「神戸ポートタワー」が4月26日にリニューアルオープンした。「地域で愛され、世界に認知される神戸のランドマーク」をテーマに、2021年9月から耐震補強を含めた大規模な改修を実施した。

 今回のリニューアルでは、屋上を解放し、オープンデッキを新設したほか展望フロアおよび低層フロアの店舗も一新したというが、どのように生まれ変わったのか。オープンを前に取材した。

●60周年の節目にリニューアルした「神戸ポートタワー」

 1963年に誕生したポートタワーは、2023年に60周年を迎えた。和楽器の鼓を長くしたような形から「鉄塔の美女」とも評され、神戸市のシンボリックな建築物として長年市民に親しまれてきた。

 今回の大規模改修にあたり、2022年12月に神戸ウォーターフロント開発機構(神戸市)が運営事業者を公募し、2023年4月に神戸を拠点に活動する「フェシリモ」「クレ・ドゥ・レーブ」「熾リ(いこり)」の3社が選ばれた。

 低層フロアと展望フロアに分かれており、低層フロアの2階を熾リ、3〜4階をクレ・ドゥ・レーブ、展望フロアと屋上デッキに加えて低層1階のチケット販売、インフォメーションをフェリシモがそれぞれ運営する。

 低層フロアの入場は無料。1階に展望フロアのチケット売り場とインフォメーションを設置し、2階は熾リが運営する物販フロアが広がる。すべての工程をハンドメイドで製造する「神戸ザック IMOCK」を中心に、アウトドアを切り口とした地場産品に加えて、地元メディアとのコラボ商品を提供する。

 さらに、同フロアには、日本のさまざまな魅力を国内外に発信する「BEAMS JAPAN」が兵庫県内に初出店。神戸限定の商品を販売するほか、ポップアップスペースの「ポートアレイ」では、ワークショップなども開催する予定としている。

 クレ・ドゥ・レーブが運営する低層フロアの3〜4階には、カフェ・レストラン&バー「PORT TERRACE」をオープンし、洋食や兵庫産のフルーツを使ったスイーツ、ドリンクを提供する。4階にはオープンテラスを新設し、店内はどの席からも神戸港を眺められるレイアウトとした。

●展望フロアのコンセプト

 4月23日、メディア向けに公開された内覧会では、「展望フロアで年間45万〜60万人の入場者数を目指したい」という目標が語られた。コロナ禍前の来場者数が33万人だったことを踏まえると、不可能な数字ではない。

 展望フロアの運営を担うフェリシモの経営企画室 広報部部長の吉川貴志氏は、「ポートタワーに登ったのは一度だけ、あるいは登ったことがないという方もいる。今後は、いかにリピートしていただくかを考えていきたい」と語る。

 入場者数を増やすために、どんな仕掛けを用意しているのか。インバウンド対策も欠かせない要素のひとつだ。関西圏の訪日外国人数を見ると、京都や大阪に比べて兵庫は少ないが、今回のポートタワーのリニューアルを皮切りに、5月には神戸市で「世界パラ陸上」を開催し、6月には「須磨シーワールド」(神戸市須磨区)を開業するなど、観光関連での需要喚起が期待されている。

 コロナ禍で激減したクルーズ船による訪日も、徐々に回復傾向にある。国土交通省港湾局が発表した2023年の訪日クルーズ旅客数と国内港湾へのクルーズ船寄港回数を見ると、神戸港は91回(前年57回)だった。「ポートタワーも寄港地の目の前にある。乗船客の観光地として選ばれるように神戸市とも協力していきたい」(吉川氏)

 また、今回のリニューアルで夜間の営業時間を従来から2時間延長し、午後11時までとした。「ナイトタイムエコノミーの観点からいうと、地方の観光地では夜を楽しむところがまだ少ない。昼も夜も楽しんでほしい」という狙いだ。

 フェリシモは、展望フロアのコンセプトとして「brilliance-赫き(かがやき)-」を掲げている。「神戸ポートタワーが赫(あか)く輝くと同時に、訪れた人が輝きを増すような仕掛けを随所に散りばめた」という。

●屋上デッキの開放とフロアが回転するカフェ

 今回のリニューアルで最も注目されるのは、初めて開放された屋上デッキだ。神戸の眺望や夜景を360度楽しめるガラス張りの空中回廊で「ブリリアンス ティアラ」、つまり女性用のかがやく頭飾りをイメージしている。

 屋上から5階に降りると、室内展望フロアが広がる。複数箇所のフォトスポットを設置した。夜の貸切フロアとして利用することも可能だ。

 展望フロア4階は、光をテーマとするミュージアムとした。「赫き」をテーマに、神戸のモチーフを散りばめたネオン風アートや、壁に手を触れると花火が上がる仕掛けの壁など、来場者の体の動きに合わせて変化するインタラクティブアートを展示している。アートを際立たせるため、外からの光は取り込まず、日中も暗くしている。

 展望3階には、フロア自体が360度回転するカフェ「レディーゴーラウンド」をオープンする。約30分で1周し、飲食店利用時の1時間で2周する仕様だ。

 2階は神戸ポートタワーの公式オリジナルグッズのショップ、1階はギャラリースペースを設置。ギャラリー展示1回目として、Z世代から支持されているアーティストのヨシフクホノカさんのアートを展示する。

 そのほか、タワーの入り口付近で「光るソフトクリーム」を発売する。ブラックライトを当てると光る仕掛けだ。ストロベリー、バニラ、ミックスの3種のフレバーを用意する。

●「神戸のシンボル」であり続ける

 今後も集客施策として、さまざまなコラボレーション展開を予定する。現段階では、構想中とのことだが「推し活」とのコラボイベントも検討している。

 「推し活」をテーマにした商品開発はフェリシモも実績があり、同社が運営するワイナリーでも2023年9月に人気アニメをテーマしたイベントを実施した。「想定を上回る来場者数があった」ことから、神戸ポートタワーでも相乗効果を期待する。

 タワーは年中無休で営業時間は午前9時〜午後11時。展望階へは日時指定のチケットが必要で、大人1000円、小中学生400円、幼児無料。屋上デッキだけのチケットはなく、展望階とのセットで大人1200円、小中学生500円。2月26日から先行してチケットを販売しており、売れ行きは好調だという。

 「2025年は、震災から30年の節目となる。復興の象徴として街を照らし続けた神戸ポートタワーは、地元の人にとって特別な存在。2023年12月にライトアップを再開したが、ポートタワーが港で輝いていることに励まされるという声をいただいた。今後も神戸の方々の心情に寄り添いながら運営していきたい」と吉川氏は語る。

 長年、神戸の街を照らし続けてきた神戸ポートタワーは、3年の歳月を経て大きく生まれ変わった。これからも人々の心の拠り所として、赫き続ける。

(カワブチカズキ)