レノボ・ジャパンのポータブルゲーミングPC「Legion Go」(実売価格12万〜13万円程度)は、AMDのAPU「Ryzen Z1 Extreme」を搭載しており、HD(1280×720ピクセル)〜フルHD(1920×1080ピクセル)の解像度であれば単体でもPCゲームをそこそこ快適に楽しめるという。レビューの前編では、“最弱”である「トップクラスの電力効率」にして各種ベンチマークテストを実施した。

 今回は「本当に快適にゲームを楽しめるのか?」という観点から、パフォーマンス重視の「最適なパフォーマンス」と、パフォーマンスと電力消費の均衡を重視した「バランス(標準設定)」の両設定におけるパフォーマンスをチェックしていく。

●Legion Goのスペックをおさらい

 テストを始める前に、Legion Goのスペックを改めてチェックしていこう。

 本体のサイズと重量は以下の通りとなっている。コントローラーを取り外せば「少し厚めのタブレット端末」として利用可能だ。

・コントローラー抜き:約210(幅)×131(奥行き)×20.1(厚さ)mm/約639g

・コントローラーあり:約298(幅)×131(奥行き)×40.7(厚さ)mm/約854g

 先述の通り、APUはRyzen Z1 Extremeで、Zen 4アーキテクチャのCPUコアを8基16スレッド(3.3GHz〜5.1GHz)、RDNA 3アーキテクチャのGPUコアを12基(最大2.7GHz)備える。特にGPUコアは現状のAMDにおける最新アーキテクチャで、リアルタイムレイトレーシング(RT)処理にも対応している。

●電源モードごとの性能をチェック!

 ここからは、主要なベンチマークテストアプリを電源モードごとに実行していく。「出先で電源を確保できる状態」を想定して、今回は純正ACアダプター(最大65W出力)を接続した状態でテストを行う。

CINEBENCH R23/CINEBENCH 2024

 まず、3Dレンダリングを通してCPUのパフォーマンスをチェックする「CINEBENCH R23」を実行した。10分間のうちに可能な限りテストを繰り返す設定を有効とした上で、最後に実行されたテストのスコアは以下の通りとなった。

・シングルコア

・最適なパフォーマンス:1707ポイント

・バランス:1691ポイント

・トップクラスの電力効率:1155ポイント

マルチコア

・最適なパフォーマンス:1万1439ポイント

・バランス:1万876ポイント

・トップクラスの電力効率:9427ポイント

 一目瞭然だが、電力設定によって、スコアにはそれなりの差が生じる。特に「トップクラスの電力効率」と他の2設定との差は大きい。

 パフォーマンス重視の「最適なパフォーマンス」に設定すると、2〜3世代前のミドルクラスのデスクトップ向けCPU並みのパフォーマンスを発揮できる。コンパクトな本体であるにも関わらず、ここまでの性能を発揮できるのは、率直にいってすごい。

 「バランス」は、最適なパフォーマンスと比べると少しスコアが落ち込むものの、十分な性能を発揮できている。普段使うなら、バランス設定にしておくとストレスなく使えそうだ。

 先述の通り「トップクラスの電力効率」は他の電源設定よりもスコアは劣るものの、シングルコアスコアは1000を超えている。省電力でありながらも、そこそこの演算性能を確保できていることは、時代による進化といえるだろう。

 CINEBENCHの最新バージョンで、負荷が一層増した「CINEBENCH 2024」でもCPUの性能をチェックしてみた。スコアは以下の通りだ。

・シングルコア

・最適なパフォーマンス:99ポイント

・バランス:98ポイント

・トップクラスの電力効率:83ポイント

マルチコア

・最適なパフォーマンス:643ポイント

・バランス:634ポイント

・トップクラスの電力効率:541ポイント

 スコアの傾向はCINEBENCH R23と同様だ。やはり、性能と省電力のバランスを取るならバランス設定で使うのが良さそうだ。

PCMark 10

 次に、PCの総合ベンチマークテスト「PCMark 10」の結果を見ていこう。

・総合スコア

・最適なパフォーマンス:6792ポイント

・バランス:6431ポイント

・トップクラスの電力効率:6006ポイント

Essentials(Webブラウジング/ビデオ会議)

・最適なパフォーマンス:1万434ポイント

・バランス:1万215ポイント

・トップクラスの電力効率:9512ポイント

Productivity(オフィススイート)

・最適なパフォーマンス:1万161ポイント

・バランス:8809ポイント

・トップクラスの電力効率:8005ポイント

Digital Content Creation(写真/動画編集)

・最適なパフォーマンス:8221ポイント

・バランス:8023ポイント

・トップクラスの電力効率:7722ポイント

 最適なパフォーマンス設定では、いずれのスコアも良好だ。EssentialsやProductivityでは1万ポイントを超え、Digital Content Creationも8000ポイントを超えた。GPU性能の良さがスコアに表れている。

 バランス設定やトップクラスの電力効率設定でも、スコアはそこそこ高い。ただ、最適なパフォーマンス設定と見比べると、特にProductivityテストではスコア差が大きくなっている。オフィススイートを構成するアプリも、意外とCPUやGPUを駆使するようになっている。そのことが如実に表れた結果ともいえる。

3DMark

 次に、3Dグラフィックスのパフォーマンスをチェックする「3DMark」で幾つかのテストを実行した。主なテストの結果は以下の通りだ。

・Fire Strike(DirectX 11ベース/フルHD描画)

・最適なパフォーマンス:7756ポイント

・バランス:7707ポイント

・トップクラスの電力効率:6879ポイント

Fire Strike Extreme(DirectX 11ベース/WQHD描画)

・最適なパフォーマンス:4095ポイント

・バランス:4074ポイント

・トップクラスの電力効率:3699ポイント

Fire Strike Ultra(DirectX 11ベース/4K描画)

・最適なパフォーマンス:2177ポイント

・バランス:2132ポイント

・トップクラスの電力効率:1980ポイント

Time Spy(DirectX 12ベース/WQHD描画)

・最適なパフォーマンス:3219ポイント

・バランス:3091ポイント

・トップクラスの電力効率:2545ポイント

Time Spy Extreme(DirectX 12ベース/4K描画)

・最適なパフォーマンス:1473ポイント

・バランス:1443ポイント

・トップクラスの電力効率:1272ポイント

Port Royal(DirectX 12ベース/RTテスト)

・最適なパフォーマンス:1523ポイント

・バランス:1165ポイント

・トップクラスの電力効率:1059ポイント

 いずれのスコアも、GPU統合型CPUとしてはかなり高い。設定次第な面もあるが、フルHD(1920×1080ピクセル)までの解像度であればゲームを十分に楽しめそうだ。

 ただし、トップクラスの電力効率設定の場合、高負荷のテスト(Time Spy ExtremeやPort Royal)では顕著なスコア(≒パフォーマンス)の低下が見られる。

FF14ベンチマーク/FF15ベンチマーク

 実際のゲームベースのベンチマークテストを実行してみよう。

 まず、中程度の負荷となる「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」で、フルHD/フルスクリーン設定で「標準品質(ノートPC)」「高品質(ノートPC)」「最高品質」のスコアを計測した。結果は以下の通りだ。

・標準品質(ノートPC)

・最適なパフォーマンス:8143(快適)

・バランス:6737(やや快適)

・トップクラスの電力効率:6670(やや快適)

高品質(ノートPC)

・最適なパフォーマンス:7036(やや快適)

・バランス:5481(普通)

・トップクラスの電力効率:5406(普通)

最高品質

・最適なパフォーマンス:5827(普通)

・バランス:4540(普通)

・トップクラスの電力効率:4428(普通)

 電力設定を下げても、ノートPC向けの標準品質であれば「やや快適」の評価を得られた。パフォーマンス設定なら「快適」評価と、十分に遊べる性能があることが分かる。

 トップクラスの電力効率設定でも、最高品質で「普通」評価を得られた。テストの様子を見る限りは、致命的なカクつきなどはほとんどなかった。解像度をHD(1280×720ピクセル)に下げれば、一層快適にプレイできそうだ。

 今回は、7月に発売される予定のファイナルファンタジーXIVの新バージョン「黄金のレガシー」をベースとするベンチマークテストアプリ「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」でも同様のテストを行った。

 暁月のフィナーレと比べて、黄金のレガシーは画面描画の質感や影の解像度など、全体的な映像品質が向上している。そのため、描画負荷も相応に増加し、推奨環境のレベルも引き上げられている。

 スコア的には、、従来の暁月のフィナーレと比べると若干厳しくなると思われるが、果たしてどうなるのだろうか。結果は以下の通りだ。

・標準品質(ノートPC)

・最適なパフォーマンス:5515(普通)

・バランス:5371(普通)

・トップクラスの電力効率:5060(普通)

高品質(ノートPC)

・最適なパフォーマンス:5266(普通)

・バランス:5126(普通)

・トップクラスの電力効率:4909(普通)

最高品質

・最適なパフォーマンス:3230(設定変更を推奨)

・バランス:3156(設定変更を推奨)

・トップクラスの電力効率:2637(設定変更を推奨)

 負荷が上がったこともあり、最高品質となるとどの電源設定でも「設定変更を推奨」評価となってしまった。描画品質が高めのゲームでは、あらかじめ描画解像度を下げておいた方が良いだろう。

 高負荷の「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」ではどうだろうか。フルHD/フルスクリーン設定で「軽量品質」「標準品質」「高品質」の3パターンでスコアを測った結果は以下の通りだ。

・軽量品質

・最適なパフォーマンス:4780(やや快適)

・バランス:3248(普通)

・トップクラスの電力効率:2640(重い)

標準品質

・最適なパフォーマンス:3700(普通)

・バランス:2490(重い)

・トップクラスの電力効率:2085(重い)

高品質

・最適なパフォーマンス:2740(やや重い)

・バランス:2271(重い)

・トップクラスの電力効率:1599(動作困難)

 最適なパフォーマンスでも、軽量品質で「やや快適」評価となった。快適な動作を求めるなら、解像度を下げて楽しむと良さそうだ。

 トップクラスの電力効率設定では、軽量品質でも「重い」評価となっている。負荷の大きいゲームを楽しむ場合は、最適なパフォーマンスが良いだろう。

●本気で「ゲーミングPC」として使うなら「最適なパフォーマンス」が吉

 前編でも触れた通り、Legion Goはトップクラスの電力効率でも、そこそこ高いパフォーマンスを発揮する。数年前のノートPC以上にキビキビ動く姿には正直驚いた。

 しかし、ある程度負荷の高いゲームタイトルとなると、そうも行かない。トップクラスの電力効率設定だと、ハイエンドゲームを楽しむのは難しいだろう。本機を“ゲーミングPC”として使うのであれば、AC電源につないだ上で、電源モードは「最適なパフォーマンス」にするのがよいだろう。