まだまだ大きく動くことが予想されている2025年のF1シート争い。今季エステバン・オコンとピエール・ガスリーを擁するアルピーヌも、来季に向けてドライバーラインアップを変更する可能性がある。

 不振のアルピーヌは今季ここまで1ポイントしか獲得することができておらず、その一方でハースが7ポイントを獲得するなど中団グループで存在感を見せており、今まで以上に魅力的な選択肢となっている。

 ハースはニコ・ヒュルケンベルグがザウバー/アウディと契約したため、来年に向けて少なくともひとつのシートが空いている。そしてケビン・マグヌッセンも今季限りで契約が切れるため、その将来は不透明だ。

 マグヌッセンはヒュルケンベルグと比べて予選でのパフォーマンスが劣っており、ヒュルケンベルグがコンスタントにQ3に進む一方でQ1落ちを繰り返している。そのためハースは来季に向けて様々な選択肢を検討していると言われており、その候補のトップにいるとされているのがオコンだ。さらにガスリーも、複数のチームが獲得を狙っていると言われる。

 つまりアルピーヌは現在の所属ドライバーの動向に気を配りながら、ベストな選択肢を見極める必要がある。その中でアルピーヌのドライバー候補と言えるのが、ミック・シューマッハーだ。

 かつてハースからF1に参戦したシューマッハーは現在、アルピーヌからWEC(世界耐久選手権)のハイパーカークラスに参戦している。現在、WECの最高峰クラスはかなりの盛り上がりを見せていて参戦台数も多いため、アルピーヌはここまで3レースでトップ10フィニッシュには届いていないのだが、シューマッハーの働きぶりは首脳陣からも高く評価されている。

 アルピーヌF1のチーム代表を務めるブルーノ・ファミンはシューマッハーのドライバーとしての経験やマインドに感銘を受けたと言い、次のように語った。

「ミックは耐久レースで信じられないような仕事をしている。とても印象的なのは、彼の考え方だ」
「もちろん彼は速く、それは誰もが知るところだ。ただ耐久レースではBoP(性能調整)もあるし、良いラップタイムを刻むことだけが必ずしも有効だとは限らない。そこで重要なのは、ドライバーの純粋なパフォーマンスを評価することではなく、ミックが耐久レースの考え方に適応していることが本当に素晴らしいということだ」

「シングルシーターのドライバーは利己的だと言われてきた。しかしミックは最初の瞬間から、とてもオープンで協力的で、チームメイトのために尽くしてくれている。特に耐久レースではこういったチームスピリットが重要だ」

 そしてファミンは、シューマッハーが2025年シーズンに向けた“多くの”可能性のひとつであることを確認し、将来に向けて多くのドライバーがアルピーヌと接触していると付け加えた。ベテランのバルテリ・ボッタス(キック・ザウバー)もそのひとりだという。

 さらにファミンは、フランス人ドライバーを起用することがチームにとって優先事項ではないことを明らかにしている。アルピーヌは経験や国籍に関係なく、すべての選択肢を検討しており、決断には時間をかけたいと考えているようだ。