『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ系)で3年連続ファイナリストとなり2021年には2位の好成績を収めている実力派コンビのAマッソ(加納・むらきゃみ)。同コンビのネタを書いている加納愛子さん(35)はネタの台本だけにとどまらず、小説、エッセイ、ドラマの脚本など執筆活動でも活躍されています。

今回、加納さんは初の中編小説集『かわいないで』(文藝春秋)を刊行。同作品についてや学生時代のお話をインタビューマン山下が聞きしました。

■小説の登場人物は“憧れの自分”

ーー今回の著書は中編小説が2作品あって、そのうちの1作品で、著書のタイトルにもなっている「かわいないで」は高校生のお話ですが、ご自身の高校時代をモチーフにして書いたんですか?

加納 私が登場人物の誰とかではないですね。こういうときにこういうことを言えたらよかったなみたいな。

ーー実体験というより想像で書いたんですか。

加納 あの時代のこういうやつのこういう要素みたいなのは織り交ぜてますけど。

ーー同作品は主役の千尋の目線で描かれてますが友達の透子が話す言葉で、お笑いのセンスを感じたので透子が加納さんなのかなと思っていたのですが。

加納 透子は理想というか、誰かが困っているときに私が「こういうことが言えたら良かったな」という憧れの気持ちはありますね。

ーー加納さんが高校生のときに同じクラスに自分より面白い人がいたそうですが。

加納 そうですね。結構いました。普通に。

ーーその面白い人が透子なのかなとも思ったんですよ。

加納 そういう奴の要素もありますね。

ーー芸人になろうと思ったときに、その面白い人を誘おうと思わなかったんですか?

加納 当時全然よぎってもないですね。最初に思ったのは村上(むらきゃみ)です。ずっと仲がよかったんで。

ーー村上さんも面白いと思ってたんですか?

加納 思ってました。村上とは小学校・中学校が一緒で「面白いな」って。



■小学生のときに強いられた「むちゃぶり」

ーー小学生の頃にいじめられていたそうですが

加納 はい。(小学校4年のとき)転校してすぐに、ここのルールをわかってへんやつを私だけじゃなく、ボスが決めた順番でいじめられていくみたいなのがありました。

ーー例えばどんなことでいじめられるんですか?

加納 本当にジャイアンみたいなやつがいて「これで面白いことしろ」とか大喜利をめっちゃ振って来るんですよ。「はい、傘で面白いこと」みたいな(笑)。

ーー「これで面白いことしろ」とか言って追い込んでいじめるって独特ですね(笑)。芸人さんがむちゃぶりされて追い込まれるみたいな。

加納 後はなんにもない公園で遊ぶことがあるじゃないですか。そのときに「なんか考えて」って言われて必死で考えるみたいなこともありました。

ーーいじめを避けるために当時よく図書室に行っていたそうですが。

加納 はい。本を読むことが1番身近な存在になったのは、その時代が基礎になっている気がしますね。それまでは絵本とか親が読み聞かしてくれるとかはありましたが自分から選んで読むというのはなかったので。

ーーそれがいまの執筆活動の下地になったんですね。どんな本を読んでいたんですか?

加納 児童書とかを片っ端から読んでました。

ーー同じようないじめの境遇にあっている子供たちになにかアドバイスはありますか?

加納 今はインターネットとか逃げ場がおおいじゃないですか。本もサブスクもあるし逃げるものがたくさんあるので。1つの教室のヒエラルキーとか力関係に脱落したからと言って別に人格否定しなくてもいいし。「ここが無理だったな」というだけですから。だから「執着しなくていいよ」って。最悪、学校に行かんでもいいしね。



■M-1グランプリより芥川賞の方が倍率が低い!?

ーー今後、芸人以外の仕事だとどういったことをやりたいですか?

加納 引き続き小説を書きたいのと、このまえ30分のドラマの脚本を書かせてもらったんですけど今度は1時間のドラマとか、今やってることの規模を大きくしたいなと。

ーー芸人でドラマの脚本と言えばバカリズムさんが凄いですね。

加納 テレビの仕事もめっちゃやって絞らずにバケモノですよ(笑)。目標ですね。

ーー加納さんは文芸誌で小説を掲載されているので芥川賞を獲る可能性がありますが。

加納 可能性で言ったらそうですね。今は『又吉直樹さんだけですから凄い快挙になりますよ。加納先生になるわけですから。

加納 なりたいですね(笑)。頑張ります!

【PROFILE】 加納愛子 芸名は加納。1989年大阪府生まれ。2010年に幼馴染の村上愛(現・むらきゃみ)とお笑いコンビ「Aマッソ」を結成。芸人としての活動のほか、小説やドラマ脚本も執筆している。コンビとしては2024年7月に単独ライブ「縦」を東京・名古屋・大阪・福岡の4都市で開催予定。YouTubeチャンネルは「Aマッソ公式チャンネル」

インタビューマン山下 1968年、香川県生まれ。1992年、世界のナベアツ(現・桂三度)とジャリズム結成、2011年に解散。同年、オモロー山下に改名し、ピン活動するも2017年に芸人を引退しライターに転身。しかし2021年に芸人に復帰し現在は芸人とライターの二足のわらじで活動している