コロナ禍明けの需要回復により、ホテル業界が好況だ。東京商工リサーチが調査結果を発表し、ホテルを運営している上場13社の客室単価と稼働率が、インバウンド需要の高いエリアを中心に、コロナ禍前を上回った。2021年と比較すると、単価は平均69.2%上昇し、最高を更新したホテルも相次いでいる。

 2023年10〜12月期と前年同期で比較可能な13社・15ブランドで、客室単価が上昇。上昇幅では「20〜50%未満」(9ブランド)に最も回答が集まった。続いて「50〜70%未満」「20%未満」が各3ブランドだった。最も上昇したのは、阪急阪神ホールディングスが運営する「阪神阪急ホテルズ」(56.1%)。

 コロナ禍前の2019年10〜12月期と2023年同期までの5年間で客室単価を見ると、比較可能な12ブランド中、11ブランドで客室単価が上昇した。「20%以上」(7ブランド)という回答が最も多く、次いで「10〜20%未満」(3ブランド)、「5%未満」(1ブランド)となった。「東急ステイ」(東急不動産ホールディングス)が41.8%で、最も上昇した。

 2019年の10〜12月期から2023年同期までの稼働率・客室単価を比較すると、稼働率は2020年が58.0%で最も低く、客室単価では2021年が6794円で最安値だった。2023年は5月に新型コロナウイルス感染症の5類移行があり、旅行や出張などの国内需要が回復。客室単価は1万2339円で、2019年の9587円を2752円(28.7%)上回った。

 ファミリー層や観光利用が多いシティホテル(4ブランド)は、2020年10〜12月期に稼働率が26.1%まで低下。新型コロナ罹患者の療養先として施設を提供したブランドも多いビジネスホテルと比べ、大幅に落ち込んだ。一方、2023年は2020年比で53.9ポイント改善し、稼働率は80.0%まで回復している。

 客室単価は2021年10〜12月に1万904円まで低下していたが、2023年の客室単価は1万6843円で、コロナ禍前の2019年(1万5375円)を1468円(9.5%)上回った。

 観光・ビジネス需要の急回復や訪日外国人客数の急拡大で、客室稼働率・客室単価の上昇は続きそうだ。一方で、東京商工リサーチは、宿泊業の92.8%で正社員が不足しているという調査結果も発表しており、今後の成長をかけた人員確保がホテル各社の大きな課題になると分析した。

 国内の上場ホテル運営会社13社の開示資料を基に、客室単価と稼働率を集計した。