2023年に発売された「Xiaomi 13シリーズ」はライカとのコラボレーションによって、カメラ性能に大きく磨きをかけたスマートフォンとして中国のみならず、グローバル市場でも注目された。

 そんなXiaomiから早くもライカ監修スマートフォンの第4弾「Xiaomi 14 Ultra」が登場した。MWC Barcelona 2024でも発表されたが、今回は中国向けモデルを手にする機会を得たので、レビューしたい。

●進化した可変絞りとレンズ構成 強化したカメラハードウェアが魅力

 業界に衝撃を与えたXiaomiとライカのコラボレーション。2023年のXiaomi 13シリーズは初のグローバル展開も行われ、最上位の「Xiaomi 13 Ultra」はもちろん、価格を抑えた「Xiaomi 13Tシリーズ」も大きく注目された。

 今回のXiaomi 14 Ultraは前作のXiaomi 13 Ultraの後継モデルとして登場し、あらゆる面を強化した。グローバルでは「Lens to Legend」のキャッチコピーが使われ、最強のカメラスマホであることをアピールする1台だ。2月のMWCでは大々的にアピールされ、大きな注目を集めた。基本的なスペックは以下の通り。

・プロセッサ……Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3

・メインメモリ……12GB

・ストレージ……256/512GB/1TB(グローバル版は512GBのみの設定)

・ディスプレイ……6.73型 2K+ CSOT OLED

・アウトカメラ……メイン:5000万画素 F1.63-4.0 1型センサー超広角:5000万画素 F1.83.2倍望遠:5000万画素 F2.05倍望遠:5000万画素 F2.5

・インカメラ……3200万画素

・バッテリー……5300mAh(グローバル版は5000mAh)90W充電、80W無接点充電対応

・通信……衛星通信対応(中国版のみ)

 Xiaomi 14 Ultra本体の質感はXiaomi 13 Ultraなどに通じるものがある。カメラ部に向かって出っ張りのある構成や、カメラ部を円形の意匠であしらうなど「カメラ」を意識させる質感だ。本機ではローレット加工も施し、従来よりも高級感がアップした。

 加えてXiaomi 14 Ultraのカメラチューニングは、引き続きライカが監修している。2022年からのコラボも3年目に突入し、より魅力的な写真を簡単に撮れるようにチューニングしている。

●カメラは安定のライカクオリティー カメラグリップで「カメラ」さながらの撮影体験

 売りとしているカメラは4眼構成。35mm換算で12mmの超広角、23mmの標準、75mm、120mmの望遠だ。

 今回は光学系にかなり力を入れたと発表会でも示しており、スペック表以外の点も大きくアピールした。メインカメラのレンズはXiaomiらしく8枚レンズに加え、反射防止コーティングが一新されるなど、従来機より大きく改善している。

 Xiaomi 14 Ultraはメインカメラにはソニー製の最新1型センサーである「LYT-900」を採用。市場にあるスマホでは最大のものだ。レンズの開放端がF1.63と明るくなったことでライカの「ズミルクス」を冠するレンズに進化した。今作では、可変絞りも備えており、F1.63からF4.0までソフトウェア併用でフレキシブルに調整できる。Xiaomi 13 Ultraよりも柔軟にボケ量の調整などが可能だ。

 Xiaomi 14 Ultraではスマホらしからぬ柔らかい質感の絵が出る印象だ。13 Ultraと方向性は同じだが、より「深みのある表現」を可能にした。可変絞りの存在や高度なAI処理などを駆使した「エモい質感」の引き立てに寄与している。

 センサーが1型と大型なこともあり、よくも悪くもボケがスマホとしては強めだ。その点、Xiaomi 14 Ultraは可変絞りを備えるので、ある程度パンフォーカスで撮影することも可能だ。ボケすぎて流れるような描写も抑えられる。

 Xiaomi 14 Ultraの夜景モードは強力だ。どちらかというとXiaomi 14 Pro同様に黒をハッキリ出すチューニングとなっており、リアリティー重視のメリハリがある作例だ。物理的な可変絞りを備えるため、光線の演出も可能だ。

 このようなモノクロ写真も撮影できる。アートフレームはプリセットでいくつかあり、数パターンから後付けも可能だ。

 超広角カメラも見事な写りだ。画角も換算12mmと広いため、iPhoneよりもダイナミックに情景を切り取れる。こちらも5000万画素のセンサーを採用するなど、多少のズームにも対応できる。風景をまるまる収めたい場面では頼りにできる画角だ。

 望遠カメラも見事な仕上がりだ。ここまでは換算75mm(3.2倍)の作例だが、レンズもF2.0と明るく画角的にも使い勝手はいい。今回は最短撮影距離がXiaomi 14などと同様の10センチとなり、被写体に寄れる構成になった。

 また、この3.2倍望遠カメラは寄れることから、フードフォトにも最適だ。シズル感もしっかり表現でき、おいしそうに撮影することができる。一方で背景が大きくボケるので、可変絞りのあるメインカメラとうまく使い分けるとよさそうだ。

 5倍望遠(120mm)も見事だ。レンズもF2.5と明るくなった上に最短撮影距離は30センチとこちらも寄れる構成だ。2倍クロップの10倍望遠なら実用性も高く、AIズーム機能を併用すれば、最大30倍相当まではある程度の画質で残すことが可能だ。

 Xiaomi 14 Ultraの存在感を際立たせる存在が専用のカメラグリップだ。「Photographer Kit」という名称で中国では別売だったが、グローバル向けには「特典」という形で提供される。前作のXiaomi 13 Ultraにも純正グリップはあったが、今作では多くの部分でアップデートされた。

 また、中国ではカメラグリップを黒と白の2色から選択できるが、グローバル版では黒のみの提供となっている。

 装着した姿はカメラさながらのフォルムだ。ストラップホールも備えており、スナップシューターとしては1つの完成形とも評せる仕上がりだ。特に75mmの望遠はゆがみが少ないことや被写体に寄れることから利用頻度もかなり高い。望遠カメラを使う場面でもしっかりとホールドできるのはありがたい。

 グリップのおかげで本体をしっかり持てるので手ブレも抑えられる。片手でサクサク撮れるため、「ストリートショットモード」との相性も抜群だ。

 スマホ本体とはUSB端子を介して接続する方法に変更され、操作のタイムラグを抑えた。カメラグリップの充電口からスマートフォン本体の充電もできるようになり、利便性も向上した。カメラグリップ自体に1500mAhのバッテリーも備え、スマートフォンと合わせて6500mAhの容量を確保できる。

 ダイヤルでは露出、シャッタースピード、絞り、ISO感度をはじめとしたいくつかの操作を割り当てられる。オートモードメインでは露出、マニュアル撮影では絞りに割り当てると撮影体験が大きく向上する。

 録画用ボタンも各種操作や設定呼び出しに割り当てが可能だ。「動画を撮らない」というユーザーはカスタマイズしてみるとよいだろう。

●カメラだけじゃない 全方位で満足できるフラグシップスマホがXiaomi 14 Ultra

 Xiaomi 14 Ultraに関しては卓越したカメラ性能に注目が行きがちだが、基本性能や画面性能なども大きく評価したい。

 ディスプレイは近年のXiaomiらしくOLEDパネルを採用している。CSOT(TCL)と共同開発した高輝度パネルで、ピーク輝度は3000ニトとなっている。先代のXiaomi 13 Ultraよりも明るく、自然な色が表現できるようになった点は大きく評価したい。

 サイズは6.73型と大型で、解像度は2K+となる。1920HzのPWM調光や120Hzのリフレッシュレートもサポートする。多くの色帯域に対応する上、キャリブレーションも行うなど品質も高めた。

 プロセッサはSnapdragon 8 Gen 3を採用しており、搭載メモリは12GBと必要十分だ。独自開発の冷却機構を搭載したことで、高い冷却性能も備える。これはゲームに限らず写真撮影などのカメラを使うシーンにも生きてくる。高負荷な4K動画撮影などでも威力を発揮するのだ。

 ストレージはUFS4.0規格の高速なものが採用されている。省電力ながら高速伝送が可能となっており、仮想メモリなどを利用してもパフォーマンスの低下を抑えられている。

 Xiaomi 14 Ultraを使ってみると、ハイエンド機というのもあって動作にストレスは感じない。Snapdragon 8 Gen 3はかなり優秀なプロセッサなのか、発熱もかなり抑えられているように感じた。原神のような高負荷なコンテンツを1時間ほどぶっ通しでプレイしても、本体の発熱で「熱い」と感じることは少なかった。

 加えて、独自の制御チップによる充電制御による90Wの高速充電、80Wのワイヤレス充電と10Wのリバースチャージにも対応している。80Wのワイヤレス充電器はグローバル展開も行う。

 Xiaomi 14 Ultraの場合、おおむね30分でフル充電ができ、カメラグリップ装着時でも90Wの急速充電ができる。この点も「カメラ」として考えたときの利便性に優れている。撮影していてバッテリー残量が少なくなったら、カフェで一息入れている間にフル充電も可能なのだ。

 さらに、Xiaomi 13T Proなどに付属する120W充電器を用いれば、後方互換で90Wでの超急速充電ができる。日本でも単品販売もされているので、予備が欲しい場合はこちらを利用するといい。

 バッテリーの持ちはXiaomi 13 Ultraと比較してやや向上したが、同時期発売の競合製品と比べると劣る印象だ。カメラ性能特化ゆえに、カメラの利用頻度が高いことも考えられるが、カメラグリップのサブバッテリーを利用しても容量の割に電池持ちはよくない。このあたりはソフトウェアアップデートで改善してほしいところだ。

●撮影体験特化のXiaomi 14 Ultra 技適もあり日本での発売に期待

 Xiaomi 14 Ultraはグローバル展開するサムスンのGalaxy S24 Ultraと直接競合する端末なだけあって、Xiaomiのフラグシップも完成度は非常に高い。今回はデザインもより洗練され、他社のプレミアムラインのスマートフォンと比較しても存在感を示している。

 ライカブランドを引っ提げての世界展開は、Xiaomiのスマートフォンを「カメラ性能が高い」と印象づけ、それをよりいっそう加速させてきた。2024年のXiaomi 14 Ultraのカメラに関しては、2023年のXiaomi 13 Ultraからさらに進化を遂げたことを実感した。1型センサーと可変絞りは一新され、画像処理も最適化が行われたことで、高度なHDR処理やAI処理などを可能にしている。

 先行したXiaomi 14 Proと比較すると完全上位互換かつ、「カメラ」の操作感、撮影体験にフォーカスを当てた構成だ。特にカメラグリップによる撮影体験は過去のスマートフォンを見ても思い付かない。強いて挙げるなら「コミュニケーションカメラ」と銘打ったパナソニックのLUMIX CM1が最も近い存在だろう。

 それでありながら、価格は非常に攻めている。先行販売された中国版は最小構成で6499RMB(約14万2000円)から、カメラグリップは別売で999RMB(約2万2000円)だ。同社のフラグシップでは久しぶりの値上げだが、その価値に見合う製品として、現地でも高い評価を受けている。

 グローバル価格は地域によって税制が異なるが、日本で身近な香港向けは8999香港ドル(約18万2000円)だ。こちらは容量が512GBかつ、特典でカメラグリップが付属するためお得感はある。現地向けのGalaxy S24 Ultraが9898香港ドル(約20万円)なので、Xiaomi 14 Ultraは比較的安価だ。

 そして、Xiaomi 14 Ultraのグローバルモデルには技適マークがあることが確認されている。世界的にも評価の高いXiaomiのライカコラボしたカメラ性能特化スマホが、日本での正規発売も期待できるところにいるのだ。

 筆者としては、Xiaomi 14 Ultraは「撮影体験が楽しいカメラスマホ」と考える。簡単にキレイに撮れるカメラはもちろん、「簡単に作品に昇華できる」部分はまさにHuaweiやシャープがライカとコラボしてたどり着いた境地だ。

 加えて、可変絞りの存在や、カメラグリップによる操作性の進化はXiaomi 14 Ultraの特権的な存在だ。スマホというよりも「カメラ」にフォーカスを当て、しっかり作りこんだ世界に誇れるフラグシップだ。ライカコラボスマホの日本展開も含め、今後のXiaomiのスマートフォンに期待したい。

●著者プロフィール

佐藤颯

 生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。

 スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。

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