JR新神戸駅(神戸市中央区)でこの春、ホーム柵の内側に人がいないのにセンサーが反応したため車両が出発できず、山陽新幹線のダイヤが乱れる事例が相次いだ。JR西日本によると、同駅ではこうした現象がたびたび起きているという。すぐ北側に六甲山系が広がる立地が影響しているようだ。さて、“犯人”は−。

 3月31日午後2時40分ごろ、博多発東京行きのぞみ154号が新神戸駅を発車する直前、ホーム柵のセンサーが反応した。異常はなく、約20分後に運転を再開したが、上下計23本、約1万5千人に影響した。同駅では同24日にもセンサーが反応し、最大約20分の遅れがあった。

 同社山陽新幹線統括本部によると、ホーム柵の内側にはセンサーがあり、線路側に乗客が取り残されたり、障害物があったりした場合などに異常を検知する。柵が閉まらなくなり、係員の安全確認が終わるまで車両は出発できない。いずれもその後の点検でセンサーに不具合はなく、人為的な問題もなかった。

 「おそらく虫のせいです…」。そう説明するのは同本部の担当者だ。同駅ではこれまでもたびたび起きているという。

 新神戸など各駅のホーム柵を管理する「JR西日本テクシア」(尼崎市)によると、同駅のホーム柵のセンサーは目に見えない光線を柵の内側に線路と平行に照射し、光が遮られた場合に反応する。光線が出される直径数センチの穴に虫が入り込むと、誤反応を起こすことがあるという。

 「新神戸では、虫が原因とみられる誤反応は月数件ある。春が多めの印象」と担当者。新神戸駅は山陽新幹線の他の駅に比べて誤反応が多いといい「4月にも数回あった。山から結構な頻度で虫が飛んでくるからでしょう」とする。

 駅の北側には自然豊かな六甲山系が広がる。昆虫に詳しい兵庫県立人と自然の博物館(三田市)の八木剛主任研究員は「まだ寒い3月にも活動するとなると、成虫で越冬するカメムシではないか」と指摘。体長1・5センチ程度のクサギカメムシか、一回り大きいキマダラカメムシの可能性が高いとみる。狭い場所で越冬し、信号機など人工物の隙間にも入り込むのが特徴で「条件に当てはまる虫を考えると、ほかに思いつかない」とする。

 同社では製薬会社と連携し、虫の忌避剤をセンサー付近に塗るなどの対策を取るが、目立った効果はないという。県内では今年、大量発生が確認された地域もあり、誤反応が増える可能性もあるが、担当者は「安全のためには、どうしてもセンサーの精度を重視するしかない」とし、今のところ解決策はないという。

(森下陽介)