女子SPA!に掲載された記事のなかから、4月に読みたい人気記事を紹介します!

熊本地震をきっかけに、「たくさんのもの」に気づいたapartment301さん。『捨て活で見つけた「私」が主役のワンルームライフ』(主婦の友社)には、40代のひとり暮らし。25㎡、家賃33,000円(水道代込み)のワンルーム住まいのミニマリストapartment301さんの風通しの良い毎日が綴られています。(初公開日は2023年12月9日 記事は取材時の状況)

 捨て活で見つけた 「私」が主役のワンルームライフ(主婦の友社)apartment301(著)

ものと向き合う、人生と向き合う

「捨て活」とは「“何を捨て、何を残すか”ということに重きをおいている」活動のこと。震度6超の地震がひとり暮らしのワンルームを激変させた時、「ものは凶器にもなる」と熊本在住のapartment301さんは痛感しました。

否応(いやおう)なく、ものを捨てなくてはならない状況下で、人生で必要なものはさほど多くない、という事実に気づくのです。

「大事にとってあるもののほとんどは、今、使っていないものばかりでした」この一言に、冷水を浴びたような気持になるのは、私だけではないでしょう。

ものを買ったのは「今」ではなく「過去」の自分。アップデートした自分に本当に必要なものかどうか、本書にならって選択してみませんか。

apartment301さん流、捨て活の極意

捨て活1理屈はわかっていても、いざ「捨てる」となると躊躇してしまうのが人情。そこで参考にしたいのが、apartment301さん流、捨て活の極意。以下にまとめてみました。

☆まずはゴミ捨てで“捨てる練習”をする

紙くずやアルコールティッシュなど、取るに足らないものを意識して捨てる。次に賞味期限切れの食材などを捨て、じょじょに「捨てる」の範囲を広げていく。

☆“捨て活”で利益を上げようと欲を出さないこと

リサイクルする時は、売るのではなく譲る精神で手放す。「もったいない」という心苦しさが、今後、ものを見る目を養ってくれる。

☆“捨てるもの”ではなく“残すもの”を選ぶ

長年大切に保管してきた「思い出」が詰まったもの。でも、ものはものに過ぎず、あなた自身ではありません。卒業すべきものに執着せず、今、ともに過ごしたいものに目を向けよう。

☆「今」必要なものだけに

「いつか」というのは曖昧(あいまい)な未来。ほぼ確実に「いつか」は来ない。私達は「今」を生きているはず。大切なものにも「今」を生きてもらおう。

「捨てる」という行為が、「自分の一部をもぎ取られる」という心境になる人もいるでしょう。

これは今、必要だろうか? と迷った瞬間に、ものは過去のものになるのではないでしょうか。ものに別れを告げると、その分、あなたの世界が豊かになるのです。



自分を中心に、空間をプロデュース

捨て活2apartment301さんが生活するスペースは25平米。「決して広くはありません」と語る部屋は開放感があって、とても清々しいのです。その秘密は厳選したものと配置、そしてカラーにありました。

「盛る部屋から、盛らない部屋へ」というテーマのもと、apartment301さんはフローリングの床をグレーのフロアタイルにイメチェンしました。

賃貸物件の白壁や、手持ちの白い家具と相性がよく、なにより「空間全体のトーンが統一されていると、商品が引き立って見える」。このひと工夫だけで、部屋が開放的になるのです。

いくつかの独自ルールを設定

捨て活3さらに、圧迫感を与える背の高い家具はできるだけ避ける、色数を抑える、などの独自ルールを設定。

中でも私が感心したのが、「ドレープをなくして凹凸を減らす」「隙間を埋めない」のふたつ。カーテンのドレープは美しくもありますが、まっさらな空間には馴染まないかもしれません。

apartment301さんが愛用しているハニカムシェードは、冷暖房効率もよく、白壁と同系色なので部屋もいっそう広く見えます。

隙間が空いたら収納家具を買う、それもまた空間の節約術ですが、そもそも収納家具があるからものが増えるわけです。隙間は埋めるのではなく、生かすのがスッキリ暮らすコツ。apartment301さんは、空いた隙間に時々花を飾っているそうです。



本来の「もったいない」って?

「もったいないから捨てられない」よく聞く言葉です。でも、使わないもので部屋を狭くしているほうが、もっともったいないと思いませんか。

apartment301さんいわく「本当のもったいないとは“使わないものを買うこと”」。頭ではわかっているこの事実を体感するには、やはり「捨て活」が必須。たいして使っていない、あるいは新品のまま使わずに放置されていたものを捨てるのは、やはりいろんな感情が渦巻くのです。

ただ捨てるのではなく、「“なぜ、これを買ってしまったんだろう”という原因を考えて、“勉強代”として胸に刻むこと」が大切だとapartment301さんは言います。その結果、ひとつひとつのものを大切にできるようになるのだとか。

「趣味は暮らし」apartment301の日常

捨て活4「趣味は」と聞かれたら、「暮らしです」と答えるとapartment301さん。部屋を整えて、好きな食器で好きな食事をし、自分で自分を労わる暮らし。視界には自分の好きなものしか入りません。まさに、人生の「主役」。

本書を読んでいると、自分の人生は半径数メートルを満足させるだけで、こんなにも充実するのだと感動します。私達は遠くを見つめすぎて、足元をおろそかにしがち。

「いつか使うだろう」という「いつか」に囚(とら)われてしまうのも、もしかしたら「今」を見つめる勇気が出ないからかもしれません。



ものの選び方はその人の人生

ものの選び方は、その人の人生の選び方に通じます。ものを選ぶのは自分の感覚と感性で、いとおしいものを使うのは自分を大切にしているのと同じですよね。毎日使う食器からリネン、家電まで、すべてがあなたの人生を彩るものたちなのです。

さあ、あなたも「今」から人生の主役になってみませんか。

<文/森美樹>

【森美樹】
1970年生まれ。少女小説を7冊刊行したのち休筆。2013年、「朝凪」(改題「まばたきがスイッチ」)で第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)を上梓。Twitter:@morimikixxx