北海道新幹線の新函館北斗―札幌間について、建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、2030年度末としていた開業時期が遅れると表明した。



 トンネルの難工事などで工期延長が避けられないためだ。



 札幌延伸の行方は、新幹線を運営するJR北海道の経営再建や並行在来線の存廃、沿線自治体のまちづくりに直結する。



 工事の遅れは以前から指摘されていた。判断を先送りしてきた機構と国土交通省の責任は重い。



 新たな開業時期は、国交省が開く有識者会議での議論などを経て決めるという。できるだけ早く示すとともに、地域社会や道内経済への影響を最小限にとどめるよう配慮すべきだ。



 延伸区間は8割をトンネルが占める。現場で巨大な岩の塊が見つかったり、軟弱地盤への追加工事が必要になったりして、工事が予定より数年単位で遅れている。



 同区間の工事現場では死亡事故がこれまで6件発生している。



 掘削でヒ素などを含む要対策土が発生し、一部で受け入れ地の選定が難航したこともあった。



 機構が現場の安全と環境への配慮を最優先に工事を進めることは当然である。



 JRは連結の純損益を黒字化して自立経営を実現する長期経営ビジョンを19年春に策定した。



 その柱は札幌延伸をてこにした運輸収入の増加や、札幌駅南口の再開発による収益改善だが、前提となる延伸の遅れで想定通りの実現は難しくなる。



 巨額赤字の解消が遠のき、国や地元自治体の負担を前提に存続を目指す赤字8区間(黄色線区)を巡る議論にも関係しよう。



 JRは長期ビジョンの見直しを急ぎ、関係自治体などへの説明に努める必要がある。



 札幌駅周辺では再開発に伴ってバス発着所が分散している。



 札幌延伸の延期でJRの再開発ビルに設けられる新たなバスターミナルの完成もずれ込めば、不便な状態は一層長期化する。



 JRは国や道、札幌市などと緊密に連携し、整備を着実に進めてもらいたい。



 札幌以外の新駅周辺の開発も再検討を迫られる可能性がある。



 見込んだ観光客の増加や企業進出が後ずれするだけでなく、開発に向けた既存施設撤去などの計画も再考を余儀なくされかねない。自治体の負担増も懸念される。



 国や道には沿線自治体に対する支援や目配りが求められる。