カブスの今永昇太投手が熱い。メジャーデビュー6試合で5勝0敗。日本人投手では2002年ドジャース・石井一久、2014年ヤンキース・田中将大の6連勝に次ぐ記録だ。ただ注目すべきは、防御率。5連勝目時点で石井が3・03、田中が2・57だが、今永は0・78だ。群を抜いている。

 メジャーで、デビュー後先発最初の6試合時での防御率のベストは、弱冠20歳のメキシコ出身の怪童と言われた左腕が記録している。1981年、ドジャースのフェルナンド・バレンズエラが残した0・33。彼は前年にリリーフで10試合に登板し2勝しているのだが、その内容は17回2/3を失点2、自責点0で防御率0・00と、これまた驚異的だ。

 記録を作った81年のスタートもすさまじい。実は開幕投手にはジェリー・ロイスが予定されていたのだが、ケガで急きょ、バレンズエラが代役に抜てきされた。そして、アストロズ相手に完封勝ちしてしまった。その後も抑える試合を重ね、最初の8試合に5完封含む7完投で8勝。途中降板も一度あったのだが、9回まで投げて延長戦に入っての交代だった。つまり、救援投手に託したのは、延長戦の1イニングだけだった。

 21世紀に入り、先発投手が100球前後で交代するのが当たり前となった。石井、田中、今永と日本人3投手はいずれも、完投はしていない。それでも、3投手ともリリーフ陣の救援失敗はなく、5勝時点で白星をフイにしたことは一度もない。先発した試合で、リリーフ陣が許した失点を見ると石井5失点、田中4失点、今永に至っては降雨中断で4回で降板した4月7日ドジャース戦での1点しかない。

 今永の後を受けるカブスのリリーフ陣はかなり頼もしい。4月13日マリナーズ戦は2―1の6回1死二、三塁で降板した。2番手・ライターが打たれれば敗戦投手の可能性もあったが、三直、左飛で切り抜けた。5月1日メッツ戦では、4番手・ネリスが1点リードの9回に1死二、三塁のピンチを背負った。打たれた左飛は犠飛になると思いきや、左―三―捕の好リレーでゲームセット。今永は無事に5勝目を手にした。

 こうなると気の毒なのは、ドジャースの山本だ。3月30日カージナルス戦、4月12日パドレス戦はリードした展開で降板したが、リリーフした投手が追いつかれ、ともに白星が消えた。山本降板試合のドジャース救援陣は、なんと28失点。「0」に抑えたのは、7試合で5月1日ダイヤモンドバックス戦が初めてだった。 

 昨年15勝しながら1勝差で最多勝を逃したヤンキースのゲリット・コールも不運だった。勝利投手の権利がありながら救援陣が打たれて逃した白星が4試合、さらに無失点ながら勝てなかった試合が4度もあった。先発投手とリリーフ陣の間には相性があるだろう。カブスは3日のブルワーズ戦では3番手・アルゾレイが打たれて、逆転負け。リリーフ陣の敗戦は今季33試合目で8戦目となった。今永の時に、負けていないだけだ。 

 大谷を除くと投手史上最高額となる12年約461億円の超大型契約を結んだ山本と、4年総額約77億4000万円の今永。今のところ、リリーフとの相性も良く、日本人ナンバー1と評されるのは、今永と言える。山本もここ2試合連勝で波に乗ってきた。今後は2投手のピッチングとともに、カブス、ドジャース両軍のリリーフ陣にも注目だ。(蛭間豊章・ベースボールアナリスト)