桜が咲き誇る鈴鹿サーキットで行なわれた2024年のF1日本GP。詰めかけたファンが入賞を果たした日本人ドライバーを拍手喝采で称える光景は、実に12年ぶりのことであった。

 RBの角田裕毅は10番グリッドからレースをスタートし、激戦となった中団グループでの争いを制し10位入賞。2戦連続の入賞であり、母国では初の入賞である。

 日本人ドライバーが日本GPでポイントを獲得するのは、2012年に小林可夢偉(当時ザウバー)が3位表彰台を獲得して以来12年ぶり。レースを終えた角田は率直な感想を聞かれ、「ほっとしている」と語った。

「やっぱり、率直にほっとしています」

「特に最初のスタートで2ポジションを落としましたからね。その後(赤旗中断後のスタンディングスタート)では良いスタートできましたし、チームが本当に良い仕事をしてくれて、ピットストップでもポジションを守ることができました。毎周毎周、日本のファンの皆さんの後押しを感じながら走れたので、本当に良いレースでした」

 今回角田は、何度も入賞を逃す危機に陥りながらも、その度にチームの力も借りながら挽回を繰り返すというレースを見せた。

 冒頭のコメントにあるように、ミディアムタイヤを履いて10番グリッドから発進した角田は、最初のスタートで蹴り出しが良くなく、ソフトタイヤを履くライバルに抜かれて12番手に落ちてしまった。しかしダニエル・リカルド(RB)とアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)のアクシデントによって赤旗が出されると、再開時のスタンディングスタートに向けてタイヤをミディアムからソフトに交換。すると今後はスタートが決まり、入賞圏内の10番手まで戻った。「12番手からだったので、今度はアグレッシブにいって、またポジションを奪い取ろうという感じでした」と角田は振り返る。

 その後は1回目のピットストップの際、自身より1周早くピットに駆け込んだバルテリ・ボッタス(ザウバー)に前に出られてしまった角田。いわゆる“アンダーカット”を許した格好だが、これについて角田は「それによって僕らのレースを少し難しくしたと思うので、次への学びだと思います」と述べた。

 その後はボッタスや、ステイアウトを続けてペースが上がらないドライバーたちにやや引っかかる形となったが、角田を含めて近くを走るマシンが5台同時にピットイン。ここでRBのクルーは確実なタイヤ交換作業で角田を送り出し、角田はボッタスだけでなく、ローガン・サージェント(ウイリアムズ)、ケビン・マグヌッセン(ハース)らをピットレーン上でまとめて“ごぼう抜き”。これにより、角田はまた10番手争いをリードする存在となった。

 角田はこのピット作業について「めちゃめちゃ速かったです。僕もできるだけ駐車をちゃんとするように意識しましたし、その後メカニックがそれに本当に応えてくれたので、そこは本当にチームに感謝です」とクルーを称えた。

 その後はニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)を逆バンクの外側から豪快に抜き去るなど、走りでも魅せた角田。終盤はランス・ストロール(アストンマーティン)が比較的フレッシュなソフトタイヤで追い上げを図っていたが、角田はストロールが迫った時に備えてタイヤもマネジメントしていたといい、最終的にハードタイヤで30周を走破した。

 結果的に10位のポジションを守り切って1ポイントを手にした角田。チェッカーを受け、ファンからの歓声を浴びた時の心境を問われると、次のように答えた。

「やっぱり感動しましたね」

「皆さんの期待に応えられたというのが日本人として何より嬉しいですし、ほっとしました。(チェッカー後は)皆さんに感謝を伝えながら1周することができました」

「これからもサポートしてくれたら嬉しいですし、今回もし新しく来たファンの皆さんがいたら、このレースをきっかけに好きになってくれたら嬉しいなと思います」