プロトタイプカーであるメーカー主体のハイパーカークラス、市販のFIA GT3車両で争われるLM GT3クラス、この2クラスの混走により争われるFIA世界耐久選手権(WEC)の第3戦が、ベルギーのスパ・フランコルシャンで6時間レースとして開催される。次のラウンドがル・マン24時間であり、高速コースで行われるル・マン前哨戦となる大事な一戦。開幕戦を制したポルシェ、雨のイモラで優勝を果たしたトヨタ、そして地元イモラで勝ち損ねたフェラーリによる優勝争いは非常に興味深い。

それにしても第2戦イモラ6時間は、前半と後半でこうも変わるのかというほど展開の読めないレースとなった。前半だけ中継を見て寝落ちしたファンは結果を見て驚いたことだろうし、後半から見始めたファンは久々にトップ争いをするTGR、終盤燃費と戦う小林可夢偉の走りに感動しただろう。雨が止むと予想しドライタイヤでコースにステイ、はたまた乾き始めた路面でウェットタイヤにとどまったフェラーリは、地元の天候に翻弄されて惨敗だった。やはり長いレースは何が起きるか分からない。これぞ耐久レースの醍醐味だった。

今回もハイパーカークラスにはシリーズ5連覇中のTGR(トヨタ・ガズー・レーシング、2台)、プジョー(2台)、フェラーリ(3台)、ポルシェ(5台)、キャデラック(1台)、アルピーヌ(2台)、今季より参戦のBMW(2台)、ランボルギーニ(1台)、そしてイソッタ(1台)、9メイクスの19台がエントリー。

LMGT3クラスは、アストンマーティン、BMW、フェラーリ、マクラーレン、ランボルギーニ、フォード、レクサス=トヨタ、コルベット=GM、ポルシェ各2台の計18台がエントリーしている。

第3戦の舞台となるスパ-フランコルシャンは1周7.004kmと長い山岳コース。かつては14km以上もある公道コースだったが、現在ではパーマネントのレースウェイとなった。このコースは一気に急坂を駆け上るオールージュが名物だが、流れるような高速カーブもありル・マン24時間の開催されるサルト・サーキットに似たハイスピードサーキットだ。このため各チームは高速コース用のセッティングを施し、ル・マンを意識した戦いを行う。次戦のル・マン24時間を予想する上でも見逃せない戦いとなるだろう。さらにスパは”スパウェザー”と呼ばれる気まぐれな天候でも有名。今回も雨を味方につけたチームが上位となるか?

【ハイライト動画】FIA 世界耐久選手権(WEC) 2024 第2戦 イモラ6時間レース(イタリア)

TGRはベースとなるドイツ、ケルンからも近く、ホームレースとして2017年大会から続く連覇を狙う。ポルシェもドイツのメイクスであり、開幕連戦は速さを見せていて優勝候補のひとつ。さらにフェラーリはここで巻き返しを狙いル・マン24時間の連覇につなげたいはず。この3強に他のメイクス陣がどのように挑むのか?今回はフォーミュラEのベルリン大会と日程がバッティングすることから、WECに参戦できないドライバーもいて、プジョーなど2名で6時間を戦うチームもある。

LMGT3では前回のイモラでBMWが1-2フィニッシュ。二輪Moto GPの大英雄バレンティーノ・ロッシが2位表彰台に立ち大歓声を浴びた。雨でタイヤ選択をミスしたポルシェが巻き返せるか? それとも他メーカーが頑張りを見せるのか?

日本関係では、アコーディスASPチームの78号車レクサスRC Fに宮田莉朋がスポット参戦(フォーミュラEに参戦するケルビン・ファン・デア・リンデの代打)する。もう一台の87号車RC Fには木村武史がブロンズドライバーとして参加。TFスポーツの82号車コルベットLZ06のブロンズドライバーには小泉洋史。またユナイテッド・オートスポーツの95号車マクラーレン720Sのゴールドドライバーには佐藤万璃音がエントリー。日本のチームであるD’station Racingも応援したい。

第3戦スパ6時間は、5月9日11時30分(日本時間18時30分)にフリープラクティス1でスタート。10日に予選、11日に決勝が行われる。

J SPORTSオンデマンドでは、予選を5月10日午後9時35分〜深夜1時、決勝を11日午後7時30分〜深夜3時にLIVE配信予定。J SPORTS 3で決勝を生中継。

文:皆越和也