白い砂浜と美しいサンゴ礁が広がり、豊かな自然環境に恵まれた恩納村。2018年に「サンゴの村宣言」をし、2019年に「SDGs未来都市」に選定され、持続可能な観光エコリゾート地を目指している。20 年以上にもわたり行われてきた、サンゴを中心とした恩納村の取り組みを紹介しよう。

掲載:2024年4・5月号

沖縄県恩納村の真栄田岬。「青の洞窟」があるところとして有名
沖縄県恩納村(おんなそん)
沖縄本島のほぼ中央部、西海岸側に位置し、人口は約1万人。海岸沿いには大規模なリゾートホテルが並び、年間約300万人もの観光客が訪れる。サトウキビをはじめとした花卉や熱帯果樹などの農業、モズクやウミブドウなどの養殖漁業が盛ん。写真は、「青の洞窟」がある真栄田岬(まえだみさき)。那覇市街から沖縄自動車道を利用して車で約1時間。

サンゴを保全することが村のブランディングに

 どこまでも青く続く空に白い砂浜、透明度の高い海。豊かな自然環境を活用して観光リゾート地として成長してきた恩納村。しかし、環境への負荷は次第に大きくなっていった。恩納村だけでなく、沖縄県全体として2000年ごろからサンゴの減少が大きな問題となっていた。

 サンゴ減少の主な原因は、高い海水温による白化現象、オニヒトデの大量発生、赤土の流出などだ。以前から、村でモズクやウミブドウの養殖を行っていた漁師たちは、サンゴの白化現象が大規模になった際に生産量が落ちたことに気づき、恩納村漁業協同組合がサンゴの植え付けなどを行っていた。

沖縄県恩納村の海のなか。「サンゴの村宣言」をした恩納村はサンゴの植え付けをしている
サンゴの減少は、生態系にも大きな影響を与える。サンゴの苗を水槽で育成し、海で植え付けをしている。ゆるやかに回復し、植え付けたサンゴが産卵したという調査結果もある。

白化現象を起こしたサンゴ礁
白化現象を起こしたサンゴ礁は、やがて栄養失調で死んでしまう。世界のサンゴの約60%が脅威にさらされているという。

「こうした活動を受け、2018年に『サンゴの村宣言』を行い、海だけでなく、畑や山なども含め、村全体でサンゴの保全に取り組むことにしました」と、企画課の饒波武周(のはたけちか)さんは話す。

 具体的には、以前から行っていたオニヒトデの駆除やサンゴの養殖・植え付けなどサンゴ礁保全再生活動、生態系を調査するリーフチェック、遊休地で花を育てて養蜂を行い、ハチミツを販売して収益を得る「ハニー&コーラルプロジェクト」といった赤土流出防止活動などだ。

また、「サンゴの村フェスタ」を開催して、展示やワークショップなどでサンゴを知る機会を設けたり、3月5日の「サンゴの日」には「恩納村Save The Coralプロジェクト」でビーチクリーンやサンゴ苗の植え付けなどを行ったりしている。
 
2018年7月に「サンゴの村宣言」をした沖縄県恩納村
2018年7月に、恩納村を「サンゴの村」とすることを宣言。行政・村民・事業者が一体となり、自然環境にやさしい地域づくりへと進むきっかけとなった。

沖縄県恩納村の「恩納村Save The Coralプロジェクト」。ビーチクリーンなどを行う
「恩納村Save The Coralプロジェクト」には、約300人ものボランティアが参加。養殖したサンゴ苗350本を植え付けるほか、ビーチクリーン活動などを行う。

沖縄県恩納村で行われている砂浜をきれいに清掃するビーチクリーン活動
砂浜をきれいに清掃するビーチクリーン活動。3月5日「サンゴの日」以外も、定期的に行っている。

沖縄県恩納村で行われている陸域の保全活動の一環「ハニー&コーラルプロジェクト」
陸域の保全活動の一環となる「ハニー&コーラルプロジェクト」。ミツバチは、さまざまな花に授粉して植物多様性をもたらすことから、土壌の吸水性が高まり赤土の流出を抑えることができる。またハチミツの販売は農家の副収入源となる。

 2019年には、「SDGs未来都市」に選定され、「環境」「経済」「社会」といった3つの側面をより意識するようになる。

 環境面では、人口約1万人の村に年間約300万人もの観光客が訪れることでオーバーツーリズムが問題となっていたことから、サステナブルツーリズムに取り組む。自治体単位としては世界初となる「Green Fins(グリーンフィンズ)」を導入した。これは、「サンゴの上に立たない」「魚にエサをあげない」といった環境にやさしいダイビングやシュノーケリングのガイドラインで、国連環境計画が定めたもの。

「経済面では、特産品やお土産などに村が太鼓判を押す『恩納村版ローカル認証』の導入を考えています。物品だけでなく、ダイビングなどのサービス商品も加える予定です」

 社会面では、子どもたちへのSDGs教育に取り組む。村内唯一の中学校「うんな中学校」では、産官学が協力して村の課題解決を考える授業を実施。特産品を使った商品開発では、開発からPRまで中学生が主体となって行い、実際に産直市場などで販売もされた。ほかにも、大手メーカーと協力した商品開発や福祉と防災を連携したアプリ開発なども行っている。

 企画課の宇江城悟(うえしろさとる)さんはこう話す。

「恩納村にとってサンゴ礁は、重要な資源であり、大切な宝です。サンゴを守ることが自然にやさしい環境となり、さらに観光産業の高付加価値化につながっています。今後は、世界水準でのエコリゾート地を目指していきたいです」

沖縄県恩納村の「うんな中学校」で行われた地域課題プロジェクト
「うんな中学校」で行われた、地域課題解決プロジェクト「UNNA魂」の様子。社会経験と成功体験を感じることができる。

沖縄県恩納村の「うんな中学校」で行われた地域課題プロジェクトで誕生した商品
プロジェクトで実際に販売された商品。右から、パッションフルーツのお酢ドリンク、「アテモヤ」のお菓子、環境にやさしい日焼け止め。

恩納村のSDGsここがすごい

「サンゴの村宣言」を行い、村全体でサンゴ礁の保全に取り組む恩納村。サンゴだけでなく、環境にも人にもやさしい持続可能な村を目指している。

●「サンゴの村宣言」を行い、世界一サンゴと人にやさしい村づくりを目指している
●自治体単位としては世界初となる「Green Fins」を導入し、環境にやさしいダイビングやシュノーケリングを行う
●「恩納村版ローカル認証」で、特産品を村として認定
●うんな中学校で産官学協力のもと、課題解決の授業を行っている


「今まで取り組んできたことがSDGsそのものなので、これからも続けていきたいです」(企画課 饒波武周さん〈右〉、宇江城 悟さん)

恩納村のここがオススメ!

沖縄県恩納村の人気スポット「おんなの駅 なかゆくい市場」
人気スポット「おんなの駅 なかゆくい市場」は、恩納村発のオリジナル商品をはじめ、新鮮野菜や果物などが数多く並ぶ。

沖縄県恩納村の人気観光地の1つ「万座毛」の絶景
沖縄の人気観光地の1つ「万座毛」の絶景。隆起サンゴ礁が徐々に削られてできた自然の形状だ(入場料100円)。

恩納村移住情報
若い世代の定住化を目指し、子育て支援に力を入れる

 リゾート地として発展している恩納村は、それらの施設での雇用により人口が増加。今後は、リゾート勤務以外の若い世代の定住化を目指している。高校卒業までの入院・通院費の一部助成のほか、子育て支援サービスの充実などを実施。空き家は物件数が少なく、時間をかけてじっくりと探す必要がある。

問い合わせ:恩納村企画課定住促進係 ☎︎098-966-1201

2020年にオープンした沖縄県恩納村の交流施設「万座毛周辺活性化施設」


「美しい南国の自然とマリンアクティビティが堪能できます」(定住促進係 當山彰一さん)

文/水野昌美 写真提供/沖縄県恩納村