越中八尾曳山(ひきやま)保存会は、5月の越中八尾曳山祭の曳山に施されている彫刻の下絵図と正絵図にスポットを当てた冊子を作った。中国の故事や日本の昔話を題材に、井波彫刻師が技術の粋を凝らした過程を、絵図の写真とともに伝える。栃山仁一会長(65)は「彫刻師の高度な技術と、彫刻の題材になった一つ一つの物語を知ってほしい」と話している。

 富山市八尾町中心部では毎年5月3日、同市八尾町下新町の八尾八幡社の春季祭礼として越中八尾曳山祭が行われ、中心部の6町が木彫や彫金の豪華な装飾が施された曳山を練り回す。6基はいずれも県有形民俗文化財に指定されている。越中八尾曳山保存会はこれまで、曳山の部材や修繕など6分野の冊子を作成し、今回は彫刻の下絵に着目した。

 江戸時代以降、彫刻師は複数の図案を描き、曳山を受け継ぐ各町それぞれの住民が自町の曳山に施す絵を選んだとされる。今回収録した絵図は南砺市本町(井波)の番匠屋16代目の田村与八郎さん宅などで保管されていた。撮影データは記録として活用する。

 冊子には実際の彫刻の写真と、基になった正絵図とが並び対比できる。中国・三国時代の英雄、関羽が書物を読んでいる様子を表す上新町の大彫(おおぼり)や、東町の高欄(こうらん)に取り付けられた猿、24人の親孝行な人物を取り上げた中国の書物「二十四孝」を題材にした今町の八枚彫(はちまいぼり)、金龍や古代中国の王などが彫られた諏訪町の見越(けんけし)などを、解説文を添えて紹介している。

 A4判44ページで、文化庁の補助を受けて300部作った。住民ら曳山関係者に配布したほか、八尾曳山展示館(上新町)などに置いている。
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