アパレル業界の業績がコロナ禍前を上回った。東京商工リサーチが調査結果を発表し、国内アパレル小売業2443社の2023年決算における売上高合計は4兆8891億5300万円だった。2019年(4兆8755億4600万円)を上回り、最終利益は2451億1800万円で2019年の1.5倍に増加した。

 売上高の上位には、ユニクロやジーユー、アダストリア、ワークマンなど、企画・製造・販売まで自社で一貫して行う企業が並んだ。アパレル小売業は値引きやセール販売が慣習化し薄利多売の傾向にあったが、流通コストの削減や需要に合った商品投入などを進め、収益向上に舵を切る企業も増加している。

 2023年に増収した企業は37.9%で、減収企業の29.3%を8.6ポイント上回った。3年連続で減収企業が増収企業を上回っていたが、人流回復などの好影響に加えて物価高もあり、増収企業と減収企業の割合が逆転した。

 ただ、増収企業率では、アパレル製造(55.3%)やアパレル卸(53.9%)を大幅に下回っている。消費者に近い分、価格転嫁が進んでいない様子がうかがえる。売り上げが横ばいの企業は、2022年の30.9%から32.6%に拡大した。

 増収増益企業は22.9%で、減収減益企業は15.3%だった。増収減益企業は11.0%で、アフターコロナにおける売り上げの拡大以上に、コスト負担の増加が重いようだ。

 ECへのシフトやインバウンド需要の高まりで、各社の業績はコロナ禍前を上回る水準まで伸長したが、中小・零細企業にはコスト面や技術・人的資源の面で負担が大きく、企業規模による業績の二極化が進むことも懸念されている。東京商工リサーチは「EC対応への投資が進まない企業や、スケールメリットの恩恵にあずかれない小・零細企業は、アフターコロナでも引き続き厳しい事業環境に置かれている」と分析する。

 国内のアパレル小売業者を対象に、単体決算で最新期を2023年1月〜12月期とし、5期連続で比較可能な2443社を抽出、分析した。