『Fate/Grand Order』(以下、FGO)のゴールデンウィークといえば、コラボレーションイベントの実施がすっかりお馴染みとなりました。

今年は1月に『Fate/Samurai Remnant』とのコラボイベントが行われたため、「GW期間のコラボはないのでは?」とも噂されていましたが、『魔法使いの夜』とのコラボイベント「魔法使いの夜アフターナイト/隈乃温泉殺人事件 〜駒鳥は見た! 魔法使いは二度死ぬ〜」が無事始まります。

TYPE-MOONが手がけたADV『魔法使いの夜』は、2022年12月にコンシューマー化を果たしたため、プレイ済みの人もいることでしょう。ですが『FGO』は2900万DL記念が実施されており、3000万DL記念も近いと言われているほど多くのユーザーを抱えています。

そのため、『魔法使いの夜』を遊んだことがない『FGO』ユーザーも相当数いるはず。今回のコラボイベントは、少なくとも記事執筆時点では『魔法使いの夜』を知らなくとも問題なく進んでいますが、知っていればより楽しめるのも事実です。

そこで今回は、『まほよ』の通称でも親しまれている『魔法使いの夜』の概要や主要な人物たちを紹介しますので、コラボイベントを楽しむ一助として役立てていただければと思います。

また、コラボイベントで興味を持った人に向け、『魔法使いの夜』をできるだけお得に購入できる方法もお伝えします。

■TYPE-MOON作品の中でも、ちょっと特別な『魔法使いの夜』
『魔法使いの夜』は、TYPE-MOONの中心人物のひとりであり、『FGO』も連なる『Fate』シリーズおよびその原点の生みの親でもある奈須きのこ氏が手がけた、伝奇ビジュアルノベルです。

ゲームとしては、2012年にPC版が発売され、そこから10年の月日を経てスイッチ/PS4版が登場。演出面やボイスの追加などが行われたとはいえ、物語自体は10年前の作品ですが、この移植版だけで全世界累計出荷本数が20万本を突破。他のジャンルに比べると本数が伸びにくいADVとしては、十分以上のヒット作となりました。

本作のPC版が発売された時点で、同人向けでは『月姫』が、また商業作品としては『Fate/stay night』や『Fate/hollow ataraxia』などのADV作品が世に出ており、TYPE-MOONのゲームとしては比較的後発の作品です。

ですが、その原点はかなり古く、奈須氏が1996年頃に書き上げた同名の小説が元となっています。ただし、この小説版が当時公開されることはなく、後にこやまひろかず氏が原画を手がける作品として選ばれたのが『魔法使いの夜』だったのです。

TYPE-MOONが広く知られる最初のきっかけとなったのが、コミックマーケットで2000年に頒布された『月姫』です。その4年ほど前に完成した小説として書き上げられた『魔法使いの夜』は、16年の月日を経てPCゲームとなり、そこからさらに10年かけてスイッチとPS4に登場しました。

TYPE-MOONのゲームとしては比較的新しく、しかし原点は最古参といっても過言ではない『魔法使いの夜』。そんな作品とのコラボとなれば、注目が集まるのも無理はありません。




■『魔法使いの夜』ってどんなゲームなの?
未プレイの人に向け、『魔法使いの夜』がどういうゲームなのか、合わせて紹介します。なお、今後プレイする機会があるかもしれないので、ストーリーに関する重要なネタバレなどは伏せておきます。

作品としても長い歴史のある『魔法使いの夜』ですが、作中の時代も古く、舞台となるのは1980年代後半の日本。昭和が終わるまでまだ猶予がある、黄昏時にも似た時代を舞台に、見習い魔法使いの「蒼崎青子」、現代に潜む魔女「久遠寺有珠」、世情に疎い田舎少年「静希草十郎」の3人が出会うことで、本作の物語が動き出します。

スタンスや在り方に違いはあれど、それぞれ神秘の世界に属する青子と有珠は、とある事情から草十郎に秘密を知られ、紆余曲折を経た後に打開策として3人での同居が始まりました。

青子たちが通う高校の生徒である槻司鳶丸や久万梨金鹿などと関わりを持ちながら、それぞれの距離感が緩やかに変化していく中、新たな脅威が彼女たちを襲う……といった具合に、魔術世界の非日常と、年相応の日常生活が交錯する、TYPE-MOON流のボーイ・ミーツ・ガールが『魔法使いの夜』で描かれました。

奈須氏が手がけているので、その物語が魅力に満ちていることは言うまでもありません。ですが、本作の特徴はストーリーだけに限らず、ADVとしても個性的な作品でした。まず、本作はADVですが、本編内では分岐や選択肢がありません。

完成された物語を読むことが本作をプレイする全てとも言えますが、本作が小説ではなく「ゲーム」という媒体である意味は十分あります。当時の一般的なADVとは一線を画するほど豊かな演出と表現が、本作に込められていました。

その描写力は本作の随所に緩急良く盛り込まれていますが、特に語られるのが遊園地でのバトル。カット割りやスライドによる動き、鮮やかエフェクトなどを交え、静止画をベースとしながらも見事に躍動感を描き切ります。それは、ADVが持つ可能性を切り開く挑戦とも言える躍進でした。

頻繁に見かける部分では、立ち絵の組み合わせによる妙が代表的な例です。当時は、等距離で立ち絵を横に並べるだけのADVが多かった中、距離や対峙によって立ち絵の位置を調整し、キャラクター同士の状況や関係性を視覚化しました。この演出は、「魔法使いの夜アフターナイト」にも盛り込まれているので、プレイ中のマスターなら幾度も目にしていることと思います。

魔法使いと魔女、そして平凡な男子生徒──だけではありませんが、本記事の紹介では留めておき──が出会ったことで、日常に神秘が触れるひとときを描いた『魔法使いの夜』。2022年に登場したコンシューマー版と、その翌年にリリースされたSTEAM版では、当時なかったボイスも収録されているので、未経験の人はもちろん、PC版経験者も改めて遊ぶ価値のある1作です。




■いつでも全力疾走な、見習い魔法使い「蒼崎青子」
『魔法使いの夜』について様々な角度から迫りましたが、続いてはコラボイベントにも登場している主要人物を紹介します。ですが、多少踏み込むだけでネタバレに踏み込んでしまう部分も多いため、物語に関する面などの深掘りは避け、TYPE-MOON作品全般との接点などを含めて取り上げます。

蒼崎青子は、まだ駆け出しではあるものの、TYPE-MOON世界に5人しかいないと言われている「魔法使い」のひとり。中学時代までは魔術の世界と無縁でしたが、祖父の後を継ぐという形で、魔法使いという道を歩き始めます。

魔術世界の頂点とも言える魔法使いでありながら、魔術師としての腕はまだ未熟(『魔法使いの夜』時点)。ただし、物を壊すことに関しては非常に秀でており、魔力の“燃費”にも長けています。

快活で前向き、エネルギッシュな彼女は、姉御肌で面倒見のいい一面も持ち合わせています。大雑把でいい加減な面もあるものの、諦めることが嫌いで、常に全力投球な少女です。

成長したのちは、『月姫』にて主人公の遠野志貴と出会い、魔眼を持て余していた彼を助け、広い意味で人生に立ち向かう支えのひとつとなりました。

また、格闘ゲーム『MELTY BLOOD』に参戦してその破壊魔ぶりを披露したり、『Fate/EXTRA』にゲスト的な立ち位置で登場したりと、いくつかの作品でその活躍を見ることができます。

■魔術師と少女の側面を併せ持つ「久遠寺有珠」
深窓の令嬢然としている「久遠寺有珠」は、生粋の魔女であり、使い魔の使役を得意とする魔術師です。ただし時計塔には属しておらず、魔術協会とは一定の距離を保っています。

魔術師としては、経験・実力ともに有珠の方が上で、『魔法使いの夜』では青子に魔術を手ほどきする姿も描かれています。とはいえ、師匠と弟子のような上下関係ではなく、一言でまとめるなら有珠と青子は友人の関係に当てはまります。ただし、本気の殺し合いをしたこともある模様。

口数が少なく愛想もなく、言動にも容赦がありません。魔術師としての立場や、孤独を好む性格なので、クールで冷静な人物と見られがちですが、表には見せないだけで感情は豊か。また、浪漫主義な一面も持ち合わせています。

ただし、戦うと決めれば一切の容赦はなく、攻撃も苛烈の一言。青子のように直接的な攻撃は行いませんが、使い魔である「童話の怪物(プロイキッシャー)」を使役し、敵対する相手を様々な手段で追い詰めます。

使役には条件を持つものもあり、常にその全てを使いこなせるわけではありませんが、条件を踏まえた上で適切に運用する手腕もまた、有珠の卓越した実力のひとつ。彼女が使いこなすプロイキッシャーの一部は、『FGO』でも見ることができます。

魔術師として桁外れとも言える存在ですが、他のTYPE-MOON作品への出張はほとんどありません。そのため、今回の『FGO』コラボは非常に貴重な機会です。しっかりと彼女の出番を堪能し、また余力があれば聖晶石召喚にもチャレンジしましょう。

■世間知らずな田舎少年「静希草十郎」
善良で優しくて純朴。田舎育ちの純粋培養な少年が、「静希草十郎」という人物です。育った環境ゆえにかなりの世間知らずで、青子や有珠を驚かせることもしばしばあります。

善人なのは間違いありませんが、複雑な人間関係に慣れていないためか、対人関係は不得手。といっても、苦手意識や忌避感はなく、単に経験が足りていないだけと思われます。

都会に不慣れで、その世間知らずさから魔術もすんなり受け入れる、驚異的な自然体を見せる草十郎。自己主張は控えめながら基本的な生活能力が高く、日常では青子や有珠に振り回されがちです。

しかし、草十郎は自我が薄いわけではなく、ここぞという場面の肝の座り方は、並みの一般人からかけ離れています。意志が強く、そして身体能力の優秀さも相まって、なかなか侮れない人物です。

この草十郎も少なからずネタバレを含む部分があるため、その人となりや意外な一面を知るには、やはり『魔法使いの夜』をプレイするのが最もお勧めです。




■『魔法使いの夜』を、少しでもお得に購入するには?
このほかにも、10年後の姿をコラボイベントで披露した「槻司鳶丸」や、青子の姉で様々なTYPE-MOON作品に顔を出す「蒼崎橙子」なども、『魔法使いの夜』に登場します。コラボイベントの理解を深めるだけでなく、TYPE-MOON世界をより知るためにも、『魔法使いの夜』をプレイする価値があります……が、今お得に購入する手段となると、やや難しい状況にあります。

もちろん、本作は各通販サイトで取り扱われており、新品の購入も可能中です。しかし、1年以上前に出た作品ながら人気が安定しているため、新品だと目立った値下がりは見当たらず、例えばamazonではスイッチ版・PS4版ともに6,000円前後です。また、amazonの中古品取り扱いを見ても、安くとも5,000円ほど。一時期の相場はもっと低かったのですが、コラボイベントの影響なのか4月に入ってから高騰しています。

中古を扱うオンラインショップを見ても、相場は全体的に高め。例えば「駿河屋」では、スイッチの通常版が4,980円、初回限定版が6,978円です。ただしPS4版はやや抑えめで、通常版なら4,020円なので比較的お手頃と言えます。なお、PS4の初回限定版は5,490円です。

「ふるいちオンライン」も、通常版が5,258円〜6,028円、初回限定版は6,028円〜6,578円と、高めで安定しています。「ゲオ オンラインストア」は、PS4の通常版が2,648円で売られていましたが、残念ながら今は品切れ。「ブックオフ オンラインストア」はPS4の初回限定版のみ在庫が残っており、価格も3,520円となかなかリーズナブルです。

お得な中古品も一部あるとはいえ、タイミングによっては在庫が切れる可能性も十分あります。また、配送の時間もかかるため、できるだけすぐに遊びたい人は、ダウンロード版をオンラインストアで購入するのがベターでしょう。

現在、eショップ・PS Storeともに『魔法使いの夜』がセール価格で販売されており、通常版を4,950円で購入できます。ダウンロード版ならソフトの出し入れがなく、紛失や破損の恐れもありません。このメリットを4,950円で手に入れるのもアリでしょう。

またPS Storeでは、デジタルデラックス版もセール対象になっており、5,362円で販売中です。設定資料集「魔法使いの基礎音律」のデジタル版が付属しているので、こちらが欲しい人はご検討ください。なお、値引き率はやや下がるものの、Steam版も今なら5,280円で手に入ります。

ちなみに『魔法使いの夜』は、劇場アニメーション化も決定しています。現在、制作進行中なので、公開時期などはまだ不明ですが、劇場版に向けて『まほよ』をプレイしておくのも一興でしょう。コラボもADVも、余すところなくお楽しみください。


※記事中の中古価格は、個人の範囲で調べたものとなります。そのため、相場を保証するものではなく、また価格は記事執筆時点のものです。

※表記は全て、税込価格です。