の着用で踏み返し動作が行えず、足指が地面にしっかりと接地しない「浮き指」で歩くと、正常な圧がかからず爪が変形していくのです。

 中高年や高齢者の病気と思われやすいのですが、年齢に関係なく誰でも発症するリスクがあります。とりわけ中学校や高校の規定靴を履いている場合には注意が必要です。

 先日、ある高校生の男性が「親指が歩けないほど痛く、パンパンに腫れている」と足の疾患センターを受診されました。問診で話を聞くと、校則でローファー靴の着用が指定され一日中履き続けなければならないと言います。

 ローファーは先が細い上に、紐で足の甲をしっかりと固定できない。足が痛くならないよう本来の足の大きさよりもサイズが大きいものを履いていたため、中で足が滑り、しっかりと踏み返し動作が行えず、親指は常に浮き指の状態。巻き爪だけでなく爪が皮膚に食い込む「陥入爪」を起こしていたのです。

 炎症を抑えるために、まずは抗生物質を服用し、腫れが治まるまで安静にする必要があります。足裏に正常に圧力がかかるようインソールを作製し、運動靴に入れて登校するよう指導を行いました。ほかにも、皮膚に爪が埋もれないようテーピングをしたり、「スクエアカット」と呼ばれる巻き爪になりにくい爪の切り方を指導したことで、その後、巻き爪になることはなくなったと言います。

 サラリーマンやOLの場合も同様です。先が細く親指が圧迫される靴や、サイズが合っていないことで歩くとパカパカと足が浮いてしまうような靴を履いていると、巻き爪になりやすい。「爪くらいで病院に行くなんて……」と受診をためらう方もいますが、インソールの着用やテーピング治療だけで症状は改善できるので、放置せず治療を受けた方がいいでしょう。

(田中里佳/順天堂医院足の疾患センター長)