【連載】お腹トラブル天国と地獄 番外編:スーパーアグレッシブ発酵食品図鑑

私たちの食生活の中で欠かすことができない発酵食品。ナンプラー、イカの塩辛、カツオの酒盗など、海産物を発酵させて作るものもたくさんあります。中でもスーパーアグレッシブなにおいが特徴的なのが、塩漬けのニシンの缶詰「シュールストレミング」。世界一臭い食べ物と言われていますが、実はスウェーデンで食べられている発酵食品なんです。果たして人間はシュールストレミングをおいしく食べることはできるのでしょうか...。実体験を交えてご紹介します!

なぜか2つ目に手が伸びる

シュールストレミングのにおいは、なんとくさやの6倍とも言われるほど。あまりに強烈すぎて、屋内での開缶が禁止されていることも......。その臭さは、発酵によって作られています。つまり、発酵の学びを深めるために、避けては通れぬ食品なのです。「発酵オタクが集まって、怖いもの見たさでシュールストレミングを食べてみるという会」を知り合いが催していたので、勉強のために参加。いくら自己研鑽のためとはいえ、世界一臭いものを食べるのは正直気が進みませんでしたが、仕方ありません。

いざ開缶して、ちょっとびっくり。実は、適切な温度管理などが行われているシュールストレミングは、そこまで強烈なにおいはしないのです(あくまで個人の見解です)。もちろん「くさくない」わけではなく、アンモニア臭のようなにおいがするので苦手な方もいると思いますが、耐えられる香りです。

本場では、加熱調理などは行わずにそのまま食べることが多いそう。スウェーデンのトゥンブロードという薄いパンに、サワークリームや野菜と一緒にのせて食べるのが基本です。味はかなり塩味が強く、独特な香りがします。すごくおいしいわけではないですが、つい2つ目を手に取ってしまいます。万人受けするような味ではないことはわかりますが、塩辛やアンチョビの香りが3段階くらい進化したものの印象です。生魚や魚介類の発酵食品が普段から身の回りにある日本文化だと、意外と受け入れやすいかもしれません。

塩を節約した結果の産物

北欧では、中世からニシンの漁獲量が豊富でした。大量にとれてしまったニシンの保存方法として生まれたのがシュールストレミングです。世界中を見渡すと、ほとんどの場合は大量の塩を使った塩蔵保存を行います。しかし、北欧では塩がとても貴重なため、塩蔵することができません。

そこで生まれたのが、樽の中で濃度の低い塩水にニシンを漬け込む方法です。近代に缶詰の技術が生まれると、樽ではなく缶詰の中で塩水に漬け込むようになったようです。

通常は缶詰に仕込んでから10?12週間程度で完成します。つまり、ちゃんとした品質管理のもと、良いタイミングで食べればおいしくいただけるということ。開けると爆発する、鼻が潰れるほど臭いという状態のものは、品質管理がずさんだったり製造から開缶までに必要以上の時間が経過してしまっているせい。発酵しすぎると、中身が液体状になってしまうこともあります。適切なタイミングで食べることが重要な発酵食品ですね。

開缶時は防護用品が必須

食べてみたい!と考えている方は、ぜひウォッカのような強いお酒か牛乳を用意しておくと良いでしょう。ウォッカや牛乳で洗うと、強烈なにおいを抑える効果が期待できます。開缶に立ち会う場合は、レインコートやゴーグルなどの防護用品も忘れずに。食べられる臭さとはいえ、洋服などにつくと臭いが取れなくなります。

日本でもシュールストレミングを入手する方法はいくつかありますが、1番のおすすめは正規代理店で購入することです。品質管理などの面からみても最も安心。購入後は早めに食べるようにしてください。日本で販売されている缶詰とは違い、シュールストレミングは缶の中でどんどん発酵が進んでいきます。過発酵を起こすと、おいしく食べられなくなってしまいますよ。

シュールストレミング
ニシンを かんのなかで しおづけにする はっこうしょくひん。
ちゅうせいの せつやくいしきに よって たんじょうした どりょくの けっしょう だ !

原材料:ニシン、塩
生産地:スウェーデン
最強マリアージュ:トゥンブロード&野菜
本場のシュールストレミングは調理せずに食べるのが一般的!野菜と一緒にパンに載せていただきましょう。ジャガイモやトマトを一緒に載せるとグッドです。

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〇著者プロフィール
長瀬みなみ
腸活プロデューサー/日本発酵文化協会上級認定講師
東京生まれ、便秘育ち。長年の慢性便秘を高く評価され、腸活サポートアプリ運営会社にて広報PR部門の立ち上げ、ブランド責任者として取締役CBOに就任。自身もさまざまな腸活を取り入れ、入社後に独学と自らの人体実験で長年の便秘を解消することに成功する。
2023年より独立。現在は腸活と発酵のチカラでよりハッピーな人生を増やしていくため、セミナー講師やコラム執筆、コラボ商品のプロデュースなど幅広く活動している。