ローソンが2023年3月末に発売した新化粧品ブランド「&nd by rom&nd(アンド バイ ロムアンド)」が、Z世代を中心にヒットしている。若年女性に人気の韓国コスメブランド「rom&nd(ロムアンド)」と共同開発し、リップやアイシャドウなど全29品をラインアップする(2024年4月末現在、期間限定商品を除く)。

 発売から3日で2カ月分の想定売上数となる30万個を販売、約7カ月で200万個を突破と、想定以上の売れ行きに。人気商品は店頭で品薄になるほどの反響だった。

 コンビニのメイン顧客層は30〜50代だが、「若年層」をターゲットにした施策で狙いどおりの効果が出ている。Z世代にウケる商品をどのように生み出しているのか。ローソン 商品本部 生活・日用品部 チーフマーチャンダイザーの加藤愛氏にアンド バイ ロムアンドのビジネス戦略と反響を聞いた。

●韓国の大人気コスメブランドと共同開発

 ローソンと協業したロムアンドは、韓国企業のiFamily SCがパーソナルカラー専門ビューティークリエイター、ミン・セロム氏と2016年に共同で設立した。こなれ感を演出する発色や1000〜2000円ほどの買いやすい価格帯、パッケージのデザイン性などがZ世代に高く支持されている。

 2019年に日本で発売したところ、発色とツヤ感が持続する「ジューシーラスティングティント」がSNSで話題になり、アイシャドウやマスカラなど幅広いカテゴリーで注目が集まっている。韓国コスメの人気ランキングで必ずトップ3に入るなど、名の知れたブランドに成長しているのだ。

 そうした点に着目したローソンは、新化粧品ブランドの共同開発をロムアンドに打診。日本市場でのさらなる開拓を目指すロムアンドはこれを承諾し、コラボレーションが実現したそうだ。

 2023年3月末に、リップ(8品)、マスカラ(2品)、アイシャドウ(5品)、アイライナー(2品)、アイブロウ(2品)、ファンデーション(2品)、ネイル(4品)のカテゴリーで計25品を発売。その後、期間限定品や追加アイテムも扱い、現在のラインアップは29品(定番商品のみ)となっている。

 商品開発でこだわったのは、「サイズ感」「価格」「発色」「パッケージ」の4点だという。気軽に試しやすく小さなカバンにも入るミニサイズにして価格帯を抑え、一部の商品を除いて1000円以下に設定している。

 ほどよく肩の力が抜けたようなオシャレさを演出するカラー展開も、工夫の一つ。パッケージは中身が見える透明プラスチックではなく、韓国コスメに多い「紙」のパッケージを採用し、ブランドの世界観を統一している。

●緊急購買から「目的買い」へ

 ローソンが韓国コスメを発売した背景には、「若年層の来店」を促したい狙いがある。ローソンに限った話ではなく、コンビニの主な顧客層は30〜50代で、エリアによっては高齢者が多い店舗もあるという。

 加えて、コンビニの化粧品といえば「急に外泊予定ができた」「化粧品を自宅に忘れてきた」といったタイミングでの「緊急購買」が目立ち、「この化粧品が欲しいから」という「目的買い」の人は少なかった。

 「化粧品を購入する層も働く30〜50代がメインで、なかなかZ世代に手に取ってもらう機会がありませんでした。若年層の来店を促し、年齢を重ねても長く使ってもらえる化粧品を開発したいと考え、韓国コスメに着目しました」

 コロナ禍で日本のコスメ市場は縮小傾向だが、韓国コスメ市場は顕著に成長している。化粧品の輸入先(金額ベース、日本化粧品工業会調べ)を見ると、2022年に韓国が初めてフランスを抜いて首位になり、775億円にのぼった。

 ローソンとロムアンドの交渉が始まったのは、2022年6月ごろ。「ぜひやりましょう」とすぐに話がまとまり、製品を発売したのは2023年3月末。半年ほどの開発期間で初回のラインアップ25品を発売した。

 「日本のコスメブランドの場合、開発期間に1年以上かかることが多いのですが、韓国ブランドは動きが早い傾向があります。少ないロット数で作れたり、インフルエンサーとのコラボ商品が多数販売されていたり、開発の間口が広い印象もありますね」

●3日で2カ月分の30万個を販売

 2023年3月末に発売すると、3日で2カ月分の想定売上数となる30万個を販売、10月には200万個を突破するヒットとなった。

 「発売2週間前から、アンドバイロムアンドの公式Instagramなど各種SNSで告知したところ、良い反響がありました。当時約17万人のフォロワーがいたロムアンドとSNSマーケティングでも全面協業したことが、ターゲット層の関心と購買意欲につながったと考えています」

 SNSの反響を見ると、「アイシャドウのサイズ感がいい」「リップは衛生的にこまめに買い換えたいからミニサイズが嬉しい」「ニオイがないのがありがたい」「サイズを小さくして値段を安くしてくれた。しかもコンビニで買えるのは最高すぎる」といった商品のサイズ感や価格、品質を評価する声が多く見られた。

 2024年3〜4月のランキングは、以下のとおりだ。

1位:メロウドローアイライナー BR01 チョコ(880円)

2位:グラッシーボムティント BR02 ローズビーン(780円)

3位:メロウマットクッション BE02 ナチュラル(1580円)

 「10〜20代の購買がもっとも多いのですが、30〜40代の購入も一定数見られています。緊急購買というより、アンドバイロムアンドの商品を目当てに目的買いされるケースが多いのだろうと思います。期間限定商品は2色をまとめ買いする方もいましたね」

●無印や韓国スキンケアも売上増に貢献

 ローソンは2022年5月から、全店で「無印良品」の導入を本格化していて、洗顔料や化粧水といったスキンケアアイテムも多数扱っている。こうした取り組みも支持され、化粧品の販売高(2023年2月度)は前年比約190%と好調だった。

 また、2024年3月から新たに韓国化粧品ブランドの取り扱いが始まっている。セリ科の植物ツボクサから抽出された「CICA(ツボクサエキス)」の独自レシピを持つ「VT COSMETICS(ブイティー コスメティックス)」と、自然由来の成分を配合しながら頭皮と髪への優しさを追求したブランド「KUNDAL(クンダル)」だ。

 追加で韓国化粧品を購入する場合も、試しやすいサイズ感や価格となっていて、「CICAデイリースージングマスク 1枚入」(165円)や「CICAクレンジングティッシュ 15枚入」(385円)は、小さめにリサイズしている。

 「クンダル ダメージケアシャンプー 50ml」「クンダル ダメージケアトリートメント 50ml」(ともに495円)もローソン先行販売のミニボトルだ。

 「アンドバイロムアンドと一緒に、他の韓国ブランドの商品を購入される方もいます。追加アイテムで特に好調なのがCICAデイリースージングマスクで、売り上げは計画の2倍になっています」

 コンビニの韓国コスメを見ると、セブン-イレブンは日本未発売の「CLIO(クリオ)」の姉妹ブランド「twinkle pop」の商品を5月下旬に発売する。人気があるクリオとタッグを組み、新ブランド「twinkle pop by CLIO」を展開するという。

 コンビニ各社の化粧品市場は、引き続き盛り上がりそうだ。

(小林香織)