総合人材サービス・パソナグループ(本社・東京都千代田区)は、兵庫県淡路市などと連携し、同市で「空飛ぶクルマ」の有人飛行実証実験を実施、実用化に向けた“モデルケース”を示した。

 「空飛ぶクルマ」は2025年大阪・関西万博の目玉とされている。100年に1度の移動革命につながると言われ、政府は、大阪・関西万博に向けた取り組みをまとめた「アクションプラン」の中で、「空飛ぶクルマ」を遊覧飛行や移動手段としての活用を目指しており、最先端のモビリティー(乗り物)技術を実証するのが狙いだ。
 実験は2024年3月、万博開幕まで1年と迫る中行われた。

 大阪・関西万博を運営する日本国際博覧会協会は2023年2月、「空飛ぶクルマ」の運航事業者として、国内航空会社やアメリカのベンチャー企業を含む4グループ・5社を選定した。
 選ばれたのはANAホールディングス(全日空)、JAL(日本航空)、トヨタが出資するアメリカのベンチャー企業「ジョビー・アビエーション」 、国内で空飛ぶクルマを開発する「スカイドライブ」(愛知県豊田市)、大手商社・丸紅。
 万博会場となる大阪市此花区の人工島・夢洲の離着陸場(バーティーポート)の運営はオリックスが担当する。
しかし、一部の事業者は機体の開発が思うようにいかず、万博開催期間中、客を乗せずにデモンストレーションにとどめる意向を示している。

 パソナグループは、大阪・関西万博で“いのちありがとう”をテーマに、企業パビリオン「PASONA NATUREVERSE(パソナ・ネイチャーバース)」を出展する。また、淡路島へ本社機能の一部移転を進め、万博閉幕後、パビリオンを淡路島へ移設することが決まっている。
 同社は2023年11月、身体・心・社会的な健康を考える「Awaji Well-being Week(淡路ウェル・ビーイングウィーク)」を淡路島で開催、その一環として行われたスポーツの祭典「UNDOKAI WORLD CUP 2023」で、大阪・関西万博に向けた新産業の技術として「空飛ぶクルマ」を展示したのがきっかけで、淡路島での飛行実験が決まった。

 これに先立つ2022年2月には、兵庫県企業庁と同県淡路市が所有していた公用地「淡路市夢舞台サスティナブル・パーク」を買収。地域との連携により観光客誘致、災害時や救急医療でのインフラとしての活用につなげたいと、飛行実験にこの場所を提供した。

実証実験は、中国の新興企業・イーハン社製の機体(※1)を使用、パイロットではなく検査員2人が搭乗した。自動操縦遠隔操作による飛行は、関西で初の取り組みとなった。
 技術的検証(計測器で図ることのできない騒音の感じ方、機内の振動、乗り心地等の確認)を行い、飛行距離600メートル(300メートルを往復)、地上20〜40メートルの高さまで上昇し、最高速度は時速25キロ、飛行時間は4分6秒だった。
当日は約300人がこの様子を観覧し、地元の人々が試乗体験にも参加、次世代モビリティに触れる機会となった。

視察した斎藤元彦・兵庫県知事は「観光のみならず物流や医療、地域のインフラを含めて、淡路島で実証実験を続けていくことが一つのモデルになる」と話し、空飛ぶクルマの可能性に期待を寄せた。
 兵庫県は、かねてからドローンの実証実験を進めていることもあり、「空飛ぶクルマ」を社会が受け入れる環境を整え、事業開発に向けた支援も行う。

 スカイドライブの福沢知浩・最高経営責任者(CEO)は、「関西、とりわけ瀬戸内海一帯は景色も良く、気候も温暖。しかし離島を結ぶアクセスに乏しく、空を使った交通手段は大きな魅力となる」と、淡路島を含む兵庫の地域性の特色を踏まえ、万博閉幕後も見すえた「空飛ぶクルマ」の需要の高さを強調している。

 パソナグループ・WellBeing本部の園田雅さんは、「大阪・関西万博をきっかけに、こうした取り組みが、淡路島での観光振興につながる」と話す。コロナ禍が落ち着き、インバウンド観光客も増加。淡路島や瀬戸内は、“ポスト万博”でも観光地としてのポテンシャルに期待できる。
 同社は今後、ウェルビーイング(※2)をテーマにしたリゾートホテルの建設などを計画している。さらに多くの観光客誘致のため、神姫バス(本社・兵庫県姫路市)や西日本JRバス(大阪市)、本四海峡バス(神戸市)などと連携して、空港や駅から淡路島への直通バス増便を視野に入れるという。

※1 イーハン(EHang)社製機体〜EH216 定員2名、航続距離30キロ、重量430キロ、最高速度130キロ
※2 ウェルビーイング〜 身体的、精神的、社会的、経済的に良好で満たされた状態

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 パソナグループが出展する大阪・関西万博パビリオン「PASONA NATUREVERSE(パソナ・ネイチャーバース)」と名付けられた。NatureとUniverseの合成語。建築家・板坂諭氏がデザインを担当した。
 2023年秋の着工から半年経ち、約4割が仕上がっているという(2024年4月現在)。“いのちありがとう”というテーマのもと、生命の誕生から現在まで、“いのち”を繋いできた私たちの心臓について考える。
 敷地面積は約3500平方メートル、延床面積約2300平方メートル。鉄骨造り・2階建て。2024年11月完成予定。
 

 iPS細胞による再生医療の第一人者である大阪大学名誉教授・澤芳樹氏をエグゼクティブプロデューサーに迎え、“いのちの象徴”である心臓を作り上げるiPS心筋シートなどの最新テクノロジー「からだ・こころ・きずな」をテーマに、展示内容の詳細やパビリオンの取り組みを随時発表する。