フォーミュラEは、第8戦モナコE-Prix開催を前に、来季のシーズン11から使用されるマシン”Gen3 Evo”を発表した。

 フォーミュラEはこれまで、4シーズンごとに新世代のマシンを投入。さらに第2世代からは、それぞれの世代でマシンをEvoバージョンに進化させている。

 今回のGen3 Evoは、見た目はあまり大きな変化がないように見える。ただ、Gen3ではハの字になっていたフロントウイングのエンドプレートは数字の3やΣ(シグマ)のような形状となっており、アッパープレーンと滑らかに接続されている。

 現行F1マシンのリヤウイングにも近いような形状となっており、従来のウイングと比べてかなり強度が上がっていそうな印象だ。

 またリヤタイヤ前のカウルには、ウイング状の小さなディフレクターが追加されている。これはリヤタイヤによる乱流を抑制する役割があると思われる。こうした変更により、空気抵抗が軽減されているという。

 Gen3 Evoが大きな変化を遂げているのは、パワートレインだ。Gen3では回生(充電)専用だったフロントのパワートレインが、駆動にも使えるようになるのだ。

 Gen3は、リヤに最高出力350kw(470馬力)のパワートレインを搭載し、これを駆動や回生に使ってきた。またフロントに搭載されたパワートレインもジェネレーターとして使い、250kWのエネルギーを回生。合計で最大600kWの回生を可能とし、レースで必要なエネルギーの約40%をレース中に生み出していた。

 しかしGen3 Evoではこのフロントパワートレインをモーターとしても使うことで、4輪駆動することが可能になるのだという。

 最大出力は350kWのままだが、予選デュエルや決勝スタート時、アタックモード使用時にのみ4輪駆動化。フロントアクスルからは最大50kWの出力を発揮し、リヤアクスルから残りのパワーがタイヤに伝えられる。

 フォーミュラEのジェフ・ドッズCEOは、Gen3 Evoの発表に際し次のようにコメントを発表した。

「Gen3 Evoは、フォーミュラEの進化における画期的な章を告げるものであり、持続可能な形で達成されるイノベーションとハイパフォーマンスへの献身を体現するものだ。前例のない加速と先進的な空力設計を特徴とするこのマシンを、モナコでお披露目できたことを光栄に思う。真に優れた能力とパフォーマンスで世界中のドライバーとファンを魅了し、レースのスリルをさらに高めるだろう」

 また、発表に先駆けてメディアの取材にオンラインで応えたドッズCEOは、Gen3 Evoについて次のように語った。

「Gen3 Evoでは大幅な改善ができたと考えている。100km/hまでの加速は、1.82秒まで速くなった。これは割合にして30%の改善だ。F1とも遜色ないし、レースファンにとってやはり速さは重要だ」

「レースファンも魅了できるようなパフォーマンスを実現し、よりエキサイティングでスリリングなレースを開催できるようなテクノロジーだと言える」

 来季は、導入が延期されていた”急速充電”ピットストップも採り入れられる可能性があるフォーミュラE。これまでよりもさらに一段進化したカテゴリーになると言えそうだ。