藤井聡太棋聖に山崎隆之八段が挑戦するヒューリック杯第95期棋聖戦五番勝負。山崎は久しぶりのタイトル戦登場で、藤井と番勝負を戦うのは初となる。

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今期の棋聖戦で山崎は二次予選からの勝ち上がり。決勝トーナメントに入ってからは森内俊之九段、渡辺明九段、永瀬拓矢九段と実績十分の強豪を破り、初の挑戦者決定戦に進出。互いに棋聖初挑戦を懸けた佐藤天彦九段との挑戦者決定戦では苦戦を強いられるが、持ち前の逆転術で粘り勝ちを収めた。タイトル戦登場は2009年の第57期王座戦五番勝負(羽生善治王座に0勝3敗で敗れた)以来2回目で、実に15年ぶりだ。これだけ間隔が開くのは歴代2位の記録となる。
 
山崎はNHK杯将棋トーナメントの2回優勝をはじめ、棋戦優勝8回を誇る強豪であるが、不思議とタイトル戦には縁が遠く、A級も1期のみである。今回は初タイトル獲得が懸かる。

対する藤井は初タイトルが2020年の第91期棋聖戦で、それ以降防衛を重ねてきた。今回の棋聖戦で藤井には5連覇、そして永世棋聖の資格が懸かっている。もうそんなに年月が流れたかという印象だ。初の永世称号で、達成すれば中原誠十六世名人の持つ最年少永世資格獲得の記録も更新することになる。相変わらずの高勝率で防衛に向けて死角はない。今年度も次々とタイトル獲得数を積み重ねていくことだろう。

永世棋聖が懸かる藤井聡太棋聖
永世棋聖が懸かる藤井聡太棋聖

⒞囲碁・将棋チャンネル

強豪同士だが、過去の対戦成績は1勝1敗と意外なほどに少ない。順位戦でも入れ違いになったため対戦がなかった。初手合は2018年の王位戦予選で山崎が貫録を見せたが、2021年の2度目の対戦は竜王戦決勝トーナメントで藤井が制しており、藤井はそのまま勝ち続けて竜王を奪取した。ただ、最後の対戦から3年も開いているため、あまり参考にはならないだろう。
 
戦型は山崎が先手なら相掛かり系、藤井が先手なら角換わり系の将棋になる可能性が高いと思うが、山崎は非常に独創的な棋風。相居飛車で特に多いAI研究を基にした激しい将棋ではなく、早々に定跡形を外れてねじり合いの力勝負になるだろう。悪形も苦にしない山崎は意表の戦型を出してくる可能性もあり、正統派居飛車党の藤井がどのような対応を見せるか注目だ。

五番勝負は6月6日(木)に千葉県木更津市で開幕する。43歳の山崎は「最後の大舞台」と語るように、このシリーズに将棋人生のすべてを懸けてくることだろう。今の藤井を番勝負で倒すのは至難の業ではあるが、白熱したシリーズになることを期待したい。

文=渡部壮大

放送情報【スカパー!】

第49期 棋王戦コナミグループ杯 五番勝負 第4局 藤井聡太棋王 vs 伊藤 匠七段
放送日時:5月31日(金)22:00〜
放送チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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