小児がんは、一般的には0〜14歳の子どもがかかるがんのことを指します。小児がんとはあくまでも総称で、「血液のがん」といわれる白血病や脳腫瘍、悪性リンパ腫など、さまざまな種類があります。そこでここでは、小児がんになる原因と、小児がんの種類・症状について解説します。小児がんについての基本的な知識を得たい方は、ぜひ参考にしてください。

小児がんとは

小児がんとは、子どもがかかるがんの総称です。年齢は、0歳から15歳未満と定義されています。「小児がん」という病名はありません。

小児がんには色々な種類があり、それぞれに違う症状があらわれます。
小児がんのうち最も発生頻度が高いのは白血病です。白血病とは血液のがんを指し、小児がん全体の4割から5割を占めます。

2番目に多いのが脳腫瘍です。次いで神経芽細胞腫リンパ腫の順となります。小児がんには、大人のがんに多い胃、肺、乳腺などのがんはほとんど見られません。ただまれに、大腸がん、肝臓がんなど、大人と同じようながんを発症するケースもあります。

小児がんは、命を脅かす危険のある悪性の病気であるのは事実です。統計学的にも5〜14歳の子どもの病死死因第1位を占めています。長い間大人のがんと同じように「不治の病」とされてきましたが、現代では、医療の進歩により約8割は治るようになりました。そのため、小児がんは、早期に発見し、早期に適切な治療を始めることが大切です。

小児がんになる原因

大人のがんは、高齢になると発症頻度が高くなり、生活習慣や加齢に伴う衰えが原因のひとつあるとされています。
小児がんの原因は、大人のがんとは異なり原因不明のものや遺伝的なもの、また胎内での成長・発達の過程で発生した異常な細胞の増殖によるものがほとんどであると言われています。
先天的に遺伝子の異常を持つ子どもには、がんが発生しやすいことも知られています。また稀に、生まれる前の胎児にがんが見つかることもあります。

小児がんの種類と症状

小児がんの種類は小児国際がん分類第3版(ICCC-3)では大きく12に分類され、さらに47種類に細かく分類されており、それぞれに異なる症状が現れます。

ここでは、頻度の高い小児がんの種類と症状について解説します。

白血病

小児がんの中でも最も多いのが、血液のがんといわれる白血病です。
白血病は、血液の中にある白血球が作られる過程でなんらかの異常が生じてがん細胞が作られるようになり、増殖していくことで発症します。
白血病には、急性白血病と慢性白血病があります。特に急性白血病は急性リンパ性白血病(ALL)と急性骨髄性白血病(AML)に分けられ、小児に多いのは、急激に発症して進行する「急性リンパ性白血病」です。

白血病の初期症状は、繰り返す発熱や、顔色不良、貧血、鼻出血、止血困難などで、骨の痛みを感じることもあります。ただしこれらは、単なる風邪症状にもよくあり、骨の痛みは成長に伴う症状だと考えられることもあるため発見されにくく、初期症状で気づくことは難しいと言われています。

また、血液の中の血球は免疫力に関わることから、白血病になると感染症にかかりやすくな白血病の初期症状のほとんどは、免疫力や止血にかかわる血球が侵されることによって発生します。繰り返す発熱も、免疫力が低下し感染症にかかりやすくなっているために起こります。

白血病細胞は自然になくなることがありません。そのため、治療をしないと症状が進行し、脳や脊髄などに移行して、命を脅かすことになる可能性もあります。

脳腫瘍

脳腫瘍は、小児がんの中で白血病に次いで多い病気です。脳腫瘍とは、その名の通り脳内に腫瘍ができることです。腫瘍が脳内を圧迫することでさまざまな症状が起こり、場合によっては重い後遺症を残したり死に至ったりすることがあります。
小児脳腫瘍は約150の種類があり、治療の方法は種類や症状によってさまざまです。
脳腫瘍ができると、脳が腫瘍に圧迫されるために脳圧が高くなり、頭痛嘔吐などの症状が現れます。
発見された時には腫瘍が大きくなっていることが多いため、すでに重症となっていることもあります。

悪性リンパ腫

悪性リンパ腫は、血液の中にあって細菌やウイルスから体を守る働きをしている「リンパ球」ががん化したものです。リンパ系の臓器は全身にあるため、悪性リンパ腫はあらゆるところで発生する可能性があります。
適切に治療をすれば、比較的高い確率で治る見込みがあるとされていますが、急速に進行する悪性リンパ腫の場合、進行すれば重大な後遺症や命の危機にさらされる危険もあります。

悪性リンパ腫の初期症状は、発熱食欲不振体重減少など、原因が明らかではない不調が続きます。症状が進行してくると、首、わきの下、太もものつけ根などのリンパ節に、腫れしこりが出てきます。

血液検査ですぐに見つかる白血病に比べ、症状が進行していても血液検査では異常が見られにくく、早期発見が難しいがんと言われています。

胚細胞腫瘍の症状

胚細胞腫瘍(はいさいぼうしゅよう)とは、胎児のもととなる原始生殖細胞という細胞が育つ過程で生じる腫瘍です。腫瘍の中には、脳、髪、骨などの体の成分のほか、なんの組織かわからない未熟な細胞も含まれることがあります。
精巣や卵巣などの性腺にできるものと、それ以外の部位にできるものに分けられ、胸やお腹の中、脳など体の中心線に沿った部分にできやすく、特に男児に好発します。

小児の場合、男児では精巣にできる場合は陰のう内にこぶのような腫瘤ができます。女児では卵巣にでき、良性であることが多いです。
新生児に現れる仙尾部奇形腫は良性であることが多く、出生前診断で見つかることもあります。

胚細胞腫瘍の症状では、頭蓋内にできた場合、頭痛吐き気嘔吐などが起こります。
胸やお腹の中にある場合には初期症状に気づきにくく、腫瘍がある程度大きくなって見た目に目立つようになるまで症状がわからないことが多いです。

神経芽腫の症状

神経芽腫(しんけいがしゅ)は、交感神経節や副腎髄質などから発生するがんで、子どものがんでは脳腫瘍に次いで3番目に多くみられるがんです。原因は未だ明らかにされておらず、遺伝の関係もないと考えられています。
約6割が腹部の、腎臓の上にある副腎という組織に発生し、胸部、首(頸椎)、骨盤などにできることもあります。腹痛を訴えることもあります。

初期はほとんど無症状であることが多く、がんが進行して大きくなると、おなかが膨れたり、健診などでおなかにしこりが触れることで発見されます。
神経芽腫は、自然と小さくなる良性のものから、転移を起こしやすい予後不良のものまで、その悪性度がさまざまであることが特徴的です。

小児がんが発見されるきっかけ

小児がんは発生頻度が少なく、発熱や頭痛などの症状は風邪の初期症状とも似ているため、普段の生活で早期に発見することは難しいと言われています。小児がんが発見されるきっかけは、成長の節目で健康診断を受けたときや、単なる風邪や不調では済まされないような気になる症状があって病院を受診したときです。

早期発見のためには、毎日一緒にいる保護者が注意深く子どもの体調や様子を観察することが必要です。

【チェックリスト】小児科を受診する目安

下記は、小児がんの可能性が疑われるポイントです。

もちろん、これに当てはまるからといって必ずしも小児がんであるとは限りませんが、念のため小児科を受診したほうがいいかもしれません。

・いつもお腹が張っている
・原因不明の発熱(高熱)が2週間以上続いている
・2週間以上、頭痛と嘔吐を訴え続けている
・首、四肢、精巣、分泌腺などに触れたとき、しこりが触れる
・目が白く光っていたり、眼球が突出していたりする
・顔や頭が変形してきたようである
・顔色が悪く、青ざめているように見える
・骨や関節などに痛みがある
・疲れやすく、体重が減少してきた
・立ち上がったときや歩いたときにふらつくことがある

これらの症状が長引くようなら、病院に行きましょう。

不安な場合は小児科を受診しよう

小児がんの症状は、初期にはわかりにくいものが多く、症状が明らかに現れる頃には進行していることが多いです。また、子どもはうまく症状を訴えられないため、気づいた時には深刻なケースであることもあります。
小児がんは適切に治療すれば治る可能性があり、腫瘍の場合はすべてが悪性ではなく、良性であることもあります。少しでも疑わしい兆候が見られるのなら、小児科を受診してもらうようにしましょう。