アストンマーティンは、F1第7戦エミリア・ロマーニャGPにかなり大規模なアップデートを持ち込み、戦闘力アップを目指したが、結果的にドライビングが難しくなってしまったようだ。

 そして結果的にそれが、FP3でのフェルナンド・アロンソのクラッシュの要因となったようだ。

 この苦戦により、チームはマシン開発で停滞した昨年の二の舞になるのではないかという懸念が浮上した。アップデートを導入したことで、パフォーマンスに支障をきたす”副作用”が発生したのだ。

 しかしチーム代表のマイク・クラックは、今年は状況が変わっており、イモラで何が悪かったのか真相を究明できると確信している。

 2023年と同じシナリオが展開されているのかと尋ねられ、彼は次のように応えた。

「みんないつも結論を出すのが早すぎる」

「(2023年の)メキシコでも同じようなことがあったが、その次の週には表彰台にあがった」

「ドイツでは、教会を街に残すものなんだ。つまり、今持っているものを分析しよう。導入したものから学ぶべきこともあるし、そうして、来週はもっと強くなれるよう努力する」

 だが今週末はF1モナコGP。ドライバーがマシンに自信を持って走れることが一番必要だが、クラック代表はマシンをより安定させるために新しいパーツを外すようなことは考えないと主張する。

「アップデートは確かに前進であり、それを外す必要はない」と彼は語った。

アップデートで何が変わったのか?

 フロントウイングとノーズアッセンブリーは、アップデートの一環として大幅に見直された。

 上から2枚のフラップには、V字型の切り欠きが入っている。これはリヤウイングの中央でよく見られるデザインだが、ウイングの内側と外側の気流を分割するのに使われているようだ。

 このデザインは、ウイングのアウトウォッシュ(マシン側面外側に流す気流)発生能力に間違いなく影響を与え、ウイング外側のデザインと連動している。

 さらにこの切り欠きが、目に見えるフラップ上面だけでなく、フラップ下面にも与える影響を考慮する価値がある。フロントタイヤ前方の気流の通り道にメリハリをつけるのに役立つだろう。

 ウイングのアウトボードセクションの流れをよりうまく管理し、アウトウォッシュ性能を向上させるというチームの取り組みの一環として、エンドプレートにも変更が加えられている。

 従来のエンドプレートの後端は下部がえぐれていた(写真小円内)が、新しいウイングではまっすぐ下に落とされている。それもフラップとエンドプレートの接合部で終端し、この領域の気流をコントロールしている。

 フロントウイングの中央部分とノーズにも多くの変更がある。ノーズの先端形状は大きく異なっており、フラップと接続される位置も変更されている。新バージョンではノーズの先端が下から2番目のフラップより前に出ており、ウイング中央にはそれを支持するブラケットが追加されている。

 そのため、従来のウイングではノーズ両脇にあった2組のブラケットは1組に減っている。

 またノーズ先端には、ドライバー冷却用の開口部が追加されたが、チームはエミリア・ロマーニャGPではこれを閉じていた。

 同時に、メインプレーンの形状も変更されている。赤い補助線を見ても分かるように、メインプレーンは中央部分でよりタイトに絞られるように下に落とされており、より急激に変化するようになっている。

 また、AMR24のフロア、フロアフェンス、エッジウイング、ディフューザーにも多くの変更が加えられた。フロントウイングの変更によって上流で生まれた気流の変化に対応し、パフォーマンス向上に活用しようとしているのだ。

 フロアフェンスは、アンダーフロアの変更と連動するように位置も形状も変更された。

 エッジウイングと埋め込まれたストレーキはよりアグレッシブな形状となっており、ストレーキは金属で表面を覆われている。

 エッジウィング横のフロアの表面も修正されたようで、これはアンダーフロアの形状にも影響しているだろう。

 アップデートはディフューザーのルーフ形状にまで及んでおり、チームは次戦以降、こうした変更から期待していた性能を引き出すことを目指していく。