●男性用、館にも2枚

 地震で自宅が損壊した七尾市赤浦町の会社員橋本美智代さん(60)が珍しい男性用の婚礼道具「花婿のれん」を花嫁のれん館に寄贈した。橋本さんの夫が37年前の婿入り時に持参した1枚で、同館にも2枚しか保管されておらず、赤色が多い花嫁のれんとは異なり青を基調としている。館の担当者は花嫁・花婿のれんが震災ごみと一緒に処分されるケースもあるとみて、保管や寄贈を呼び掛けている。

 花嫁のれんは能登、加賀、越中に幕末から伝わる婚礼の風習で、花嫁が持参したのれんを嫁ぎ先の家の仏間入り口に掛けてくぐる。

 橋本さんは自宅が中規模半壊の判定を受け、公費解体を決めた。片付けをしていたところ、婿入り道具のたんすに入っていた花婿のれんを見つけたという。志賀町のみなし仮設住宅で暮らしており、保管場所もなかったことから、同館に連絡した。

 寄贈された花婿のれんは縦165センチ、横175センチで、高砂やマツを題材に描かれている。橋本さんは「大切に飾ってくれるとうれしい」と話した。

 花嫁のれん館によると、地震後、被災家屋から託されたのれんは2枚目。同館ガイドの瀬川眞知子さん(75)は公費解体が本格化していく中でのれんが処分される可能性があるとし、「のれんには親が子どもを思う気持ちがこもっている。捨てないでほしい」と訴えている。