4年ぶりの復帰となったプレミアリーグEASTで最終節まで優勝争いを繰り広げるなど、昨シーズンは躍進の1年を過ごした尚志高校。ほとんどのメンバーが入れ替わった今季は開幕2試合こそ連敗を喫するも、第3節からは3戦連続クリーンシートを達成。第4節ではアウェイで青森山田高校を撃破するなど、選手たちも少しずつこのリーグにアジャストし始めている。

ただ、「今日は自分たちのサッカーをやろうと、ミラーゲームにして勝負しようと思いました」と仲村浩二監督も明かした前節の大宮アルディージャU18戦は、それまでのシステムとは異なる4-4-2にトライ。後半こそ押し込む時間を長く作りながら、結果的には0−2で4試合ぶりに敗れたため、ホームで戦う今節での巻き返しを誓っている。

今シーズンから新指揮官として佐藤由紀彦監督が就任したFC東京U-18は、一進一退の時間が続いている印象だ。開幕戦で前橋育英高校に2-0で勝ち切り、早くも初勝利を手にしたが、第3節の柏レイソルU-18戦は3-3、第5節の流通経済大柏高校戦は3-4と、激しい打ち合いも勝利には繋がらず。負けと引き分けを繰り返している。

ホームに横浜FCユースを迎えた前節も、前半17分に尾谷ディヴァインチネドゥのゴールで先制点を奪い、そこからも2点目を窺うチャンスは作り出しながら、結果は追い付かれてのドロー。5試合未勝利という状況で、今回のアウェイゲームへ臨むことになる。

ここ2試合で尚志のキャプテンマークを巻いているのは、右サイドバックに入っている荒川竜之介だ。開幕戦こそケガで欠場したものの、途中出場となった第2節でプレミアデビューを果たすと、以降は一貫してスタメンで登場し、ジュニアユース時代を過ごした古巣との“再会戦”となった第5節の鹿島アントラーズユース戦にも、2-0で快勝。「同じチームだった(佐藤)海宏とマッチアップできたのも嬉しかったですし、絶対に負けたくない相手だったので、チームとして勝てたのも嬉しかったです」と率直な感情を明かした。

「攻撃からのクロスやチャンスメイク、運動量が自分の武器です」と自ら口にする特徴を生かした攻守におけるアップダウンは、このチームにとっても大きなポイント。走れて、戦える尚志の右サイドバック。荒川の積極的なオーバーラップには、どのチームも注意が必要だ。

今シーズンの尚志で10番を背負うのが、左足のキック精度が光るボランチの高橋響希。自身にとっても初めて挑むプレミアでは「最初はうまく行かない部分が多かったですけど、だんだん自分たちのやりたいこともできてきていると思います」と、一定の手応えも実感しているようだ。

大宮U18戦は後半こそ右サイドに回ったものの、あくまでも本職として捉えているのはボランチ。昨年度のそのポジションでは神田拓人(早稲田大)、藤川壮史(作新学院大)という強力な2人が君臨していたが、高橋は「去年のボランチを超えたいという気持ちはあります」ときっぱり。10番の自覚も芽生えつつある高橋の展開力が、尚志の攻撃を逞しく司る。

FC東京U-18で新境地を開拓しつつあるのが尾谷ディヴァインチネドゥだ。長身フォワードのイメージも強かった中で、佐藤監督は右サイドハーフへとコンバート。「最初は慣れないポジションで守備のやり方もあまりよくわからなかったんですけど、右サイドバックの(金子)俊輔に立ち位置とか教えてもらったので、今ではやりにくさはないです」と本人も着実に新ポジションのコツを掴み始めている。

現在はEAST得点ランキングトップタイの4ゴールを挙げているが、そのうちの2ゴールはプレッシャーを掛けた相手GKからそのままボールを奪って沈めたもの。「点を獲ってチームを勝たせるために、『前から守備をしよう』という気持ちが強くなりました」という守備意識を得点という結果に結び付けるなど、アップデートを遂げてきた尾谷が右サイドで発揮する攻守に渡る躍動は、もはやこのチームにとって間違いなく欠かせない。

昨シーズンはレギュラーとして挑んだFIFA U-17ワールドカップで、世界のレベルを体感してきたGKの後藤亘にも小さくない期待が懸かる。副キャプテンに就任した今季は2節からキャプテンマークも任され、今まで以上にチームを牽引する役割が求められる中で、やや失点がかさんでいるここまでのシーズンは、納得のいくパフォーマンスが出せていない印象もある。

「監督からミーティングで“魂”ということは言われていて、技術とかそういうことだけではなくて、最後は気持ちで止めに行くというは非常に大事なところだと思うので、そこはチーム全体に共有されている部分ですね」とも語る絶対的守護神の、気持ちあふれるセービングはFC東京U-18が勝利をもぎ取る上での必須条件。世代屈指のGK。後藤が尚志攻撃陣の前に力強く立ちはだかる。

なお、尚志とFC東京U-18は2011年にプレミアリーグがスタートした際の創設メンバー。いわゆる『オリジナル10』の2チームでもある。その年の3月には東日本大震災が発生し、福島に居を置く尚志は前半戦の大半のゲームをアウェイで戦うことに。ある試合を取材した際に仲村監督が「僕たちの活躍が少しでも福島の人たちに勇気を与えられたら」と語っていたことが、今でも記憶に強く残っている。

それから13年。ともに全国レベルの各コンペティションで存在感を打ち出し続け、今もなおこの高校年代最高峰のステージで戦っている両雄が激突する、『プレミアEASTオリジナル10対決』は好ゲーム必至。ハイレベルな攻防が予想される90分間を、是非楽しみたい。

文:土屋雅史